虚の王(ジオ・ヴェガ)

 

俺が仕えるのはただ一人だ。

”大帝”バラガン・ルイゼンバーン陛下。言っとくが、藍染なんかじゃねえぞ。
陛下が一応従ってるフリをしてるから、俺もそうしてるだけだ。
陛下もどうやらそうらしいが、俺は正直藍染は気に入らない。

あいつは俺ら破面のことを”同胞”なんて呼んでるが・・実際のところはそんなこと思ってねえのは誰の目にも明らかだ。
あいつは元死神。そんで俺らは元虚。破面になって死神の能力を手に入れたからって、あいつと同胞なんて誰が思うか、バカらしい。

あいつは、支配者の癖に言ってることはさも、あいつと俺らとが同列みたいなことを言う。
けど、俺たちがあいつに反対するなんてことは、絶対に許されない。

何ぶってんのかは知らないが、ハッキリ、自分が支配者でお前たちは支配される者だって言えっていいたい。

俺たちは元虚だ。
獣の世界で進化してきた。
強いものが弱いものを掌握する。
支配された者は、支配したものの命令が絶対だ。
要らないといわれれば死ぬ。

残酷と言われようがなんだろうが、自然の摂理にもっとも忠実だとは思わないか?
俺たちは獣だ。
だから、いちいちぶったカンジな藍染は気に入らないのかもな。

その分、バラガン陛下は俺たちにとって、もっともわかり易く、もっとも納得できる支配者だ。
強大な力。年食った奴にしか出せねえ貫禄。高圧的で絶対的存在。陛下は俺たち破面の王そのもののお方だ。

陛下は俺たちが考える虚の王がそのまま実体化したような存在だ。
想像通りの専制君主。

だからこそ、俺たちは安心する。
想像通りの支配を受けるからこそ、安心できる。

俺たちは藍染の前でも平気で、バラガン陛下のことを「陛下」と呼ぶ。
けど、藍染は何もいわない。「どうぞ、ご自由に」ってな感じか?

てめえ、俺たちを支配してんだろうが。
だったら、俺たちが藍染以外を陛下って呼んで、どうして怒らないんだ?
余裕のカオしやがって。

気にいらねえ。で、やっぱそういうところが陛下も気に入らないじゃねえかな。
藍染と陛下じゃ、親父と息子みたいな年だろ?息子が親父を従わせんなら、ガンガン締め付けて当然じゃねえのか?「誰が支配者だと思っている。」ってなんで言わねえんだ。

・・・藍染を見てると、こっちがなんか落ちつかねえ。
やっぱ俺の仕えるべきは、陛下だけだ。
陛下は残酷で厳しい人だが、少なくとも陛下の命令に応えてるうちは安心できる。

虚の王はやっぱ虚のやつじゃねえとな。
元死神じゃ、俺たちの王とは認められねぇよ。

・・・気味悪いだろ?

あんま、何考えてっか解からねぇと。


陛下の考えてる事はわかるし、ある程度は読める。

だから、こっちも安心できる。


解からねえのが、一番怖いんだよ、こっちとしてはな。





なんちゃって。

 

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