ホストクラブ「虚夜宮」開業!

・・未だ空気に熱気は孕むものの時はすでに秋。
夏の疲れはいまだ癒えず、心には少しばかりの寂しさが生まれる。
されど、少々のことではその寂しさを癒すことは出来ぬ。
その事を知る淑女の皆様方・・・。


・・・甘美な刺激をお楽しみください。

しかし、どうかご用心を。

・・・その刺激には危険に満ちておりますゆえ・・。


ホストクラブ『虚夜宮』、今開業でございます。

繁華街に突如そびえ立つ白亜の城。
一瞬ブティックホテルと勘違いしそうなのだが、城を下から照らす抑えられた照明がどこか品格を感じさせる。
看板らしきものも無い。
入口を探せば建物の中央に大きく透かしのついた扉がある。
扉の横には「Las Noches」の金文字の表札。
何かのお店だろうかと思い、中をチラリとのぞいてみる。
女性の背たけでも、中を透かして見られるよう、設計されている事は恐らく誰も知るまい。

中には、もう一か所扉があるのが見える筈だ。
そして、その扉の傍で控える男の姿も。
長身の男だ。ストックにさえ見える真白の破面服。
何よりハッとさせられるのは黄金の流れるような長髪。
男は視線を下にしている。
だが、客の視線を感じ、それに合わせるように視線を上にあげた瞬間・・・。

・・・女に罠がかけられる。

王子様の様な外見に似合わず、ニヤリと片頬を緩めたその男、イールフォールト。
片手を淑女の方へすいと上げる。・・・手まねき。

『楽しみたけりゃ・・その扉は自分で開けてきな。自分の意思でな。
後は、俺たちが天国を見させてやるよ。』

そして、女がためらいつつもドアを開けて中に入った途端、恭しく一礼をする。
「・・ようこそ、我等がラス・ノーチェスへ。」

そして、第二の扉はイールフォルトによって開けられる。

扉の内側は広間になっている。壁面には長いソファー。
そこに座るは、虚夜宮が誇るホストたちだ。

源氏名「アーロニーロ」
ソファの奥、最も光が差さない暗がりに陣取っている。
暗がりながらも、黒い髪と蒼い眼・・。彼と瓜二つの者を見たことがあると言う者もいる。
明るく人好きのする性格かと思えば、いきなり残忍とも言える面も見せる。
どちらが本当のアーロニーロなのか。彼は極端な暗がりでなければ接客しない。
「・・世の中ってえのは見えない方がいいってこともあんだろ?いいじゃねえか。見えねえからこそいい思いをするって事も・・あるかもしれねえぜ、なあ?」
彼に光を当ててはならぬ。光ささぬからこそ、彼は真価を発揮するのだから。

源氏名「ザエルアポロ」
人を小馬鹿にしたような態度。自らを研究者であると言い切る彼は、自らを特異である事に誇りを持っている。
客のことを推測するのが好きなようだ。服装・言葉・身体的見地から、初対面の客の個人的なデータを言い当てることを何よりも楽しみにしている。
推測が外れた時、プライドをくすぐられるのだろう。
「いいね。どうやら僕は君に興味を持てそうだよ。」
彼は観察するのが大好きだ。
帰り際、なにか「おみやげ」を貰わないよう、注意しなければならない。
ちなみに、ドアボーイのイールフォルトは彼の兄だ。
髪の色は違えども、顔つきは似ているため、兄弟かと言われる事もたまにあるようだが、本人はそう言われる事を毛嫌いしているらしい。
「ハッ!あんな出来そこないのカスと同じにしないでくれないか。
確かに奴は僕の兄だけどね。
ドアボーイしか出来ないような唯のカスさ。
・・そんな話より、もっとソソられる話にしないかい?」
癖が強いため、極端に好き嫌いは別れる。研究しつくされて、興味を失われないように謎を持ち続けよう。


源氏名「ノイトラ」と「テスラ」
二人で行動する珍しいタイプだ。
客にサービスどころかヘタをすれば怒らせるような言動をとりかねないノイトラと、そのフォローにひたすら徹するテスラの対比が、異様とも取れる。
自らのしでかした無礼をテスラに謝らせ、「頭がまだ高けぇんだよ。」とテスラの頭を足で踏みつけるなど、珍しくもない。明らかにノイトラに非があるのだが、テスラはひたすら「申し訳ありません。」の一文字。←もうここまで来たらある意味趣味の世界?
SM系ということで、これまた好き嫌いが分かれるところだが、ディープな趣向を好む客にはうけているようだ。

源氏名「ウルキオラ」
栄えある虚夜宮ツンデレNO.1の称号をうけるのがこの人物。
真白な顔と瞬きすらほとんどしない碧の眼を持つ美系。
全く表情を出さないその様相はビスクドール(西洋人形)の男性版のような印象だ。
非常に無口だが、動作においては非常に優秀な接客スキルを身に付けている優等生だ。
しかし、一つ欠点がある。
「・・何を飲む、女。」←(爆笑)
客に向かって「女」かい!
しかし接客マナーは完璧。その落差を楽しめる余裕があるならば、面白いやもしれぬ。

源氏名「グリムジョー」
クラブ虚夜宮でもっとも美しい肉体を持つのがこの男だ。
しかしながら、まさしく容貌も言動もヤンキーそのもの。
客を客とは思ってもいないし、何度フロアマネージャーの東仙から注意されようが、接客スキルも身につけようとはしない。
テーブルに足はのっけるわ、好きな酒を勝手にたのむわで、やんちゃこの上ないのだが、何故か人気は高い。
客が持ったグラスに酒を一応入れようとするのだが、必ずこぼす始末だ。←最低(笑)
しかし、ここからが本領発揮。
客の手からグラスをひょいと取り上げて一応一言「悪りィな。こぼしちまった。」。
客の肘へと伝う酒を何とこの男、問答無用で舌でざっと舐めとってしまうのだ。
で、一言。「何だそのツラは。もったいねえだろうが。酒がよ。」
派手なパフォーマンスに客はついやられるという寸法だ。
天然なのか、計算されたものなのかはいまだに不明。


雇われ店長、源氏名「ギン」
クラブ虚夜宮の店長はオーナーではなく雇われ店長だ。
しかしこの店長、どのホストよりも売上を上げるNo.1ホストでもある。
店長でありながら、どのホストよりも何より気さくだ。
ちょっとはんなりした京都弁も、客がリラックスできる一因となっている。
いつも笑顔を絶やさない。
他のホストが何やらやらかして、客を怒らせてしまった時も、ギンが出れば何故かご機嫌で帰って行く。
だが、この男。決して侮ってはならない。
客の資産状況、支払い能力などを冷徹なまでに他愛もない会話から読み取り、殺さず生かさずのラインをその脳裏に叩きだしているのだ。

オーナー「藍染」
虚夜宮のオーナーである藍染は、クラブの基本的な運営はギンとフロアマネージャーの東仙にゆだねている。
しかし、オーナーとしてたまに虚夜宮にも顔を出す。
その際には、顔を隠すことなくオーナーとして客に一通り挨拶し、サービスとしてシャンパンを振る舞って帰って行くので、藍染が顔を見せると客はラッキーと喜ぶらしい。
「・・ようこそ、虚夜宮へ。
ここの全てのスタッフが、貴女の心の渇きを癒すために存在します。
もし、至らないところがあったら、遠慮なく私かギン、要に仰ってください。」

「どうされるんですか?」客の問いには藍染の口元には酷薄たる笑みが浮かぶという。

「・・勿論、仕付け直させていただきます。

・・お客様のご要望に応えられてこその存在ですから。・・・彼等はね。」


顔を見せる時間は短い。
どうやら様子をチラリと見るだけで状況は把握できるようだ。
藍染の姿が消えると、何故かそれまで緊張していたホスト達がほっと息をつく。

「売り上げはどうだ、ギン。」
「ご覧の通りですわ。趣味とは言え、見廻りすんもお疲れ様ですなァ。オーナーも。」
「緊張感の無いサービスは直ぐに地に落ちるものだ。
店を閉じるのは構わないが、行きとどかないサービスを私の店で出す気はないからね。
ある程度私の眼を意識することは必要なことだよ。」
「それってボクのことも含まれてますのん?」
「どうかな。解釈はお前に任せよう。」


・・ホストクラブ「虚夜宮」。
スタッフたちは淑女のハートを穴空きにせんと虎視眈々と待ちうける。


財布を穴空きにされぬよう、ご注意あれ。(笑)



なんちゃって。

 

 

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