最悪の顛末(浦原喜助)

「そういや、聞いたかオマエ、あの話。」
平子サンから、聞いた流魂街の変死事件。

本当に妙な事件でした。
流魂街の住人が服だけ残して跡形もなく消える。

『生きたまま人の形を保てなくなって消滅した』
そうとしか考えられないと言われてるって、平子さんは仰ってました。

「生きたまま人の形を保てなく・・?」

・・・その時ボクはイヤな予感がしてたんス。
それはほんの小さな予感だったんスけどね。
だけど、それはあっという間に大きくなってしまった。

まるで、健康な体を蝕むがん細胞のように。

・・・生きたまま魂魄が形を保てなくなるってことは・・・

それは・・魂魄の壁が何らかの理由で取り払われる、若しくは極端に弱体化させられるという事を意味します。

理由として考えられるのは二つ。

一つは、未知の病気によるもの。
だが、いきなりこういった病気ってのは発生しないもんなんス。必ず似たような・・でも軽度の病気の発生がある。その経緯を経て重大な病気っていうのは出てくるもんなんス。
だけど、こんな症例、似たようなものすら過去にはない。だから、これは病気じゃない。

・・・とすれば・・・

二つ目の、人為的なものだという事になる。
では、何のためにこんなことを?
ボクは科学者です。それが何らかの実験だと直ぐに気づきました。
では、何の実験を?
魂魄の壁を取り払って、何をしようというのか?

ボクは覚えがありました。
魂魄の壁を取り払う。魂魄の壁を取り払えば、虚の力を手に入れることが出来る可能性がある。
そうすれば、死神である能力に加え、虚としての能力を付加することも夢ではなくなる。

それは・・ボク自身が研究していたことだったからっス。
僕はそしてそれを可能にする物質、”崩玉”を作っていた。
実際、使ったことは無いっスけどね・・。

<人で実験を行うようになっちゃえば・・ボク自身、もうヒトじゃない。>


ボクは”最悪の顛末”を予想していました。
もうこれ以上、悪くはなりようがないだろうという顛末を。

1、流魂街の住人で実験を繰り返した<何者>かが、ある一定以上の魂魄の壁を取り払う技術を習得する。

2、次により魂魄強度の強い者へと・・つまり死神へと実験対象を広げてくる。

3、<何者>かは虚化が確認されるまで、実験を加速させる。・・・そう、隊長格にまで。

4、そして後に、虚化された死神が残る。

5、虚化された死神に・・尸魂界から殺害命令が出される。<何者>かが誰なのか、解らないまま。


ボク自身がイヤになるほど、現実はそのとおりになっていきました。
まさか・・・これほど、予想通りに最悪の方向へ行くなんて。

・・実は最悪の顛末ってのには、続きがありましてね?

ボクが虚化の研究をしていたことを知られて、今回の事件の犯人にされるってこともあったんスよ。

笑えないほどに結局そのとおりになっちゃいました。


そうなったらもう現世に逃げるしか無いっスよねえ。
ボクは二種類の義骸を同時並行で開発し始めました。

一つは、被害者になった人たちを助けるための義骸。
分解しかけた魂魄がなんとか消えずに済むように。

もう一つは、霊圧遮断型義骸の開発です。
これは、ハッキリ言うと、逃亡用です。現世へのね。
これがあれば、現世へのがれても霊圧探知されることが無くなります。そう。現世の人たちと見分けがつかなくなります。

ボクは、助けるための義骸を優先してました。
でも、結局それは無駄だった。



完成させたのは、霊圧遮断の方だった。

全ては予想通りに。
そう、最悪の予想通りに動いていきました。

・・・誤算でしたよ。
だって、普通一つや二つ予想以外の事が起きるもんでしょ?
それが一切無かったんですから。


・・全ては最悪の顛末どおりに。

・・藍染副隊長にとっては最善の顛末どおりに。




でも・・そろそろ流れを変えなくちゃいけませんよねえ。
なんせ、一〇〇年もやられっぱなしなんスから。

いい加減、アタシもやられ役は飽きちゃいましたヨン。


さ、仕切り直しと行こうじゃありませんか。



なんちゃって。
 

 

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