A Qestion Of Honour(ザエルアポロ・グランツ)

…君は十刃の定義を言えるかい?

ふん、一応頭の悪そうなソコの君のために、もう一度説明しておこうか。

藍染様によって生み出された破面。
それらは全て、11以下の数字が付けられる。俗にいう「数字持ち(ヌメロス)」だ。
そしてその「数字持ち」の中から選抜された、特に優れた殺戮能力を持つ十体の破面。

殺戮能力が高い順に1から10のナンバーを与えられた破面・・・それを十刃(エスパーダ)と言うんだ。・・分かったかな?

そして、僕が与えられてる数字はNo.8。
けど、僕は戦闘能力は実はそんなに高くなくてね。純粋に戦闘能力だけならとっくに十刃から外れている。それも大昔にね。
どうしたんだい?馬鹿が不思議そうな顔をしていると余計馬鹿に見えるものだよ?
ああ、何故それでも僕が十刃にいられるのかが、不思議なのかい?

・・やれやれ。僕の説明をちゃんと聞いているのかい?
十刃に求められるのは十指に入る殺戮能力だって言っただろう?

それは・・・必ずしも戦闘能力とイコールで結ばれる訳じゃないんだよ。

動物の王はライオンだといわれてるけど、本当はライオンなんかじゃない。群れを率いるオスでさえも、キリンや象には一対一で挑むなんてバカはしない。
一見華奢に見えるキリンの足はその気になれば、ライオンの内臓を一蹴りで潰しかねないし、象に至っては、ライオンのほうが見たら避けるくらいさ。

ただ・・ココを・・頭を少しばかり使ってるだけ。
動物的能力が圧倒的に劣っている人間が今の繁栄を気付けているのも、頭を使うのが少しばかり上手だったからさ。

たとえ戦闘能力が低くても・・殺傷能力を上げることは可能だ。この僕ほど上手くはいかなくてもね。

藍染さまの破面化の技術は日進月歩で向上している。
古く破面化をうけたバカどもは、新たに生まれてくる破面にその場を奪われるのを指を咥えてみてるだけだ。
事実、同じギリアン、同じアジューカスでも、後に破面化を受けたものほど強力になっていっている。

・・僕も一度はその波に押されて、十刃から外された。同じく落とされた連中は「とうとうお前もか。」と同情の眼で見てくれたよ。

冗談じゃない。お前たちカスと僕を一緒にするんじゃない。
僕は必ず十刃に戻ってみせる。どんなことをしてもだ。

ノイトラにNo.3だったネリエルって言う女を陥れるために手を貸せと言われ、即答でOKを出した。
自分ひとりじゃ、敵わないから僕の助けが必要というわけだ。
情けなさはこの上ないが、そんなことよりも、僕は成功の暁に出された条件に飛びついたわけだ。No.8をノイトラから譲ってもらえるという条件にね。
勿論、数字を与えるのは藍染様だけど、上がいなくなれば落とされたばかりの僕が上にあがるのは当然だろう?

そして、また十刃になれた時の気分たら、とても言い表せないよ!
選ばれた10体にいられるという喜びは、おそらく十刃にしかわからないだろうね。

ただ・・・だからといって、それで終わりなわけじゃない。
破面はこれからも生み出される。
僕が外される危険は常に孕んでいるんだ。

僕は、破面どものすべてのデータ収集に乗り出した。
そのためならどんな事でもした。録霊蟲だってその一つだ。分らないように対象に寄生させるのも結構大変でね。さすがに十刃クラスになるとそうそう、寄生させてもらえないんだ。
すぐに気づかれちゃうしね。

おかげで僕は、寄ると何かされると言われて随分な嫌われようだよ。

従属官も自分で作った虚を特別に破面化したものにしている。
僕は戦闘能力が低い。となれば敵の攻撃を受けて、負傷する確率が高いということだ。
しかし、大量の回復薬などを持参するという行為は、戦闘時はできるだけ身軽であるという原則に反するだろう?だから、従属官にその役目をしてもらうわけだ。
従属官なら、持ち歩かずとも自分で僕についてきてくれるからね。戦闘能力なんて期待してない。弱ければ数で勝負すればいい。
いくらでも替えのきく、僕に服従する従属官。それが僕の希望だ。

勝つためなら、どんな罠でも張る。どんな弱みだろうが利用してやる。
どんなに卑怯だと言われようとも、どんなに汚いと言われようとも、それで勝つなら構わない。

・・僕の倒されるべき哀れなバカ共が…僕を罵るだろう?

・・あれがたまらなくてね・・・・。

バカ共の呪詛は僕にとっては賛歌そのものだ。
奴らが喚けば喚くほど、僕は『いい仕事』をしたことに他ならない。

・・もっと僕を罵ればいい。

・・もっと僕を嫌いだと言ってくれ。


・・・誰よりも嫌われる存在・・それは世界で頂点たる科学者の栄えある称号だ。


何が間違っていて何が正しいのかなんて、終わってみれば分らないものだろう?
何が卑怯で、何が正々堂々なのかなんて、そんなのは少しもソソられない。
美しく勝とうが、汚く勝とうが、最後に立っている事が重要だとは思わないかい?

愛されることなどに意味はないよ。信頼されるなんて、そんなものはカス以下でしかない。


・・・聞こえないかい?
・・・僕を呪う断末魔の美しき賛歌の歌声が。
・・・ああ・・・なんていい声なんだろう・・。

・・・背筋を上り逝く快感。肌が泡立つような陶酔。
・・・これこそがエクスタシーだとは思わないかい?

僕はこれからも絶対に十刃からは降りるつもりはないよ。
いや・・それどころか、数字はこれからももっと上に上げてみせる。

・・・戦闘力の低い僕がね。

十刃落ちしていく哀れなカス共。
せいぜい己を嘆いていればいい。せっかくついているその頭につまった小さな脳みそを使うこともなく、ただ不運を嘆いていればいい。そして、忘れ去られることを。


だが僕は違う。
ザエルアポロ・グランツ。この名は最も破面から嫌われる存在として輝き続ける。

嫌われることこそ、名誉。


尊敬だって?ハッ!そんなもの、そこらの虚にでも喰わせておけばいい。

問題は・・・。

名誉が保たれるかどうかだ。


・・僕という名誉がね。


・・だから、どうか君も僕を嫌ってくれないか。

・・世界でいちばん嫌ってくれ。





なんちゃって

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