アーロニーロ誕生
発明とは失敗の中に存在する。
当初考えていなかったような物が、偶然の産物で出来ることもあるのだ。
これはそんな、偶然から始まった。
惣さまは不満だった。
惣さまが目指すは新しい時代を担いうる新しい存在だ。
虚と死神の境界線を取り除くこと。
それが目下の研究テーマである。
その研究の為に、惣さまは色々な改造虚を作ってきた。
まあ、それなりに個性があると言えなくもないけど、どれも惣さまの満足を得られるものではない。
ヒュージホロウを研究対象にするのはもう飽きてしまった。
今はメノスを改造することがメインである。
やっぱり虚が強力になればなるほど、面白い結果になることが多い。
本当ならば、ヴァストローデやアジューカスをバンバン使いたい所なんだけど、いかんせん個体数が限られているので、無駄遣いは出来ない。
ご利用は計画的に。
限りある資源を有効に。
もったいない精神を持とう。
脱ダム宣言・・じゃない、いつか脱メガネ宣言。←
仕方がないので、ギリアンを使っているのだが、ぱっとしたものはなかなか出来ない・。
やはり、元の能力が高くないと満足できる内容にはならないようだ・・。
だが、そうそう能力が高いメノスはいない。
ギリアンは比較的に数が多いんだが・・。
ん?ギリアン?
ギリアンを二つ使ってみたらどうだろうか。
一つの個体ならば、満足いかなくとも、二つの個体を一つとして考えることによって、新しい存在になりはしないか。
研究は実践なるのみだ。
やってみないと分からないものなのである。
そしてやった。
見事に失敗。
二つの虚を一つにしようとすると、元々の虚とその持っていた肉体の結びつきが強すぎて、動くこともままならなかった。
「・・やはり失敗か。
虚の肉体が残っているから統率がとれない可能性もあるな・・。
頭の部分だけでやってみるか。」
再度チャレンジ。
すると・・・結果はちっちゃい虚の頭が二つ出来ただけだった。
しかも人面相・・。
「・・美しさにかけるな・・・。」
何事も美しさを求める惣さま。
ポイと出来上がったものを試験管に入れたまま放置した。
そしてまた別の研究に入っていく。
ともかくにも、新たな発見を目指すには失敗することにめげないことだ。
失敗を楽しむくらいでなくてはやっていけない。
そんな折、市丸ギンがやってきた。
「藍染隊長も、熱心ですなァ。
また仰山研究してはるし。」
「失敗作だらけでね。
なかなか満足は得られないな。」
その時だ、ギンが何やら気がついた。
「おや?この試験管なんや喋ってますよ?」
「どれかな?」
見れば例の試験管だ。肉体が無いにもかかわらず、何やら話しているらしい。
だが、惣さま。あんまり興味はない。←キモいから。
「ああ、それか。
唯の失敗作だよ。」
スルーしようとしたところを、ギンが尚も話をつなぐ。
「この子たちに、体あげてみたらどないです?」
「それにかい?←それ扱い。」
「物は試しやし。
よう見たら、この子たちも結構可愛い顔してますよ?」
「・・物好きだな・・。
まあ、いいだろう。」
そして、惣さま試しに体を与えてみると・・・。
肉体が変形する!!
手足は無数の触手に!!
でもその上に乗っかってるのは試験管(笑)。
「・・・やはり、失敗だな。」
黒棺で処分しようとした惣さまに、またもやギンがそれを止める。
「まあまあ、藍染隊長、こんなヘンな形してるんやから、もしかしておもろい能力持ってるかもしれへんし。
暫く使こてみたらどないです?」
「・・これをかい?←イヤそう(笑)」
「よう見たら可愛いやありまへんか。」
「・・・いいだろう。
暫く様子を見てみよう。
だが・・特出する点が無いようなら、これは処分する。
いいね?」
「はいはい。」
まるで要らないおもちゃを捨てるか捨てないかの会話だ。
そして捨てられそうになっている試験管イカは、リストラの恐怖と戦うことになる。
自分の能力が、虚を喰うことによってその虚の能力を吸収することだと分かると、必死で喰った。
喰いまくった。
そして、念願の破面になった時も、リストラの危機が訪れた。
「私の側近に、君はふさわしくない容貌だからね・・。
どうしようか。」
ヤバイ。
せっかく「試験管その一」じゃなくって、アーロニーロ・アルルエリって名前があるんです。って言えたのに。
キモイのが理由でまたリストラされそうだ。
そこでアーロニーロは考えた。
矯正下着ならぬ、矯正服だ。
巨大なイカの本体を、締め付けることによって人の形に保つのである。
無論、手袋まで矯正仕様だ。
試験管から見える本体の顔も隠す事にした。
仮面を被るのだ。
せっかく仮面を割って破面になったのに、また仮面を被らなきゃなんないなんて気の毒な話だ。
しかし、背に腹は代えられぬ。
仮面を被っても後ろから見ると試験管がみられちゃうので、襟は全方位から見られても試験管が見えないように高くデザインした。
ていうか、してもらった。
アーロニーロのファッションアドバイザーは、ザエルアポロ・グランツだ。
無論体を矯正する矯正服も彼が作った。
「エレガント」
これが、アーロニーロの服のコンセプトらしい。
とりあえず、なんとかそれで審査は通ったらしい。
アーロニーロがめでたく十刃の一人に迎え入れられた。
・・苦労してるな・・アーロニーロ・・。
ま・・頑張れ・・・。
嫌われ役だけど(爆笑)。
なんちゃって。