大人の本気(京楽春水)

・・実はねえ、今まで自惚れといっちゃなんだけど、ちょっと自慢に思ってた事があったのさ。

ちょいと他人より目はしが利いて、物事を見れるって思ってたワケ。
山じいにもさ〜〜、院生時代の時から「おぬしは浮ついているように見えて、実は誰よりも思慮深く、真実を見通す力に優れておるのぅ。」なんて言われちゃってさ。
あんまり人を褒めない山じいに言われちゃったもんだから、どっかでやっぱり有頂天になってたのかもしれないねえ。

ボクを完全に騙せちゃうヒトなんていないでしょ。て、思ってたわけだね。
でも、実際は居たわけさ。
しかも100年以上も騙され続けてたワケ。
まあ、いくら他の人たちもやられちゃってたと言え・・こいつはちょっと悔しいじゃないのさ。

しかもだよ?
ボクは副官までそのせいで亡くしちゃったんだからね。

いやあ〜〜、惣右介君てば。


・・・やってくれるじゃないの。


あの時・・副隊長だった惣右介君の姿を五番隊の回廊で見たとき、ボクはうかつにも、惣右介君は完全にシロだと思っちゃったんだねえ。
あの事件の時、惣右介君は確かに五番隊に“居た“。
どう見てもそう見えたさ。どっから見てもボクの知ってる惣右介君だったからねえ。そりゃもう見事なくらいにさ。
だからさ?浦原君が例の事件を惣右介君の仕業だって言ってるのを聞いても、「そりゃ違うでしょ。」ってなったワケ。

浦原君が例の事件の黒幕っていうのには、正直疑問だと思ってたけど、だからって惣右介君が黒幕だとは全然思わなかったわけさ。
多分、惣右介君はあの件でボクに「自分はシロです。」って刷り込ませちゃったんだねえ。
だからその後の四十六室の妙な動きも、惣右介君と関連付けれなかったわけさ。

いやあ〜〜、騙すのもここまで来ると「お見事!」・・と褒めたいところだけどさ。

・・・ちょいとやり過ぎなんじゃないの?惣右介君。

あんまりにも犠牲者が多すぎだよ。
可愛いウソくらいなら、こっちも喜んで許しちゃうけどさ、・・これは流石に許せないねえ。

そろそろ幕を下ろしてもらうよ?
その為には、こっちも本気でやらないとねえ。


年を取ってくるとね?若い時みたいに、何にでも全力とか本気とか続かなくなっちゃってねえ。
必要な時にしか本気ってのを出さなくなっちゃうんだよねえ。なんて言うの?省エネ?まあ、そんな事はどうでもいいんだけどさ。
だけど、それだけ本気出さなきゃなんない時には、集中出来るってもんなのさ。

好きじゃないよ、戦いなんてさ。
無くて済むなら、やんない方がずっといい。

・・けどどうしてもやらなきゃなんなくなった時には・・

全力でやらなきゃねえ。

遊びはそろそろ終わりにしようよ。惣右介君。


いっちょ大人の本気でやろうじゃないの。




なんちゃって

 

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