秘密の話(藍染・東仙・ギン)

虚夜宮での一室で、城を統べるTOP3が優雅にお茶を飲んでいる。
一人は城の主である、藍染惣右介。そしてあとの二人は東仙要と市丸ギンだ。

白亜の茶器からは紅茶の馥郁たる香りが流れ出る。
見た目は優雅なのだが、彼等の話す内容は現状の確認や今後の方針・・・無論その中には不穏な内容が含まれている。
しかし、時には雑談に似た話も出るのは自明のことだろう。

話を振ったのはギンだった。
「そういや、ずっと前から思てたことがあったんですけど・・。」

ギンのこういう話の切り出しの場合、大体大した内容でない場合が多い。
ギンは本当に重要な事を聞きだしたい場合は、このようにもったいぶった前振りはしないからだ。
「何かな?ギン」藍染が問う。
「結局、藍染サマには関西弁うつらんかったなァ思うて。」
カップに口をつけながらギンが言う。

それには藍染が答える前に、東仙が口を出した。
「うつるわけがないだろう、市丸。藍染様が関西弁などお話になる筈がない。」
「あ、ヒドイなァ、東仙サン。今遠巻きに関西弁馬鹿にしはったやろ。ボク傷ついたわ。」
「この程度で傷が付くような面の皮では無いと思うが?君の面の皮の厚さならね。」

「こないなツルツルお肌のボク捕まえて、それはないわ、東仙サン。

まァ、それはともかくとしても、藍染サマが副隊長の頃や、上に平子サンがおって、バリバリの関西弁やったし。あれだけコテコテの関西弁話すんと一緒におったら、うつってもおかしないんとちゃいます?」
「常人ならばともかく、藍染様がそんな影響をうけるはずがないだろう。」
「そやろか。」「当然だ。」

そんなやりとりを、本人たる藍染は面白そうに眺めている。ひじ掛けに肘をついた何時もの姿勢だ。
そして、その肉厚の唇が開かれた。

「・・ホンマは・・。」

『ホンマは?』ギンと東仙は一瞬自分の耳を疑った。声のした方は藍染だ。普段気の合わない二人が、珍しく同じ呼吸で頭を藍染の方へ向ける。

「・・ホンマは喋れるんやで?・ギン。」
「あ・・藍染様?!」「・・・今喋ったん、藍染サマ?」

「・・私しかおらへんやろ?解りきったこと訊くやなんて・・らしないなァ、ギン。」
「・・こらまた・・・ビックリやな・・・。
けど、なんで今まで話さへんかったんですか?」

「どうも、私が関西弁を使うと人格が違って見えるようだったからね。疑念を持たれるようなことは避けていたんだよ。あの頃は、丁度研究の重要段階に入ったばかりだったというのもあるかな。言っておくが、もともと話せるんだよ、関西弁はね。」

「人格違ごて見える、て・・。」
「・・気ィ済んだか?ギン、私の関西弁聞けて。

・・どうやった?・・・感想聞いてええかな?」

「こらあかんわ。ワルの上にドエロがついてもうてるし。
悪いお人なんバレバレや。話さんで正解や。」

「・・私も市丸と同意見です。」

気の合わない二人が、これまた珍しくも同じ感想を述べる。
今日は珍しい日となったものだ。

「なら、この事は私たちだけの秘密の話と言う事にしておこうか。」


そして今度は藍染が紅茶に口をつけた。

3人だけが知る秘密の話が一つ増えた瞬間である。





なんちゃって。
 

 

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