分院院長 更木剣八

・・・巨大基幹病院BLEACH。

実はこの病院には分院がある。
ごく小さな分院だ。

診療科目は外科と内科。
本院のように、細かく分類されることはない。

この分院には他の病院に見られないある特殊性がある。

この分院には一般の患者は訪れない。
訪れるのは・・・

・・訪れるのは、「その筋」の患者ばかりなのである・・。

この分院が出来たのは、ある一人の男がいたからこそだ。

その男の名・・・更木剣八という。


更木は特異な医者だった。
一応、医師免許は持っているのだが、医師会には所属していない。
分院院長になる前は、抗争により傷ついた「その筋の人」を治療するために、出向いて行くと言う、出張医師だった。

専属希望も数多かったようだが、更木は一切承知しなかった。

理由は簡単だ。

「斬る機会が減るから。」

弱みを握って、子飼いにしようとして、更木の連れを誘拐したある組幹部は、検診と称して腹部を切開され、胃下垂と肝肥大を指摘され、また縫い合わされた。
ちなみに麻酔なしだ。

彼が「その筋の者」を主な対象としているのは、需要が強いこと、そして支払いがいいこと、刀傷の治療が多いことだ。

更木自身、極道でトップを張れるほどの度胸と腕がある。
それなのに医者を選んだ理由は、合法に人が斬れるからだった。

医者以外で、他人の体に刃物で傷つけて、許されるという職業はない。

おまけに、極道は診てくれる医者が少ないので、多少縫合が荒っぽくても文句は言わない。
傷も勲章のうちといわれる特殊な人種だ。
ある意味更木がやりやすい人たちと思われる。

そんな更木も、不満があった。

1)出向いて治療するというのには、設備的にも限界があり、十分な治療が出来ないということ。
2)わざわざ治してやってるのに、こちらが出向くというのは、そもそもおかしいのではないかと、気づいてしまったこと。(笑)
3)かといって、自分で病院を作るのは面倒くさいこと。



そんな時にある男からの打診があったのだ。

「なんだ、わざわざ呼び出しやがって。大病院の院長さまが俺に何のようだ。」

呼び出したのは、巨大基幹病院BLEACH院長、石田竜弦。
院長室の椅子に座り、デスクの上に両肘をつき、軽く手を合わせて、更木を見上げている。

ただでさえ、背が高いうえに、刀傷のある男が見下ろしているのだ。相当な威圧感で、普通の人間なら目すら合わせられないだろう。

そのビリビリするような視線を、まるで何も感じていないかのような、冷たい眼差しだった。

「お前をスカウトしたい。」
「俺はこの病院で働く気はねえぜ?」
「意見が合うな。私もお前にこの病院で働いてもらう気はない。」

「じゃ、何のスカウトだ?この俺に。」
「実は、分院を作る計画がある。

分院といってもごく小さなものだ。お前にその分院の院長を任せたい。」
「断るぜ?いまさら、お前んところの系列になる気はねえしな。」

「話を最後まで聞け。
その分院にはある特殊性を持たせたい。
その特殊性の上でやれるのは、今の所お前以外適任はいない。」

「なんだよ、もったいぶらずに話したらどうだ。出せよ、全部。」
「その分院とは・・いわゆる極道の為の病院だ。

彼らとて、治療を必要とするときがある。
しかし、本院の方で診る訳にはいかん。他の患者に影響が及ぶからな。

しかし、ニーズがあるのも確かだ。
しかし、通常の医師は嫌がって、そんな診察はしない。

そこで、お前に白羽の矢が立ったわけだ。」

「なるほど?それで?」

「基本的に分院と本院は独自採算とする。
機材は最新のものを用意しよう。医師及び、看護師、薬剤師の補充はそちらの都合で増やしてくれてかまわない。

経営のノウハウはないだろうから、経理のプロは派遣してもいい。

・・お前もそろそろ流しの医者から卒業しても良い頃だと思うが?」

「お前の指図は一切受けねえぜ?それでもいいのか?」

「するつもりはない。

私の要求することは一つ。

『黒字経営』であることだ。

こちらとしても、リスクを負うことになる。お前は、この点をクリアしてもらえばいい。」

「だったら、決まりだ。

受けてやる。」


一旦持ち帰らず、その場で決める。



・・・・・この瞬間が、分院BLEACHが誕生した瞬間でもあった。





なんちゃって。


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