行間兄弟(イールフォルトとザエルアポロ)

・・・昔、昔。
虚圏にある虚夜宮というお城に二人の兄弟が住んでおりました。


兄の名はイールフォルト・グランツ。
弟の名はザエルアポログランツと言い、二人は大層仲の良い兄弟でした。

これは、そんな仲のよい二人の会話です。

「よう、ザエルアポロじゃないか。」
「あ、兄さん?」
「元気してたか?兄弟。」
「うん、元気だよ。兄さんも元気そうで何よりだね。」

「珍しいな、こんな所で会うなんて。研究の方は上手く行ってんのか?」
「順調だよ。おかげで楽しくやってる。僕専用の研究棟も持たせてくれてるしね。」
「そうか。お前No.8だもんな。
身内から十刃が出て俺も鼻が高いぜ。」
「やめてよ、兄さん。
なんだか照れるじゃないか。僕だって兄さんみたいな立派な兄を持てて幸せなんだから。

でもホント僕たちってあんまり似てないよね・・。
あ〜あ、僕も兄さんみたいに綺麗な金髪がよかったな。」
「何言ってやがる。お前こそ綺麗なピンクの髪してるじゃねえか。
珍しい良い色だと俺は思うぜ?」
「そうかなァ、目立ちすぎて恥ずかしいんだよね・・。」
「それに俺と違ってお前は頭も良いし。治療もしてくれるしな。」
「そんなの当然だよ、兄さん。
あ、そう言えばこの前の傷どうなってる?」
「ああ。もう跡形もねえぜ?
スゲエな、お前の治療技術。」
「だって綺麗な兄さんの体に傷なんか残したくなかったからね。
よかった。顔の傷も分からなくなってるね。
安心したよ。

他に調子の悪い所とか無い?」
「ああ、無いぜ。」
「本当は僕も一緒に戦いたいんだけど・・。

解放状態の兄さん・・僕、また見たいからね。
まさしく王子というにふさわしいと思うよ。」
「お前は研究者なんだろ、お前しか出来ない研究があるはずだ。
戦いはこっちに任せて、お前は研究に精を出してればいいんだよ。

「・・そうだね。ありがとう。
今日は会えて嬉しかった。」
「こんだけ広いとあんまり会う機会無いもんな。」
「じゃ、またね、兄さん。」
「ああ。またな、兄弟。」



・・・美しき兄弟の会話・・・・。
しかし、その行間には恐るべき内容が秘められているのでした・・。


「よう、ザエルアポロじゃないか。」
「あ、兄さん?」
(げ、兄貴じゃないか。気安く声かけないでほしいな。僕は十刃なんだから。
もう兄貴とは違うんだよ。これだから馬鹿は)

「元気してたか?兄弟。」
(何が「兄さん」だ。十刃になるまでは「兄貴」って言ってたくせによ。今更上品ぶってんじゃねえよ。
元気そうなのもそのふてぶてしい顔見りゃ分かるけどな。)

「うん、元気だよ。兄さんも元気そうで何よりだね。」
(何だよ、まだ生きてたの?意外としぶといね。)

「珍しいな、こんな所で会うなんて。研究の方は上手く行ってんのか?」
(研究内容で十刃になったくせに。余裕こいてるんじゃねえよ。)

「順調だよ。おかげで楽しくやってる。僕専用の研究棟も持たせてくれてるしね。」
「そうか。お前No.8だもんな。
身内から十刃が出て俺も鼻が高いぜ。」
(つーか、只の実力だけなら十刃なんてなれなかったくせによ。気色の悪い研究で十刃になりやがって。メガネ割るぞ、コラ。)

「やめてよ、兄さん。
なんだか照れるじゃないか。僕だって兄さんみたいな立派な兄を持てて幸せなんだから。
(ホント、バカな兄貴を持って幸せだよ。自分がそうじゃないことに幸せを感じられるからね。)

でもホント僕たちってあんまり似てないよね・・。
・・・僕も兄さんみたいに綺麗な金髪がよかったな。
(昔はボクの事を「カスピンク、カスピンク」って散々いじめてくれたね。今思えばつくづく似てなくてよかったと思うよ。)

「何言ってやがる。お前こそ綺麗なピンクの髪してるじゃねえか。
珍しい良い色だと俺は思うぜ?」
(お前のキテレツな性格そのまんまじゃねえか。所詮お前はイロモノなんだよ。)

「そうかなァ、目立ちすぎて恥ずかしいんだよね・・。」
(ま、この容姿と才能をもってすれば、目立ってしまうのは仕方ないんだけどね。兄貴みたく顔だけじゃないんだよ、僕は。)

「それに俺と違ってお前は頭も良いし。治療もしてくれるしな。」
(十刃のクセに後方でばっかり居やがって。戦うのがイヤなら十刃なんて降りちまえ。)

「そんなの当然だよ、兄さん。
あ、そう言えばこの前の傷どうなってる?」
「ああ。もう跡形もねえぜ?
スゲエな、お前の治療技術。」
(お前に体いじられんの、イヤだったけど他に治せるヤツがいないってんで世話になっちまったんだよ。誰が好きでお前に治療してもらうか。)

「だって綺麗な兄さんの体に傷なんか残したくなかったからね。
よかった。顔の傷も分からなくなってるね。
安心したよ。
(顔だけが取り柄なんだろ?もっと気をつけたらどうだい?兄貴。)

他に調子の悪い所とか無い?
(録霊蟲を全身にたっぷり仕込んでやってるからね。悪くなってもおかしくないよ?)」

「ああ、無いぜ。(奇跡的にな)」
「本当は僕も一緒に戦いたいんだけど・・。
(ウソウソ。バカは前線でせいぜい戦ってりゃいい。参謀は後方だって決まってるからね)

解放状態の兄さん・・僕、また見たいからね。
まさしく王子というにふさわしいと思うよ。
(ホントにあんなに笑える姿は無いよ。マントを持って闘牛場でお相手したいね。)」

「お前は研究者なんだろ、お前しか出来ない研究があるはずだ。
戦いはこっちに任せて、お前は研究に精を出してればいいんだよ。
(それしか取り柄ねえクセに。カッコつけんじゃねえよ、このカスが。)」

「・・そうだね。ありがとう。
今日は会えて嬉しかった。
出来損ないの兄貴の顔を見るとこっちの気分が悪くなったよ。このカス。)」

「こんだけ広いとあんまり会う機会無いもんな。」
(広さに感謝するぜ。たまにしか不愉快にならなくてすむ。)

「そうだね。(僕も同感だよ)←なぜ同調?」
「ああ。またな、兄弟。」
「元気で、兄さん。」
(恥ずかしいからいい加減その「兄弟」ていう口癖止めてくれないかな。
只でさえカスの兄貴をもって恥ずかしい思いをしてるんだ。
兄貴が兄弟って言うたびに、カスの兄弟が本当に増えていくような気がするよ)

(じゃあな。)(じゃあね。)
(このカスめ)←木霊(爆笑)


・・・昔、昔。
虚圏にある虚夜宮というお城に二人の兄弟が住んでおりました。


兄の名はイールフォルト・グランツ。
弟の名はザエルアポログランツと言い、二人は表面上は大層仲の良い兄弟でした。


しかし、その行間には熾烈な骨肉の戦いが繰り広げられていたのでございます・・・。






なんちゃって。

 

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