アニメ162話のいじり (浮竹十四郎)

「う〜〜ん、・・迷うな・・。」

十三番隊隊長、浮竹十四郎は迷っていた。
・・・盆栽を前にして迷っていた。

盆栽には二つの戦いがあると浮竹は考えている。

一つは、浮竹の信念に従い、盆栽の木の幹や枝を<美>という名目の為に曲げ、もしくは伐るという戦い。
二つ目は、木の伸びたいという声を聞き、敢えて不作為とする戦い。


伐るか・・伐らざるべきか。
それとも曲げるか、曲げざるか。

温厚篤実たる性格ながらも、戦いにおける信念は確固たるものだ。
しかし、残念ながら浮竹の生き様と盆栽の育ち様は著しく比例してはいなかった。

ハッキリ言えば、彼の盆栽は評価されていない。
それも甚だしく。←(笑)

それは浮竹が持ちうる才能が剣の方にばかり行ってしまったらしく、美の才能にはサッパリ恵まれていないことに起因する。

過去にこんなことがあった。
朽木白哉が、所用で浮竹の庵に訪ねて来た時のことだ。
浮竹は一応にまた盆栽の前で悩んでいた。
浮竹は白哉の存在に気づいて、いつもの屈託のない挨拶を交わした後、白哉に自分が育てている盆栽の出来を訪ねた。
白哉はちらりとその盆栽に目を走らせた後、いつもの抑揚のない無表情でこういった。

「評価するに値せぬものに、物を言うつもりはない。」
酷い言われようだが、浮竹は怒る様子もなく、やっぱりそうかといったように受け止めた。
ちなみに、この盆栽その状態にするのに50年かかっている。←(笑)

普通ならそれだけ時間をかけた盆栽に対し、酷評されようなら怒るところだが、それを素直に受け入れるところが、浮竹の浮竹たらんところである。

「この辺を伐るかどうしようかと、悩んでいるのだが・・・。
どう思う?白哉。」

いきなり素人がそんな事を聞かれても普通困るだけだろう。
「・・・私が答えることではない。」
そこへ浮竹、全く意図はなく白哉に挑戦状を叩きつけた。

「・・・そうだよな。流石のお前でも盆栽の事までは解らんよな。」
途端にピクリと白哉の眉が跳ねあがった。
それはそうだろう。四大貴族の誇りにかけて、解らぬ事があるなど許されぬ事だから。

「兄のその盆栽は、その枝をどうにかして収まるようなものではない。」
「え?というと他のも伐らないといけないということか?」
「盆栽とは幹、枝、葉の調和だ。
この盆栽にはそれが感じられぬ。」
「ああ、暫く木の好きなようにして見ようとしてたからかな。
じゃあ、具体的に何処をどうすればいいのか言ってくれないか。」

「・・私自らが手を加えよう。よいな?」
「え?ああ!そりゃ、かまわんが・・じゃ、この鋏を・・。」
「要らぬ。・・散れ・・『千本桜』」

・・・そして・・・・
「おお!!凄いぞ!白哉!!
なんだか、別の盆栽を見てるようだ!
そうか!ここは思い切って伐った方が良かったんだな!」
讃辞を当然のように無表情に受ける白哉。無事大貴族の誇りを護り切ったようだ。

・・そしてそれは、浮竹の持つ盆栽の過去最高傑作として生まれ変わった。
浮竹の、と言えるかどうかは議論があるところだが、少なくとも所有者は浮竹だ。

暫くは庵を訪ねる者に、その盆栽を見せ、今までになかった高い評価を受けて満足を得る浮竹だったが、しばらく経つとそれも無くなった。

盆栽は生きている樹木である。
当然、いかに美しく伐ろうとも、また枝葉は伸びてくるのだ。

そして、また二つの戦いに悩む浮竹の姿があった。
白哉がやったように、思いだしてやってみるのだが、どうも上手くはいかない。


今日も盆栽を前に悩む。
考えが決まらぬ時はお茶にする。

これもいつものことだった。
しかし、この日大きく違う事が起こる。

まさかこの後自分が盆栽よろしく、衣服を伐り込まれることになるとは、
思ってもいなかっただろう。

・・後に・・・

伐りこまれたまま放置された自分を顧みて、「あの時の俺は<舎利>みたいだったなあ。」と盆栽用語で表現する所は、やはり下手なれど横好きの典型なのかもしれない。

注)舎利:盆栽用語で幹の一部分が枯れることによって、樹皮が剥がれ白色の木質部分が剥き出しになることがある。こうなった部分を舎利と言う。



なんちゃって。



 

 

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