護廷十三隊とチョコレート

ちょいと前の事。
十三隊ある各隊に、ちゃんと背中に数字の入った羽織をつけたものが、ちゃんと13名いた頃だ。


現世で何やら被れてきた者が始めたバレンタインデーなる催しは、女性死神に瞬く間に浸透し、2月14日は女性死神にとっても、そして貰う側の男性に死神にとっても何やら落ち着かぬ日となっていた。

この催し、義理チョコなるものもしっかりと浸透し、男性死神にとっては本命であれ何であれ、貰う確率を上げる結果となっていた。
無論、隊長などは各隊のヒエラルキーの頂点であるのだから、貰う確率は大きい。
権力者への貢物は硬く禁止されているが、「まあチョコくらいならよかろう」、と頭の固い山本元柳斎重國でさえも黙認しているのは、やっぱり女性から山じいも貰いたい気持ちがあるのは確かだと思われる。←世の中そんなものだ

かといって、各隊長が同数のチョコを獲得するわけではない。
それはそれ、複雑な女心が例え義理チョコなれども動くのである。

その心理には以下のようなものが考えられよう。

<一>義理とはいえ、それなりにカッコイイ隊長であること。
<二>鷹揚に受け取る隊長であること。
<三>渡したことが、同僚にバレても恥ずかしくない隊長であること。若しくは堂々と言える隊長であること。

そして、一番これが重要
<四>ちゃんとホワイトデーにおかえしをする隊長であること。


義理なれども、きっちり計算されつくしているのが、義理チョコなるものだ。
侮ってはならぬ。

<一>義理とはいえ、それなりにカッコイイ隊長であること。

これは、あげる側としてのテンションも関係することだから、普通にカッコイイ隊長にチョコが集まるのは当然の摂理だ。だから、特に今回取り上げることもあるまい。
通好みの更木や涅は、あくまで<通>の話だ。総隊長の山本は同隊からの献チョコ率は100パーセントを誇っている。
狛村は・これも通好みと言えよう。


<二>鷹揚に受け取る隊長であること。

これも当然のことだ。人気が集まりそうな六番隊の恒例は・・・
「隊長、コレ、女性死神たちから隊長に渡してくれって頼まれたんスけど・・。」
「・・・送り返せ、一つ残らずだ。」
「って、隊に無記名で送りつけてきたヤツもあるんスけど。」
「なおさら不要。全て捨てろ。」
「またですか〜?・・もったいねえ・・。」
「何か言ったか?恋次。」
「いいえ、なんも。」

それでも毎年送りつけてくる猛者はいるらしい・・。
ちなみに、九番隊の東仙は、気持ちに答えられないのに、受け取れないとして拒否するらしい。どこまでも固い男だ。

<三>渡したことが、同僚にバレても恥ずかしくない隊長であること。若しくは堂々と言える隊長であること。

ある日の女性死神の会話。
「ねえ、チョコ誰にあげるの?」
「うう〜〜ん、うちの隊長と〜〜、あと京楽隊長にもあげようかな〜〜って思ってるんだけど〜〜。」
「ええ〜〜?ただのエロオヤジじゃない〜〜!確かに上流貴族なのはいいけど、ちょっとセクハラ過ぎてあたしヤダ〜〜!まだ、浮竹隊長の方が解る〜〜!」
「そ・・そかな・・。」
「絶対ヤダ〜〜!だって、勘違いして絶対声かけてくるよ?間違いないって!」
ここまで言われると流石に、ちょっとあげにくい。


<四>ちゃんとホワイトデーにおかえしをする隊長であること。
女性死神にとってこれは重要だ。
義理なんだから、おかえしする必要はないなどと、言っている輩は自身に余程の魅力がない限り、淘汰される。
高額なものを返す必要はないが、気持ちを形で示されたのだから出来ればこちらも形で返すのが望ましい。


このすべての条件に当てはまる者・・・。

それが五番隊隊長、藍染惣右介であった。
穏やかで人格者、無論女性死神に恥をかかすようなことはしない。
隊の中でも人気は高いため、他の隊からでもあげやすい。そして、同僚にも「ああ!解る!」と言ってもらえる。
浮竹は、体調によって渡せなかったり、おかえしを貰いそびれたりする危険を孕むが、藍染は丈夫なのでそれも無い。

そして、ここが重要。

きっちりお返しをする。
義理として貰った者に対し、全てにきちんとお返しをする。
これが藍染を義理チョコ習得ランキングの天に立たせる要因になっている。



諸君の中にはチョコの集まりそうな者2名を抜かしていると思われるだろう。
無論忘れてなど無い。

日番谷冬獅郎、市丸ギン、どちらもチョコの習得総数は藍染を上回る。
彼らに届くのは、義理チョコなどではない。
本命チョコと言われるものだ。ともに若くて将来有望。日番谷はちと若すぎるやもしれぬが、それだけ伸び代があると思えば問題にはならない。


全くお返しをしないにもかかわらず、毎年膨大なチョコが集まるのは市丸ギン。
まさしく本人のあの得体の知れないミステリアスな魅力のおかげだ。

ちなみに、十番隊では、日番谷宛てに持ってきた若しくは、送られてきたチョコの管理はなんと全て、副官の乱菊が執り行っている。
あのずぼらな性格が、きっちり名簿を作成し、管理しているらしい。

理由は二つあるそうな。
一つは、きっちり上官に、お返しをさせるため。
二つ目は、手数料として、そのチョコを乱菊が食うためである。ちなみに、日番谷には拒否権は無いらしい。


今では懐かしく思える2月14日のことである。






なんちゃって。


 

 

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