藍染様と茶は飲めない(ヤミー・ウルキオラ)
円卓に座る十刃たちに、紅茶が注がれていく。
カップから立ち上る、紅茶の馥郁(ふくいく)たる芳香。
「全員に行き渡ったかな?飲みながら聞いてくれ。」
しかし、そのカップに誰も十刃たちが口をつけることはない。
別にお茶の嗜好が合わないというわけではない。
彼らは十刃だ。
予想外の展開に備えるためなのである。
実は真っ先にカップに手を伸ばそうとしたのはヤミーだった。
しかし、ウルキオラがチラリと視線を投げることで、それを制した。
ウルキオラは基本的には冷たいやつだ。
そのウルキオラが敢えて、ヤミーを制したのだ。
イヤな予感がして、ヤミーはカップに伸ばしかけた手をひっこめた。
藍染の話が終わり、紅茶会議は閉会した。
誰も紅茶を飲んでいない。
藍染、市丸、東仙が退席し、残りは十刃のみとなった。
そこでヤミーが初めて疑問を投げつけた。
「・・何でみんな飲まねえんだよ。」
「もう飲んでいいぞ、冷めているだろうがな。」
答えるのはウルキオラだ。
「お前を制した理由は簡単だ。ヤミー。」
「なんだよ」
「お前は耐えられるのか?」
「何を。」
「藍染様が紅茶を飲んだ時に起こりうるハプニングにだ。」
「だから、何のだよ。」
熱かろうが、冷めてようが気にしないヤミーだ。ぐいと紅茶を飲みほして、直ぐに代りを入れさせる。それに口をつけた時だった。
「藍染様が紅茶を飲む際・・前髪がカップに入り、紅茶に浸かる様子を見ることにだ。」
「ブハーーーーーッ!!!!」←吹いたらしい
「若しくは、邪魔になる前髪を片手で押えながらカップを口に運ぶ動作に、お前は平静でいられるのか?」
「げほッ!!ゲホッ!!!ゲホゲホーーー!!!」←さらにむせたらしい。
巨体を苦しそうにテーブルに倒すヤミーに仲間の十刃たちの視線は冷たい。
「いつ何時、そうなるとも限らん。
俺たちは十刃だ。予測不能(←?)の事態にそなえ、心構えが必要だ。」
この時、ヤミーは何故、ウルキオラが珍しく親切にも自分を制したのか理解した。
そら、そんなところでブハーッ!としようものなら、速攻で十刃から陥落することは確実だ。
イヤ、へたすれば命も危ないだろう。
「すまん、ウルキオラ。」
また命を助けられたなと、素直にツンデレ顔に感謝するヤミーだった。
・・ところで・・・
それとは違う理由で、紅茶を飲まなかった十刃が二名いる。
一人目はグリムジョー・ジャガージャック。
藍染の「お座り」霊圧を食らい、椅子にではなく未だ冷たい床に絶賛お座り中。←ていうかまだ腰が立たんらしい。(笑)
でも、そろそろ立たんと、お尻冷えるよ?←要らん世話だ。
二人目はアーロニーロ・アルルエリ。
「・・・コノ紅茶・・。ドウヤッテ飲メッテ言ウノカナ・・。
セメテ、ストロー位ツケテクレテモイイヨネ?
いや・・オレはストロー付けられても飲めねえと思うけどな。
どっからストロー吸うんだよ。どっから。
ドッカラッテ言ワレテモ・・・。」←注)すべて独り言。
十刃にとって藍染の前髪が予想外の障壁となっていることを知るヤミーだった。
なんちゃって。