ラーメン店「断崖」にて ある日の客8
尸魂界のとある一角・・。
修兵が店主となっているラーメン店「断崖」・・・。
こってりとした豚骨醤油味が売りのこじんまりとした店だ。
今日も修兵、恋次、一護が忙しく立ち働いている。
そこへ、今日も一人の客が現れた。
「やあ、一護君。それに檜佐木副隊長に、阿散井副隊長。皆元気そうだな。」
病人の癖にやけにいつも元気そうに見える白髪の男。
十三番隊、隊長の浮竹十四郎である。
生まれて直ぐに肺病を発病し、髪が真っ白になったというヘビィな経歴ながら、普段病人である事を感じさせないほど明るい男だ。
元気なのかと思うと、急に高熱を出して寝込んだり、たまに喀血してしまうので周りの者まで油断は出来ぬ存在である。
浮竹は何でも食べる。好き嫌いは全くない。
最近は、ラーメンがお好みのようだが、実際は断崖メンバーの顔を見るという目的もあるのであろう。
「いらっしゃい。浮竹隊長。今日も醤油で?」
いろいろ好奇心旺盛に頼んでいたが、この頃は醤油で注文が落ち着く傾向にあるようだ。
「うん。それと・・・ちょっと相談なんだが、檜佐木くん、またチャーハンを作ってくれないかな。」
「いいですよ?」
どうやら、常連さんに出すチャーハンを食べられる位置に浮竹はあるようだ。
「ありがとう。いやあ、昨日までちょっと熱で寝込んでたからね。今日はたくさん食べて元気をつけようと思ってな?」
「熱?そんなんで出歩いていいのかよ。」
「ああ。しょっちゅうだからね。心配は要らない。」
「熱って、何度くらい出たんスか?」
恋次の問に、あっさり答える浮竹。
「う〜〜ん。9度ちょっとかな?←39度以上という意味。」
「寝てなきゃダメじゃないですか!!」
「いや、今はもう7度ちょっとになってるし。それにちゃんと食べるものを食べておかないと、余計悪くなるんだ。」
「はあ・・。」
「へい、おまち。」
修兵がチャーハンと醤油ラーメンを出す。
「ああ。ありがとう。じゃ、いただきます。」
ちゃんと、手を合わせて「いただきます」をする浮竹。
どうやら、三つ子の魂1000(笑)までものようだ。
浮竹家は貧乏貴族だ。
貧乏人の子沢山とはよく言ったもので、浮竹の下には何人もの妹や弟がいる。
そんな中では、当然満足な食事は得られない。
限られた食事を分け合って食べる。
当然、食べ物に対する有り難味は、骨の髄まで親から教育されていた。
隊長になり、食に全く困らなくなった今でも、親の教えは浮竹の基礎となっている。
ご飯粒一つでも浮竹は残さない。←エライぞ!浮竹!!
実に嬉しそうにご飯を食べてくれるので、浮竹は断崖メンバーからも好評だ。
スープは当然全部飲む。
食べ終えた浮竹。
幸せそうにこういった。
「うん。じゃ、前菜はこれくらいにして、メインと行こうかな。
次は、味噌と塩を卍解盛で頼むよ。」
チャーハンとラーメン1杯が前菜?!!
しかも、メインで味噌ラーメンと塩ラーメンそれぞれ卍解盛?!!
「・・浮竹隊長・・チャーシューじゃなくて盛を卍解ですか?」
「隊長、うちの卍解盛は20人前ですよ?」
「おいおい。浮竹さん、病み上がりでそんなに食って大丈夫なのか?」
「うん。大丈夫さ。言っただろ?栄養つけないと!」
そして・・・。特別製の超巨大どんぶりに入った20人前の塩ラーメンと味噌ラーメンが登場。
またもや「いただきます」をする浮竹。
そして・・・・綺麗にスープもなくなった空のどんぶりが、10分後にはそこにあった・・・。
「・・・・すげえ・・・。」
「ホントに病人なのか?」
「食いすぎでまた倒れねえだろうな・・。」
心配する断崖メンバー・・・。
そこへ、病人の隊長はにこやかにこう言った。
「ああ!美味しかったよ。じゃ、シメにしよう!!
デザートで餃子を5人前頼めないか?」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
デザートで餃子5人前を食う男、浮竹十四郎(病人)。
・・・・まだまだ、現役続行は出来そうである・・・。
なんちゃって。