操られし男(吉良イヅル)

・・・僕は・・・僕は今まで一体何をしていたのだろう。
雛森君を止めるために剣を向けて、拘束されて以来、一体何を・・・。


市丸隊長が僕を牢から連れ出して、日番谷隊長と戦った後、市丸隊長は僕にこう言った。
「イヅルには話しとかないかんなあ。実はボク、ある指令を受けとるんや。」
「指令?一体何処からですか?」
「中央四十六室から。今回の処刑を機に反対分子及び不穏分子の燻り出しと排除せよ、っていうんやけど。」
「しかしまさか、日番谷隊長が・・。」
「ホンマ、人は見かけによらんなあ。でも・・・あの手紙は本物やで?ボクが改ざんしたわけでも、偽物を作ったわけでもない。」
「しかしにわかには信じられません・・・。双極の力を手に入れようなんて。」
「ボクがイヅルを連れ出したんは、中央四十六室の意思でもあるんや。今から連れて行くさかい。自分で見るのが一番やろ?」

そうして、僕は副隊長の身では決して近づくことの出来ない、中央四十六室へ通される。

そこで見たものは、最終決定機関である46人の長老たちだった。
「良くぞ来た!!吉良イヅルよ!このたび、不穏分子を一掃する任務をそこな市丸にやらせておる。
日番谷冬獅郎が、逆賊なのは最早明白!
恐らく、日番谷はここ中央四十六室を占拠するべくここへやって来るだろう。
これ以上、あやつの好きにはさせてはおけぬ!
お前は吉良と共に、逆賊を討つのだ!
日番谷に同調するものがいるようならば、そやつも逆賊。
打ち据えよ!よいか!これは中央四十六室からの命である!!」

・・・中央四十六室からの命。
それも直々に言い渡されたことにより、僕の疑問は霧散した。
日番谷隊長は逆賊。

「イヅル。ボクと一緒に戦ってくれるやろ?今まで黙ってて堪忍な。」
「とんでもありません。このような重要な任務に加えていただいて、有難うございます。どうかお供をさせてください!」
「それでこそ、イヅルや。頼りにしとるで?」
「はい!市丸隊長!!」

市丸隊長と共に逆賊を討つのだ。
心のどこかで腑に落ちないところに眼を背けて僕は決心した。

僕らは中央四十六室に現れるという日番谷隊長を待ち伏せしていた。
「恐らく、乱菊も来るやろうから、イヅルは乱菊を頼むで?ここからなるべく遠ざけるんや。乱菊は手ごわいやろうけど、イヅルに任せてええ?」
「もちろんです。先輩だろうと僕は負けません!」
「イヅルはホンマに頼りになるなあ。」

僕が気が小さいことは、市丸隊長は最初から気付いておられた。
僕がそれを気に病んでいることも。
だが隊長は、そんな僕に重要な任務を何時だって任せてくれた。
そして、何時も励ましてくれる。
「流石はイヅルや。」、「頼りにしとるで。」

そうして、実績を僕に積ませることにより、隊長は僕に自信をつけさせてくれたのだ。
僕が今あるのは、市丸隊長のおかげといってもいい。
・・・・そう市丸隊長のおかげなのだ。

そして僕はそんな市丸隊長を補佐すべく、やってきた。
今までも、そしてこれからも!

予測どおり、日番谷隊長は乱菊先輩を連れてやってきた。

「どうやって、ここに入った?!」
日番谷隊長が僕に聞く。
どうやってだって?決まっているじゃないか。開けてもらったに決まっている。

・・・・何かが引っかかっているような気がする。

だが、そんなことを気にしている暇は無い。
乱菊先輩を、遠くまで引き付けて、戦う。

それが僕の役目。

・・・・そう思っていた。

全てが終わって、僕は「現実」を知った。
僕の信じていたことは一体なんだったのか。
僕は操られていたのだそうだ。
中央四十六室からの指令は幻術。
すべては幻。

そして僕は幻の中で踊る人形だったのだという。

すべては幻。

『市丸隊長。
僕はあなたに信頼されていると思っていました。
あれも幻だったのでしょうか。

僕はあなたに操られていた人形だったのでしょうか。

しかしその糸も切られてしまいました。

僕は・・・僕はこれからどうすればいいのでしょうか。

いっそ、あなたに操られていたままのほうが、幸せだったのかもしれません。

・・・あなたはこんな僕を見て笑いますか?』

なんちゃって。

おまけ

「ちょっとイヅル!!何辛気臭い顔してんのよ!!」
「乱菊先輩!!」
「ちょうどいいわ。今からのみに行くわよ!!アンタもついてらっしゃい。」
「いえ、先輩、今日は僕・・。」
「アタシの相手が出来ないって言うんじゃないでしょうね。イヅルのくせに生意気よ!!」
「先輩、もしかしてもう酔ってます?」
「さあ!!行くわよイヅル!!今日もガンガン飛ばすわよ〜〜!!」
「ああ〜〜〜!!乱菊先輩〜〜〜!!胸!胸が当たってます〜〜!!」
「有難いでしょう!!さあ、ついてらっしゃい〜〜〜!!」
「ああ〜〜〜!!!」

市丸隊長・・・。僕は次は乱菊先輩に操られてしまうのでしょうか。
しくしく。でも結構いいかな。(今も胸当たってるし)

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