同期の桜(浮竹と京楽)

桜の蕾が大きく膨らみ、開花直前といった3月のある日。
真央霊術院では卒業式が執り行われていた。

見事な晴天だ。
春の光は暖かく、これから一気に草花が芽吹くであろう事を予感させる。

学院長の山本から卒業証書を手渡された卒業生たちが、家に戻るべく学院からちらほらと出てきた。

彼らはこれから、鬼道衆、隠密機動、そして護廷十三隊のいづれかに所属し、秩序を守るべき一員として使命を果たすことを求められる。
そこから先は、彼らも命をかけることとなる。
甘えは許されない。

もうあらかた卒業生が帰ってしまった頃、二人の卒業生が建物から出てきた。
一人は浮竹十四郎、もう一人は京楽春水。
「学院の双刀」とまで言われたこの二人は学院に数々の伝説を創ってきた。

学生はおろか教師にまで絶大な信頼を受けていたこの二人が卒業式が終わってすんなり帰れるはずもなく、在院生や教師から呼び止められ今まで時間をくったのだ。
ようやく解放されたというわけである。


学院は門の所から桜並木が続いている。
今にも花を咲かせそうな桜の蕾を眺めながら、浮竹が言った。
「もう、この桜並木ともお別れだな。」
「最後に花が見たかったねえ。どうせなら。」京楽が返す。

この二人は護廷十三隊入隊が決定している。
いや、もっと正確に言うならば入隊は在学時に既に決定していた。
優秀な人材は当然早くから目を付けられる。

チームのリーダーとして統率力もあるこの二人を、護廷十三隊が他にとられないように在学時に早々にツバをつけたわけだ。
彼らには早くから席官になることを期待されている。

在院時にはよくこの桜並木で、二人で花見をしたものだ。
といっても、人を惹き付けるこの二人だ。黙っていても人が寄ってくる。
二人で始めた花見がいつの間にか大所帯になっているというのも、いつものことだった。

しかしそれも今日で終わりだ。4月からは護廷十三隊で力を発揮することとなる。
将来を有望視されているこの二人には、早く護廷十三隊に馴染むべく3月から来るべしとの通達が来ていた。
ここで花見をすることはもうあるまい。

「・・・ここでは色々教わったな。これからは山本先生ではなく、山本総隊長と呼ばなければな。」
感慨深げに浮竹が言う。
「流石にいつまでも山じいって呼ぶわけにはいけないかねえ。」
「そんな風に先生を呼んでいたのなんて、お前ぐらいだぞ。京楽。」
「いいじゃないか。あんだけ拳骨をくらってりゃ、山じいって呼びたくもなるさ〜。」
「それは先生がお前に期待しているからだ。」

のらりくらりとしているが、適所は外さない京楽に、それでも遠慮なく拳骨を落としていたのは山本ぐらいなものだった。
「しっかりせんか!お主は死神として皆を率いる立場になるのじゃぞ!そんな風でなんとする!」
これが山本の口癖だった。
山本の京楽への期待がうかがい知れよう。

「・・・俺はここに入れてよかった。
死神としての心構えと・・何より友を得ることが出来た。」
「・・・・そうだねえ。」

そして二人で静かに桜を見上げる。
「・・なあ、京楽。
桜だが・・蕾でよかったのかも知れんぞ?」
「そりゃどうしてだい?」
「俺たちはまだ蕾だからな。花を咲かせるのはこれからだ。
・・・なんだか今の俺たちみたいだとは思わないか?」
「そういやそうだねえ。」

「俺たちはこれから色々な困難に会うだろう。
だがこれだけは言える。

どのような困難に会っても俺はお前と志は同じだ。」

「それはこっちのセリフだよ。」
そう言って、京楽はスラリと刀を抜いた。
「抜きなよ。ボク等は死神だ。誓いって言うのは斬魄刀にかけようじゃないか。」
浮竹が驚いたような顔をして、その次はニヤリと笑う。
「そうだな。」
そして浮竹も刀を抜いた。

「我等はいかなる時にも志は同じだ。・・・我等の斬魄刀にかけて。
・・我等はそれをここに誓うものなり。」


そして、刀を納めた京楽が言った。

「さ〜〜て、お互いこれから花を咲かせますかねえ。
パ〜〜ッと!!」
「ははは。同期の桜ってやつだな。」
「ついでに恋の花も咲かないかな〜〜〜。よし子ちゃん〜〜。」
「昨日、ゆう子とか言ってなかったか?お前。」
「そうだったっけ〜〜?追いかけるお尻が多くてさ〜〜。困っちゃうよね〜〜。」
「嘘つけ。お前全然本気じゃないだろう。」
「死神に可愛い子いないかな〜〜〜。」
「・・・・よし子ちゃんは何処へ行ったんだ。」


桜並木は静かにそんな二人を見送っている。


・・・この時になされた誓い。

それは幾星霜を経ようとも、違えることなの無い二人の誓いとなる。





なんちゃって。

・・・・ご卒業おめでとうございます。(笑

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