声よ、届け(黒崎一護)
俺は昔からユーレイと話が出来る奴だった。
あんまりハッキリ見えるもんだから、生きてる奴とユーレイの違いがチビの頃にはマジで解らなかった。
フツーに他の奴らも見えてるのかと思ったんだが、そんなのは俺だけなわけで。
見えねえものが見えるという俺を、気味悪いという奴は多かった。だから、小学校に入る頃には、ユーレイかな、と思ったのは言わないことにしてた。
けど、やっぱりハッキリ見えるモンは見えるわけで。
特に俺と同じ子供のユーレイとかだと、やっぱりまだ見分けはついて無かったんだと思う。
・・・そして、それが理由でお袋は死んだ。
俺は暫くお袋が死んだ場所をうろついてた。
お袋が死んだというのを認めたくないってえのと・・それと死んでもお袋とは話が出来るんじゃねえかとどっかで思ってたんだと思う。・・まァ・ユーレイになったお袋だけどな。
けど、お袋はユーレイにさえならずに、俺の前から消えちまった。
俺はお袋に何も言う機会すらなく、今に至ってる。
俺は何も伝えられて無え訳だ。
命を救ってくれた礼も。
俺が理由でお袋が死ぬことになっちまったって詫びも。
今迄育ててくれた感謝も。
それから後のことは任せてくれってことも。
何も・・・何も俺は伝えられてねえ。
お袋は俺に、お袋が考えている事をたくさん言葉に出して伝えてくれる人だった。
俺はどんだけ、お袋の言葉に励まされ、反省させられ、俺がどうあるべきなのか教えられてきたか解らねえ。
『死者の事は悪く言わない。』っていうらしいけど、そんな必要もねえくらいに俺のお袋はいい人だった。
護りたいと思ってた。今よりずっとガキだったくせに、一人前に護れると本気で思ってた。
そして、逆に護られて、逆に俺は今生きている。
親父は、「母さんに勝とうなんざ100年早えんだよ。俺だって未だに真咲には勝てねえんだからな。」と言っていた。
・・そうかもな。
伝えてえことがたくさんある。
伝えきれなかったこと・・それからこれからも伝えたいこともだ。
死神代行になって、お袋の霊体がどうなったのか、イヤでも知らされることになった。
お袋は・・二度死んだことになる。
俺のせいで。
戦ううちに、護るという事がどういうことなのか、少しずつ解ってきた。
多分、お袋は俺が自分を責めることを望んでねえ。
だけど、俺はその枷を下ろすことはねえだろう。
時間が経つごとに、押しつぶされそうだった悲しみは、違う悲しみへと少しずつ変わっていく。
だが、6年たってもお袋への想いは変わらねえ。
たまに、無性に話がしたくなる時があんだよ、今でも。
・・畜生・・話せなくてもいい。聞いてくれるだけでもしてくれねえかな。
俺は今、仲間と一緒に戦ってる。
お袋を護れなかった悔しさを、その分力に変えて一応これでも頑張ってんだぜ?
後悔しないように。もしもお袋に会えることがあったとき、胸を張れる俺でいられるように。
くそっ、聞いててくんねえかな。
せめて
「・・見ててくれ。どっかから。俺の事。」
こんだけでいいんだ。こんだけで。
こんだけでいいから・・・
・・・声よ、届け・・!
なんちゃって。