護廷十三隊のソロモン(狛村左陣)

ソロモン王。
昔っつっても紀元前千年くらい前のイスラエルの王様。
当時のイスラエルに繁栄をもたらしたらしい。
不思議な指輪を持っていて、動物と話せたんだそうな。


「久しぶりだな、花子。主と散歩か?・・どうした。いやに散歩がイヤそうだが。
何時もは喜んで散歩していたと思ったが。」

『どうもこうも無いんですよ〜。熱くて熱くて、やってらんないんですよぅ。』
「確かに今日は暑いが、散歩がいやになるほど暑いとも思えんが。」
『そうじゃなくてこの石畳の道の事ですよぅ〜!
熱くて熱くて、足をつけられないんです〜〜!
(我々なら、カンカン照りで焼けた砂浜を裸足で歩かされるのと同じようなものである。)

ホラ、アタシって座敷犬でしょ?だから肉球が固くないんですよ。
そこに来てこの炎天下で石畳を歩くだなんて、足やけどしそうで〜〜!
あつっ!!あつつつっ!!』

「そうだったな。確かにこの炎天下だと石畳の表面はまさしく焼石。
お前が嫌がるのも無理はない。」

・・狛村は話をしていた。
話の相手は狛村が散歩しているときよく見かけ、会えば話をするような間柄だ。

一見無口なように見える狛村だが、散歩の時には実によく『話しかけ』られる。
昨日カラスに襲われて怖い思いをしたというスズメや、最近狩りが上手くいかないカラス。
最近腰痛を患ったカメに、花粉症のサル、そしてようやく嫁さんが見つかったと言うガマガエル。

そして、今日の相手は若いと言える年を過ぎ、そろそろ中年に差し掛かってきた犬の花子である。
イヤ・・・犬なのだからこの際、中犬と言うべきなのだろうか・・。細かい事は気にすまい。


そして、狛村は実に動物思いな漢である。
花子の状況に気づかず、よかれと思って散歩に連れ出している、中年にどっぷり浸かった飼い主の女性に声をかけた。

「・・そこのご婦人。」
「キャッ!!」

何時もすれ違っているのだが、飼い主と話すのは初めてだったようだ。
まあ、すれ違ってもコワイ外見の狛村に目を合わせず、そそくさと逃げるように歩みを速めていることも狛村はしっかり気付いている。そしてちょっぴりそのワンコハートを誰にも気づかれぬよう痛めるのだった。

それはともかく、まさか狛村に話しかけられるとは思わなかったのだろう。
飛びあがらんばかりに驚いた。

「な、な、何でしょう!!!あたくし何かいたしましたでしょうか!!
お気に触ったのならスイマセン!!スイマセンたらスミマセン!!」

「イヤ・・・わしに詫びることなど何もないのだが・・・・

・・・まずは、落した綱を拾ってくれないだろうか。花子が今にも駆け出しそうだ。」

飼い主は、飛びあがらんばかりに驚いた拍子に、花子の引き綱まで落としていたようだ。
「す、すみません!!」
またも謝り、引き綱を拾い上げた飼い主。
何故狛村が飼い犬の名を知っているのか、疑問に思う余裕など当然ない。

「すまぬな。驚かせたようで。
だが、花子がどうやらこの石畳の上を歩くのが熱くて困っているようだ。
このままでは足の裏をやけどしてしまう。
もう少し涼しくなった頃に散歩の時間を夏場の間だけずらしてやってくれないだろうか。」

「火傷・・?」
意外な言葉を聞いた飼い主はきょとんとした顔をしている。
犬の足の裏が火傷をするというのが理解できないようだ。

「犬の肉球は確かに固めだが、ちゃんと神経が通っている部分だ。
熱さも痛みも感じる。
この石畳の上を裸足で歩かせることは酷だと思うが。
嘘だと思うならば、地面に手を付いてみることだ。」

言われるまま、手をついた飼い主は「あつっ!」と言って直ぐに手を放してしまった。
狛村の言わんとしていることがようやく理解できたようである。

「特に花子はふだん家の中で飼われているため、足の裏の皮膚も薄い。
飼い犬の事を考えてやるのなら、ぜひそうしてやってくれ。」

「ハ・・ハイ!分かりました!!」
急いで散歩を中断して一旦家に戻ることになったようだ。

「よかったな、花子。」
『ああ〜〜!狛村さんてホントにいい人ね〜!助かったわ〜〜!!
ああ〜〜ん、アタシがもう少し若けりゃねえ〜。』
「・・・・悪いがお前とはそういう関係にはなれん。←?」

また一匹の犬の窮地を救った狛村。

散歩の帰り、蛇が今度は『話しかけて』きた。

『狛村さ〜〜ん、アタシ、後2日くらいで脱皮なんだ〜〜!
よかったら抜け殻見に来てね〜〜!』
「ああ。また見させてもらう。」


・・・ウルフフェイスの狛村左陣。


彼のプライベートは何気に賑やかなようである。






なんちゃって。

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