箱庭(藍染惣右介)

・・・君は箱庭と言う言葉を聞いたことがあるかい?

・・ああ、知らなくても不思議ではないよ?普段あまり耳慣れない言葉のはずだ。

浅い箱や鉢に土を盛り、小さな草木や石などを配し、模型の橋・家その他を置いて山水や庭園の姿を模して観賞するもののことだ。

要するに、限られた空間に、作り手の思う世界を造ることに他ならない。
作り手の心理や思考そのものが出ることから、心理療法として箱庭を作らせることもあったようだが・・・。


実は私も箱庭を持っていてね・・。

その箱庭のことを・・私は虚夜宮(ラス・ノーチェス)と呼んでいる。


通常の箱庭と違う所は、使うものを実寸サイズにしたところかな。
理由は簡単だ。

・・・その方が興味深いからに他ならない。

城に住まうものたちも殆どは私が創った者たちだ。
無人の城を創っても、楽しくはないからね。

彼らには、最大限の行動の自由を許している。
無論、わきまえなければならないことは彼らにはあるし、それを忘れた者は思い出させるように、『教育』する必要はある。

だが、基本的に彼らは自由だ。


彼らは許された範囲内で、思い思いの行動を取る。

ある者は、より高い数字を持とうと、ライバルを敵視し、ある者はこの私をいつか超えようと、誰にも分からぬように研究に勤しんでもいる。

・・最も・・それさえも私は知っているのだがね・・。

ただ、基本的に彼らの思考は、私の側近であることを許される、十刃になることを目的としているのだろう。
そして、十刃であるものもまた上の数字を狙い、私に近付こうと考えているはずだ。

それが純粋な忠誠心であるかどうかは、私は気にはしない。
・・彼は・・ただ使って捨てられる駒であればそれでいい。

私は優秀な駒であれば、それ相応の扱いをしているに過ぎない。


彼らは、自分が自分の信条に基づいて自由に行動していると思っているだろうね・・。


だが・・残念ながら、全ては私の箱庭の中の出来事だ・・。
つまりは・・・想定していた範囲内に過ぎない。

一定の質は保っているつもりだが、意外性がない。


・・それもつまらない事ではある。



その点、黒崎一護という、少年は実に興味深い存在だ。
彼の持つ真の能力は私にもまだ分からないことが多い。
今現在の、実力など取るに足らないものだが、真の能力に目覚めることが出来れば、私にとっても戦いを楽しむことが出来る存在になる可能性は十分ある。


今も格下とはいえ、ドルドーニを倒している。
あの少年は未だ若い。
それゆえ未熟だ。

戦いをより多くつむことが、その経験のなさを補っていくことだろう。


さあ・・もっと戦いたまえ。

そして強くなるがいい。

戦って、勝利し・・その未熟な技を心を鍛えるがいい・・。

是非とも、私の前まで勝ち上がって来て貰いたいものだね・・・。
そして、私が今想定しているよりも強くなっていることを、期待したいものだ。


より高みを求めて私は、存在する。
高みを極めれば極めるほど、孤独になるものだ。

だからこそ、己と並び立てる者を待ち望む。
私とて、充実した戦いを求めている一人だからね・・。



・・・さあ、黒崎一護・・。
私はここだ。

君と此処で会えることを・・・


私は心から楽しみにしている。


そう・・・この箱庭の頂点で。

箱庭の上から眺めながらね・・。



君は私の、箱庭に自ら入ってきた興味深い存在だ。


そして・・この箱庭の中で私を楽しませてくれないか・・・。



・・・愉しみに待っているよ・・・・。




・・この玉座でね・・。










なんちゃって。

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