ある統括官の苦悩(東仙要)

統括官・・・。

それは巨悪藍染が生み出した破面を統括する役職を指す。

其の職に就く者の名は東仙要。

自称、「正義を誰よりも貫く純粋な男」である。

・・・他称はどうだか分からないが・・・。


統括官の職務には、生まれでた破面たちを、藍染の手足として働くにふさわしい者に教育する責務をも担っている。

藍染様にふさわしい駒となるように、品格のある破面へ教育しなければならない。


・・当然、これは彼のいう正義の行いの一部なのだ。


巨大なダイニングテーブルに食事が並べられている。
現在、テーブルマナーの授業時間のようだ。
品格ある破面は、どうやらテーブルマナーもきちんとしなければならないようだ。

ここでは東仙は、統括官ではなく、ヘレンケラーに出てくるサリバン先生と化す。
サリバン先生と違う所は、サリバン先生の受け持った生徒は1人であるが、東仙の場合生徒は11人と言う所である。
内訳としては十刃10人とワンダーワイスを合わせて11人だ。


「・・ノイトラ。足を投げ出して座るんじゃない。姿勢が悪いぞ。
ヤミー、パンをそのまま口に放り込むな。一口ずつちぎって食べるんだ。何度言ったら分かる。何?お前の口の大きさなど聞いてはいない。

そこ、カラトリーの持ち方が変だ。フォークをグーで持つな。

ウルキオラは・・・いいだろう。←どこまでも優等生(笑)。」

今日も虚圏のサリバン先生は大いそがしだ。

もちろん最大の問題児も存在する。

「・・・グリムジョー・・。シチューを箸で食べるな。ちゃんとスプーンがあるだろう。」
実はグリムジョーは大の箸好きだ。なんでもかんでも箸で食う。
汁物は具は箸で食べ、汁は器に口をつけて飲む。


・・・これがサリバン先生にはどうにもこうにも許せない・・・。

ヘレンケラーことグリムジョーは叱られれば叱られるほど、ヤンキー魂に火がついてしまい、反抗的になる。
そもそも、自分の存在感を反抗的態度で手を焼かせてアピールするタイプだ。
そこもまたサリバン先生には許しがたい所である。

注意されたグリムジョー、持ち込んだ携帯の箸を一応置いて、スプーンに持ち換える。

「それと手をポケットから出せ。姿勢も悪い。」
さらにサリバン先生の注意が飛ぶ。

ジロリと先生を睨み付けたグリムジョー、当然ここはヤンキー魂を披露する時である。

「な・・!!!肘をつくとは!」
肘を突いて食事をする事も、当然サリバン先生は許しがたい。

この辺でサリバン先生がキレた。

「・・・貴様・・・。
貴様のような奴は藍染様を守るべき十刃にふさわしくない!!

また←(笑)その腕斬りおとしてくれる!!」

本当は処刑したい所なのだけれど、藍染様の許可なくして破面を処分する事はサリバン先生の正義には反する事なので、さすがに我慢しているようだ。


喧嘩上等、ヤンキーは反発して何ぼのグリムジョー。
嬉しそうに立ち上がった!!!



その時だ。



「・・・要の言うとおりだよ、グリムジョー。
肘をついて食事をするものではないからね。」

藍染様登場。

ああ!!飼い主に叱られて。勢い良くブンブン振られていた、見えざるふさふさ尻尾がうなだれて行く〜〜!!

「いやァ〜、東仙さんもタイヘンですなあ。言う事聞かん子ばっかりやから。」

いけすかない藍染様の副官もご登場。

「・・藍染様・・。もう少しテーブルマナーを習得させるには時間がかかるかと・・。」
純粋なサリバン先生。自分の評価が気になるところだ。

「直ぐには上手くいかないものだよ、要。
急ぐ事はない。・・・・ゆっくりやりたまえ。」

「分かりました。」


藍染様、ご退場。


ゆっくりしていいと言われると、余計急ぎたくなるのが、虚圏のサリバン先生だ。

ぐるぐるテーブルを回って、指導する事に忙しい。

そこへ、東仙の裾をつかむ者が。
「!!!」
「・・・ア〜〜〜・・」
「・・ワンダーワイスか・・。」

ワンダーワイスの口はスープでベトベトだ。スープを飲むスプーンを立てて持っているため、スプーンの柄の方にまで、汁が垂れてきている。

「口を拭きなさい。ナプキンがあるだろう。」
「・・・ナプキン・・・・」
「これだ。この布だ。これで口を拭きなさい。」
汚れた口元を差し出すワンダーワイス。
どうやら東仙に、拭いてくれ、と言う事らしい。

「自分で拭くんだ。」
言いながら拭いてやる東仙。
どうやら、東仙は意外に子供好きなようだ。

ベタベタのスプーンも渡され、拭いていると、今度は口を開けて待っている。
食わせろ、ということらしい。

グリムジョーが同じことをすれば、すかさずスープの皿が顔面に直撃しているだろうが、なぜかワンダーワイスだと憎めない。

サリバン先生の正義が揺らぐ瞬間だった。





そのころ・・・。
「いやァ、東仙さんも、あないな事ようやりますわ。
ボクは出来まへんなあ。」
「そうかい?」

「言う事聞かん子は、ボクならさっさと処分しますしねえ。」
「処分してよいと言う許可は出してないからな。」
「でも、ボクやったら処分しますけど。」
「・・ほう?それで私にはどう報告するんだい?」


「『すんまへん。やってまいました。

もっとエエ子作ったってやってください。』って謝らせてもらいます。」

「実にお前らしいが・・要の正義には其れは無いな。」



「そやからあのお人、ボクと仲良うしてくれへんのかなあ。」

全く残念がっていない、副官の呟きがあった。






なんちゃって。

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