黒崎家の七夕

黒崎家では七夕の準備が進められていた。

「お兄ちゃん、この飾り、笹の上の方に飾ってくれる?」
「ああ。いいぜ?どこだ?ここか?」
「一兄、センスねえな。そんなところじゃ飾り同士被っちまうだろ?」
「うっせえよ。じゃ、どこだ?こっちか?」
「うん!そこでいいよ。ありがとう。じゃ、次はコレ!」
「へいへい・・ったく・・何でこの年になってまで七夕飾りしなきゃなんねえんだよ。」

率先しているのは双子の姉妹。
まだ小学生だ。こういった行事はちゃんとしたい年頃だろう。

そして、高校生かつ野郎の兄はというと、どうでもいいというか、別に全く興味無い所を可愛い妹にせがまれて、しようがなく手を貸している。
つまり、妹のお願い>高校生の貴重な自分の時間。
一護よ、お前もシスコンか。←
まあ、尸魂界の由緒正しきシスコン正一位の貴族には足元にも及ばん程度ではあるが。

願いを書かれた色とりどりの短冊。
といっても、一人ひとつと願い事の数は決めているらしい。
後ろが白紙な短冊が、それでも飾りの一部として笹に括りつけられていた。

「・・ていうか、ホント女ってこういうの好きだよな〜〜。」
ため息交じりに一護が言う。
「一兄、ロマンねえな。今日は織姫と彦星が年に一度の日なんだぜ?」
「ロマンティックよねえ。年に一度だけ好きな人に会えるなんて。なんか胸がキュンとしちゃう。」

どうやら、一護それには、反論したいらしい。口を開けた瞬間、残念ながら邪魔が入った。

「マイ・ハニーーーーズ!!
元気で七夕を準備してるかーーーーーぐおっ!!!」
邪魔をしたのは父、一心。
今日も元気にド派手なTシャツを愛用中。
しかし、今日はいつもと違う。幼稚園児が良く被りそうなお星さまの飾りのついたお面もどきを頭に着用していた。無論後ろはゴムの輪だ。

「てめえ、何だその頭の輪っかは!!いまどきの幼稚園児でもそんなんつけてる奴あんまり見ねえぞ!!」
「フフフ・・これだから一人部屋でコッソリ”マス”ばっかりかいてそうな青少年はイカンのだ。
今日は七夕!!七夕といえば、星に願いをする日だ!!だからこの父、今日はお星さまにならさせていただき・・・ブホ〜〜」
「ホントのお星さまとやらになりががれ〜〜!!!」

ピュー!!ズダーン!!
となりの部屋まで流れ星となり飛んで行った父一心。
次の瞬間には何事もないように戻ってくる所は、流石は一護の父といったところだろうか。

「やっぱりお父さんも、七夕のお話はロマンテックだと思う?」
そして、何事もなく七夕の話に戻してくる妹、遊子も相当なツワモノといえた。

「もちろんだとも!一夜の逢瀬の為に、一年を精進する!この心境はマス書き一護には解るまい!!」
「解らねえ・・ていうか、娘の前でマス書きとか言うな。
解らねえよ。なんで一年に一度とか勝手に決められて、大人しくそれに従わなきゃなんねえんだよ。
会いたきゃ、会いに行けばいいだろうが。天の川くらい泳いで渡っていけっつーの。」
「だって、天帝に決められたんでしょ?」
「その天帝が二人を引き合わせてんだろ?いったん認めておいてやっぱダメって勝手に取り上げるってのは納得出来ねえし、俺だったらぜってえ従わねえ。

やることはやる。そんで当然会いに行く。そんだけのことだ。
やることをやるために、会いにいけねえっていうならそれは仕方ねえだろうけど、天帝に言われたから会えねえ、て言うのは俺は絶対従わねえ。」

「・・一兄らしいね。そういうところ。」
やれやれという風に夏梨が肩をすくめた。
「でも、確かに天帝って人も意地悪だよね。一年でたった一回しか会えないなんて。
どうして、そんな意地悪するんだろ・・。」
ポツリと遊子が独り言をいう。

すると珍しく、一心が真面目な顔で発言した。
「・・天帝は・・娘を彦星ってやつに取られて寂しかったのさ。

可愛い娘が予想以上に他の野郎に入れ込みやがるもんで、虫の居所が悪くなったんだろ。
だから引き離した。
まあ、流石に完全に引き離すと反発くらいやがるから、年一回で妥協してやった。
娘に完全に嫌われんのは、誰でも嫌なもんだしな。で、年一回でも会えれば会わしてやった親心ってやつの形を一応つけられんだろ?」

「・・やけに、天帝の肩持つじゃねえかよ、オヤジ。」
「・・・俺がか?

フフフ!!やはり甘いな青少年よ!!
俺なら断固会わせんとも!!ていうか、最初から彦星などに会わせん!!
断固反対ーー!!!」

・・この時、黒崎家の子供たちは脳裏で一つの意見を共有する。

『・・夏梨や遊子に彼氏ができたら、コイツ片端からぶん殴りに行くタイプだ・・。』

ちゃんと結婚出来るのだろうか・・黒崎家の娘たちは。
そんな事を思ううちに、遊子が歓声をあげる。

「あ!雲が晴れてる!!天の川見えてるよ!!ちょっとだけど!!」

どうやら、今年はちゃんと彦星と織姫は会えたようだ。



しばし、夜空を一家で見上げる黒崎家であった。




なんちゃって

 

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