オマエの主義(平子真子)
ちゃうねん。
別段あの男が、ここがおかしい言う所はホンマ無いねん。
そやけど、陰でコソコソなんかやっとるんはオレでもわかっとる。
そやからちょっと調べたんやけど、なんも出てこうへん。
なんかやっとるんは確実やのに証拠を掴ませんのや。
このオレにやで?
<・・コイツ、野放しにしたらアカンで。>
カンや、カン。その勘言うんが、オレに言うわけや。
『こういうアブない奴はちゃんとヒモつけとかなアカン。』
そのヒモが藍染をオレの副官にすることやった。
副官はオレにいっつも、付いとかなアカンやろ?
オレに隠れてコソコソなんかするいうんも出来へんようになる筈や。
・・そう思てた。
藍染の奴は、オレが副官に指名したて言うたら、ちょっと驚いた顔した後、ニッコリ笑って「ありがとうございます。」言いおった。快諾や。
腹の中ではなんて思てたかは知らへんけどな。
オレが藍染を副官にしてまず最初にやったことは二つや。
一つは「惣右介」って名前で呼ぶことや。
二つ目は、「何かコソコソやってるみたいやけど、俺の眼はごまかされへんで?」とクギ指すことやった。
名前で呼ぶ言うんは、まァ俺たちの隠れた慣習みたいなもんなんやけど、「オマエは俺の仲間や」て言う事や。そやから、オレはなるべく名前で呼ぶようにしてるし、むこうにも呼ばせるようにしてる。そやから、ひよ里やリサは副隊長やけどオレのことは名前で呼ぶ。
規律が保てんて顔しかめる奴もおるけど、オレはそんなもんは別にどうでもええ思うねん。
惣右介にも名前で言え言うたんやけど、それは絶対やらへんかった。
何でも性に合わんのやそうや。まあ、エエわ。それくらい。
それと、二つ目に関しては「何の事言われてるんか解らへん」て顔してた。
芝居かソレ。上手いやんけ。なんやオレがオマエのこといじめてるみたいや。
けどそれでエエねん。これで惣右介は動きにくうなる筈や。
まァ、そんなこんなで惣右介を副官にしたわけやけど、惣右介の副官としての能力言うんは相当なもんや。
仕事の速さやら正確さやら、気の回し様から、果ては俺の軽口の捌き方まで完璧や。
他の隊長・・ていうか、拳西からは相当羨ましがられたもんやった。
惣右介はあないな特攻服は着ィへんと思うで?それより、白(ましろ)を甘やかしてるから、あないなるねん。
可愛げは無いけど、大人しうしとるな、妙な事はもうせえへんかもて思てたんやけど、それは間違いやったみたいや。
オレと喜助の話、わざわざ鏡花水月使てコソコソ覗いてるとはな。
喜助の事をなんや気にしとるのは解っとったけど、鏡花水月を使てまで覗くいうんは、フツーでない。
<こいつはまだ、裏でなんかやっとる。>
「いつまでそこで見てんねん。惣右介。」
すれ違いざまに、幻術片手で破ってやる。幻術いうんは、相手に幻術やて知られた段階で、効果は半減するもんや。
惣右介は流石に驚いてた。アホか。前に言うたやろ?
「お前の事やお見通しや」て。
「・・・流石です。いつからお気付きに?」
多分、これはホンマに知りたかった事やろ。まさか幻術が破られるとは思ってなかったやろからなァ。
「オマエが母ちゃんの子宮ン中おる時からや。行くで。」
アホか。そないな手のうち見せたるかい。
「はい。」そやけど、気まずいとかそういうんを見せへんのは、流石や言うとくわ。
それから9年。
惣右介は大人しいもんやった。
コソコソやっとる匂いすらさせへんかったし、鏡花水月使て覗きするようなことも無かったし。
『流石に、懲りたみたいやな。』
・・・オレはそう思いたかったんかも知れへん。
「惣右介」て名前言うた時から、惣右介はオレの仲間や言う事や。
仲間を疑いたくは、誰も無いやろ?
胡散臭いこと無いなったら、惣右介はホンマもんの完璧な副官やった。
そう思てた。
魂魄消失事件。
現場に赴任した拳西の霊圧消失。
きな臭すぎる事件や。
これはヤバいて誰もが思う様な。
・・・・まさか・・・・
「・・・藍・・・染・・・・!!」
お前が黒幕やったんか・・!!!
・・・オレにバレて懲りてた思てたら・・・
コイツ、更に深く潜ってやらかしてたんか・・・!!
『惣右介、エエから名前で呼べ言うたやろ?』
『それはできませんよ。』
『なんでやねん。仲間いうんは名前で呼ぶもんやで?』
『それとこれとは別ですよ。
僕の主義には反します。』
つまり、最初からオマエからするとオレは敵やったて言う訳か・・!!!
敵は名前でや呼ばへんてか!!
とんだ「オマエの主義」もあったもんやな、藍染!!
なんちゃって。