ラーメン店「断崖」にて ある日の客 3

尸魂界のとある一角・・。
修兵が店主となっているラーメン店「断崖」・・・。


今日もまた強烈な客がやってきた。

「ごめんくださ〜〜い!!」
女の子の声がする。
修兵、恋次、一護がカウンター越しの厨房から顔を向けるが誰もいない。
「誰もいねえな。気のせいか?」
と思ったときだった。その客がカウンター下から席に飛び乗った。
「もう〜〜!!ちゃんと挨拶したんだから、ちゃんと返してよね?
お母さんに、ちゃんと挨拶しなさい、て言われなかった?!」

お客様はお怒りのようだ。
身長109センチ。当然足は地面に全く届いていない。プランプランした足をカウンターにガンガンぶつけながらお客様は文句を言っている。
(子供って、これやりません?)

本日のお客様は、十一番隊副隊長、草鹿やちるその人であります。

「イヤ・・見えなかったからよ・・・。
悪かったな。やちる。」
チビでガキでもやちるは副隊長だ。
それに全く敬語を使わないのは当然、一護だ。

「やちるさん。いらっしゃい。」
・・そう。恋次は十一番隊にいたとき、やちるの部下だった。
よって敬語は当然だ。
「あ、そりりん!!来たよ〜〜!今日はいっぱいサービスしてね?」
にっこり笑う様は正しく天使のような小悪魔の笑みである。

「なんにします?」
修兵も一応はお客様にご挨拶。

「う〜〜んとねえ。え〜〜とねえ。」
カウンター上のメニューを見ながら、やちるの出した注文は・・・。


「お子様ランチ!!」


「ねえよ!!」←(珍しく、3人ハモっている)
「ええ〜〜?なんで〜〜?」
「メニュー見ただろうが!!そんなもんは書いてねえ!!」
「だって、やちる字読めないんだもん!!」
「そんなわけあるか!!」←(またもや3人ハモっている)


「じゃ、作って?ね?そりりん。」
「イヤ・・・でも・・やちるさん。」
「あ〜〜!!やちるにサービスしてくれるって約束したのに〜〜!!
いけないんだ〜〜!!約束破っていけないんだ〜〜!!」

「ねえもんはねえんだよ。大人しくラーメンでも食っとけ。」
さすがは修兵!!店長らしく毅然とした態度だ。

「ひどい・・・。せっかく可愛い女の子がおこずかいを握り締めて食べに来てるのに・・・。
みんなひどいよ・・。」



出た!!秘儀、「泣き落とし」!!


「うっ!!」←毅然とした態度。

どうした、負けるな、修兵よ!!
チビだろうが、ガキだろうが、やちるも君と同額の給金を貰っている副隊長なんだぞ?!!
「おこずかい」とかの可愛い表現に惑わされるな!!


「ね?お願い。作って?」

「ううっ!!」←・・・毅然とした態度。

「あたし・・今日楽しみにしてたのにな・・・。」


「・・・しょうがねえな。作ってやるよ。」←毅然とした態度?(笑)


・・・・どうやら毅然とした態度は、小悪魔の偽の涙より脆いようだ。


といっても、ここはラーメン屋だ。
通常のお子様ランチの材料などない。

「一護、ケチャップあったよな?」
「ああ、俺が勝手に置いてんだけどよ。」
「それ貸せ。」

店長修兵、まずは麺を通常の半分の湯で時間にし、葱油とにんにく、鷹の爪、醤油を用いて和風ペペロンチーノを作成。
ラーメンの具材とご飯で豪快に鍋を振り、ケチャップライスを完成。
更に器用にも中華なべを用いて、ケチャップライスを卵でくるむ。

何処から出したか、大皿にオムライスとペペロンチーノ、サラダが乗った見事なお子様ランチを完成させた!!

凄いぞ、修兵!!あとはお客様の反応を待つのみだ!!


「・・・・。こんなのお子様ランチじゃない。」


「なんだと〜〜?!!」
なんと、やちる!!痛恨の駄目だし!!
「お子様ランチだろうが!!どっから見ても!!」

「だって、旗が刺さってないもん!!」

旗?!!お子様ランチかどうかは旗で決まるのか?!!

「・・ほらよ。」
すかさず一護がオムライスに何かを突き刺した!!

ナルトに楊枝を刺している。
「・・・これで旗もあんだろ?」

「・・・・うん!!」
ようやく納得した本日のお客様。
豪快に食べ始めました。

「ナルトを旗に見立てやがったのか。・・やるな。一護の野郎。」
「うちにも妹がいるからな。
・・・なんかこれくらいの頃を思い出してよ。」

一護、やちるの背に騙されるな!!
何年その背でいると思っている!!


「ああ〜〜!!美味しかった〜〜!!
ありがとう〜〜!!修ちゃん!!」

「その修ちゃんてのは止めろ。」
「え?ダメ?じゃ、ひ〜たん。」
「なんだよ、そのひ〜たんてのは。」


「苗字が『ひ』で始めるし、うちの弓りんに『ひ〜ひ〜』言わされたから。」


「『ひ〜ひ〜』じゃねえ!!『ハアハア』だ!!」


・・・あんまりかわらんと思うぞ?修兵よ。


「御代ここにおいて置くね?じゃ、また来るから!!」
チャリンと御代を置いて立ち去るやちる。

「やれやれ、あのガキ・・。」
一護が皿を片付けようとした時、何かに気付いたようだ。

「・・店長。問題が起きた。」
「なんだ?」
「やちるのやつ・・。これっきゃ置いてねえ。」

一護の手の中には・・・現世にして100円相当額の硬貨しかなかった。
・・・・草鹿やちる。

キッチリ支払いもお子様仕様で帰っていたようである。


「・・・・足りねえ分は恋次の給料から引く。」
「ええ?!!なんで俺から引くんスか?」
「お前の元上司だろうが。お前が責任取れ。」
「そんな殺生な!!」
「それにお前なんもしなかっただろうが。」
「ええ〜〜?!!銀蜻蛉の支払いが〜〜!!」


ラーメン店「断崖」。


本日もなかなか盛況のようである。

トラブルもね。




なんちゃって。

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