遊び心(浦原喜助)
・・ま、あくまでアタシの考えなんスけどね・・?
アタシみたいな研究者・・といっても発明者と言った方がいいのかもしれませんねえ・・。
そういう人種っていうのは、遊び心を持ってるもんだと、アタシは思うんスよ。
別に作ったものが、何に利用されるかなんて、あんまり細かい事は考えてないもんです。
ただ・・面白いかな?って思って作るものが殆どなんじゃないんスかねえ。
アタシの場合、その遊び心が出ちゃった物のひとつが、義骸なんスけどね?
始めは、どこまで「人間」に近いものを作れるか、でやってみたんです。
それを作って何に使うかなんて、考えてませんでしたしねえ。
アタシたち死神が、「人間」として生きる事が出来るか、って言う単なる遊び心だったんス。
「人間」として暮らすわけですから、尺魂界に死神だと捕捉されるようなのだと、意味がありませんので、捕捉出来なくさせなければ意味がない。
見かけを人間に似せるだけなら、簡単ですし、発明の意味がありませんしねえ。
もともと義骸っていうのは、死神の霊力を回復させる為に高濃度の霊子で出来ているもんでしょう?
それゆえ、尺魂界側は、義骸から放たれる霊子を捕捉して、死神を把握してます。
霊子は尺魂界を構成している物質の基本ですからねえ。
つまり・・完全に「人間」になりすますためには、義骸を尺魂界にある物で作っても意味がない。
現世にある物質で義骸を作ればいい。
さて、これで義骸そのもので見つかる心配はなくなります。
でも、まだ完全に「人間」になりすます事は出来ません。
まだ・・・死神そのものの霊力が残りますからねえ。
霊力を把握できれば、死神を見つけるのはたやすい。
つまりは霊力を隠せれば・・・見分けはつかなくなる・・。
いや〜、こっちのほうは手間取りましたねえ。
霊力をそのままでなんとか、隠そうとしたんスけど・・やっぱり不自然さが残りましてねえ。
完全に分からなくするためには、霊力を分解するしかなかったんス。
その義骸に入った死神は、霊力を分散されつづけます。
おかげで、「人間」そのものに見えるわけなんスけど、霊力が相当高くなければ持っている霊力を全部分解されて、本当に人間になっちゃいます。
ある程度の霊力を持っている人でも、弱った状態で入れば、やがては人間になっちゃいます。
別に、そんな義骸を作ってどうするということなんて、考えてませんでした。
だって、面白そうじゃありませんか?
死神が「人間」そのものとして暮らせる義骸だなんて。
もちろん、尺魂界がこんなことを知れば、アタシ自身がただではすまない事も知ってましたよ?
これを許せば、死神の脱走をいくらでも許してしまう結果になりかねませんからねえ。
死神っていう仕事も酷な仕事ですし。
イヤになる人も大勢いますし。
そんなことを尺魂界が許せるはずがない。
ま、実際使うことがあるとは思いませんでしたし、尺魂界にもナイショにし続けるつもりだったんですけど・・・そうも言えなくなってきたんス。
藍染サンが、アタシの崩玉を狙ってきたのがハッキリしましたんでね?
そのまま、尺魂界に居続けるのが危なくなってきてしまった。
それで、追放されるために義骸の事を話を、表に出しました。
そして読みどおりに、アタシは尺魂界を追放され、現世に逃れました。
まあ、でもその義骸を使うことはないだろうと思っていたんですけど・・・。
それを貸してくれという人が現れましてねえ。
・・・「黒崎一心」サンという人です。
そう、黒崎サンのオヤジさんです。
20数年前でしたか、フラリとアタシの前に現れましてねえ。
例の義骸を貸してくれ、と言われました。
「霊力分解し続けますけど・・いいんスか?」ってお聞きしたら・・
「何言ってやがる。だからいいんじゃねえか。」と言われましたっけ。
それを聞いて、アタシは一心サンが本気で「人間」になりたいんだと分かりました。
もちろん、義骸はオーダーメイドです、
暫らくして一心サンにお渡しした義骸に、アタシは更に「遊び心」を入れてみました。
・・・何だと思います・・・?
「生殖機能」ですよ・・。
だって、ホンキで「人間」になりたいんでしたら・・ご必要になるんじゃないかと思いましてねえ。
もちろん、引渡しの際には、一心サンに言いましたよ?
「あ、生殖機能もオマケしておきましたから。ご希望でしたらお子さんも作れますよ?
でも・・くれぐれも『計画的』にしてくださいね?」ってねえ。
・・・・一心サンの反応を楽しみにしてたんスけど・・・・。
ちょいと驚いた顔をしただけで、その後はニヤリと笑って返されましたっけ。
「おう、サンキュ。」
まったく・・もう少し可愛い反応があってもいいと思ったんスけどねえ。
正直なところ、一心サンがお子さんを作られるとは思いませんでした。
暫らくぶりにお見かけすれば、「人間」のお父さんそのもので幸せそうでしたっけ。
そしてそのお子さんは、今藍染サンと戦おうとしている。
いやあ・・運命って不思議なもんスねえ。
この頃ふと思うんスけどね・・?
アタシたちは「運命」っていう遊び心に振り回されてるだけなんじゃないかって、思うんですよ。
どうせ、振り回されるんなら・・こちらも振り回される事を楽しめるような、遊び心を持ってもいいんじゃないですかねえ・・。
・・といっても、状況は極めて困難です。
だからこそ、遊び心を持たなきゃいけないんじゃないッスかねえ。
真剣に・・・遊び心を持たなきゃいけないような気がするんですよ・・。
・・ま、あくまで一介のハンサムエロ店主の言葉ですから・・。
軽く流しておいてくれませんかねえ・・。
そう、アナタの遊び心でね・・?
なんちゃって。