アニメ160話のいじり (志波海燕)

「海燕、時季外れなんだが、今度新しくうちの隊に配属になった者がいるんだ。」

浮竹隊長から新入隊員の話があったのは、確か秋口だったと思う。
普通、隊の配属なんてえのは春に決まってるもんだ。
「ええ?この時期にですか?ま〜た妙な時期に配属になったもんだな。一体誰なんスか?」
「朽木ルキアと言う者だ。」
「朽木〜ィ?もしかして白哉んところの例の養女ってヤツですか?」
「そうだ。白哉からうちに配属して欲しいと要望があってな。」
「そりゃ構いやしねえけど・・またなんで白哉がウチに?てっきり自分の隊に入れんのかと・・・イ〜ヤ、あの野郎のことだ。
どーせ、おんなじ隊だと甘えが出るとかなんとか言ったんでしょう?」

「凄いな海燕、その通りだ。」
「まったく硬え野郎だ。コチンコチンだぜ。相変わらず。」
「まあ、そう言うな。白哉からもよろしく頼むとわざわざあいつが挨拶してきた。あいつにしては上出来だろう。

これが、朽木ルキアの学院時代の成績表だそうだ。」

渡された成績表ってのを見てみると、途中で卒業の扱いになってやがった。飛び級で卒業ってのは俺自身がやったから覚えがあるが、朽木ルキアの成績を見る限りじゃ、正直飛び級で卒業出来るレベルじゃ無え。

「あの野郎・・・無理やり卒業させやがったな?」

四大貴族の朽木家だ。こんなことはそりゃもう朝飯前で出来るだろうが、こんなやり方はあの野郎らしく無え。それなりに筋は通す奴なんだが・・。

「白哉にもそれなりの事情があったんだろう。卒業後、朽木家の方で家庭教師たちからある程度の教育は受けてくるとは思うが、足らない所はあると思う。」
「そりゃそうでしょう。詰め込まれても、使い方を知らなかったら意味は無え。こんな短期間なら尚更だ。」
「それで折り入って頼みがあるんだが・・・。」
「ハイハイ。このルキアを俺に任せるってんでしょ?わかってますよ。浮竹隊長。」

すると、隊長は苦笑いしやがった。
「お前の察しの良さには時々頭が下がるな。」
「冗談言わないで下さいよ。下げるのは精々熱あたりにしといて下さい。昨日も熱出したんでしょうが。」
「わかったよ、海燕。」

・・・そんでウチにルキアがきた。

朽木家の養子ってんで情けねえにも程があるが、ウチの隊員はうわついてやがった。
なんせあの白哉がらしくもねえ強権使って養女にした子だ。
興味があるのは解るけどよ、なにペコペコしてやがる。
朽木だろうがなんだろうが、新人は新人だ。ここで一番下なのは変わんねえんだよ。
要するにおめえらの下だ!下!!

「オラオラ!何こんなところで油売ってんだ、オメーら!!
見せモンじゃねーぞ!!持ち場に戻れコラ!!」

コッソリのぞき見してやがる奴らを蹴散らして、襖を開けるなり挨拶だ。
「副隊長の海燕だ!よろしくな!」

見りゃでっけえ目をした女の子だ。こっちの挨拶にビビったのか、「・・・はあ・・・どうも・・。」ときやがった。
「『はあ・・どうも・・?』何ンだその挨拶は?!
副隊長の俺が名乗ってんだぞ!オメーも名乗って『よろしくお願いします!』だろうが!
名は何だコラ!」
「・・・朽木ルキア・・・です・・・。」
「ホウ。・・・で?」
「よ・・よろしくお願いします!!」

何だ、素直じゃねえか。真っ直ぐな良い眼だ。これなら・・・
「よッし!オッケーだ、ルキア!
オメーを十三番隊に歓迎する!」

今日からオメーは俺たちの仲間だぜ?ルキア。

ルキアは血は繋がって無え筈だが兄貴と同じで頭にドが付くほどマジメなヤツだった。
自分の扱いが普通じゃ無えってことも、本当なら入隊出来るレベルじゃ無えってことも分かってやがる。
イヤ・・解ってるだけにあいつにとってはそれがプレッシャーになってやがるみてえだった。
朽木家に養子になったことで、特別待遇で死神になったことを逆に引け目に思ってるみてえな感じだったな。

まあ・・他の隊員もいけねえのかも知れねえが、気が付きゃいつもポツンと一人で居やがる。
自分から仲間に入ろうとする訳でも無えし・・イヤ、入りたくても入れねえって感じだ。
いっつも下ばっか向いてやがってよ。止めろよ、そんな辛気臭せえ顔。

だから、息抜き代わりに連れ出してやったんだ。流魂街によ。
勿論修行のためだぜ?
するとどうだ。水を得た魚みてえに元気になりやがった。犬が散歩に連れてってもらったみてえに走り回りやがって。

・・・良い顔するじゃねえか。それ出せよ、隊でもよ。

剣の腕ってのは上達するのは人それぞれだ。俺が稽古付けたからっていきなり強くなる訳じゃ無え。体の動きってのは積み重ねて体に染み込ませるもんだからな。
ルキアを最初に見てやって思ったのは、剣に集中出来てねえって事だった。
迷いがありやがる。だからつまらねえモンにふと気を取られて俺に一本取られる。

それについては、その後飯を食いながらルキアから聞いた。
何も言いたがらねえあいつにしちゃ、上出来だ。

『自分は護廷十三隊に居ていいのか』
『自分の心は何処にあるのか。』
『自分は何の為に此処に居るのか』

あんまり当たり前のことで悩んでっから思わずこっちも飯粒飛ばしながら答えちまったぜ。
「そんなもんお前、決まってんじゃねえか!
”戦って””守るため”だろ!」
すると、何を守るのかと聞いてきやがった。
「何をってオマエ、あっちやこっちの色んなモンをだよ!」

けど、あいつはそんなんじゃ満足出来ねえときやがった。
もっとちゃんとした理由が要るってか?
まったく・・・妙な所で兄貴と似てやがるぜ。全く。

・・・心だよ、ルキア。
心を守るんだ。けど、心ってのは在り体に胸の中になんかにゃ無えんだぜ?

・・・人と人との間にあるんだ。

お前の事だ。自分の事はあんまり大事にゃしねーだろ?
けど、心はお前と誰かの間にある。お前の外に在るんだ。

・・・お前の中にあるモンは大事に出来なくても、外にあるもんは大事にするヤツだ。
そうだろ?ルキア。オメーはよ。


悩むことなんか無えよ、ルキア。
十三番隊は好きか?お前が心から此処に居たいと願うなら、お前の心は此処にある。

それで十分だ。
お前の心が此処にあるんなら、それが”お前が此処を居るべき理由”なんだよ。
そんで、俺達十三番隊ぜんぶの隊士はオメーの味方だ。
少なくとも俺は死んでもオメーの味方なんだぜ?

心を守れ、ルキア。自分の心を。そして他の誰かの心を。

だが、俺達は死神だ。いつ何時死ぬかも知れねえ。
俺たちの肉体は霊子で出来てるだろう?死んだらいずれ俺たちは尸魂界に還っていく。
けど、死んだ奴の全てが残らねえ訳じゃねえんだ。

心は残るんだよ。仲間の中にな。イヤ違うな、預けて行くんだ。
俺達は心を守るために戦ってる。だから、その心は死んでも誰かに預けて大事にしなきゃいけねえ。

ルキア、絶対一人で死ぬなよ?絶対にだ。仲間に託して、心を残せ。
そんでお前も仲間から残された心を受け継いで生きていくんだ。

ホラ、此処にも心が在る。
感じねえか?俺は感じるぜ?見えはしねえけどよ。
俺とお前の間に確かに心があるってのをよ。

・・・こういうのを守ってくんだ。俺たちはよ。


だから、ルキア。


心を守れ。





なんちゃって。


 

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