最後の男(黒崎一護)

小学校の頃、国語の教科書にこんな文章が載っていた。

『親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている』

思わずコレ見て笑っちまったんだ。

・・・だってよ、なんか俺のことを書いてるみてえだったから。



俺、黒崎一護、今日で16歳になった。
つーか、何年目の16歳だなんて突っ込むなよ?そういうのは一切なしだ。


16にもなれば、体は大分大きくなって大人とそんなに変わらねえようになってくる年だ。
まあ、まだ伸びるだろうけどよ。
じゃ、中身も成長したかというと、必ずしもそうじゃねえし。

小学校の時に思わず笑っちまった夏目漱石の「坊ちゃん」の書き出しだけど、未だに今の俺にはそのまんま当てはまる。未だに無鉄砲は直らねえ。
けど、損ばかりしてるって気は正直してねえ。ていうか、損得とか考える奴は無鉄砲にゃなんねえって。

俺を見てるオマエは、やっぱ俺の事を無鉄砲だって思ってんだろうな。
もっと上手いやりかたあんのに、なんでしねえんだろうって思ってる奴だって正直いると思う。
壁にぶち当たるのは解りきってんのに、真正面からぶち当たりに行ってやっぱぶち当たってひっくり返る。
そんで、傷だらけになって止めんのかと思えば、性懲りもなくまたぶち当たりに行く。
何バカなことやってんだって思われてるかもしれねえ。

けど・・いいんだよ、それで。俺は。
特に今の俺はそれでいいんだよ。

だって、うまく立ち回って上手く世の中渡って行くってのは、俺の性には合わねえんだからよ。
俺は上手く立ち回る技はねえ。けど、誰にも負けねえ勢いがある。
勢いと技両方身につけりゃいいっていう奴もいるかも知れねえけど、それじゃダメなんだ。
俺が技に走ろうとすれば、肝心の勢いが死んじまう。
俺は器用な奴じゃねえ。技にこだわって勢いが死ぬくれえなら、俺は勢いだけをとる。

じゃ、一生技とは無縁なのかというと、そうでもないと思ってるんだぜ?
技は壁とやらにぶち当たって勢いと壁が軋る音を立てたところで、生まれるんだ。
そこで俺は初めて技ってのを身につける。
頭で教えられてもダメなんだよ。俺は。
壁と俺の勢いが火花を散らしてこそ、俺の勢いってのは、本当に戦える技をつけた勢いになる。

だから、壁にぶち当たるのを最初から避けるわけにゃ、いかねえんだ。
何度も何度もそうやって、壁にぶち当たって、本当の勢いってのを身につけて俺は成長していく。
だから、俺は誰よりも多分不安定だ。
いきなりドン!と強くなるかと思えば、さっぱり強くなってねえじゃん、と思われる時もある。

・・見てる方がハラハラするかもしれねえな。

悪りィ、でも今はそれでいいんだよ。
まだ、俺はまとまる時期なんかじゃねえ。
今はまだ成長する時期なんだ。いろんな所で火花を散らして磨く時期なんだよ。自分をな。

BLEACHはいろんな奴らが出てくるマンガだ。
またその一人一人がそれぞれの味を出して、それぞれおもしれえ奴ばっかだ。
最初は、俺、黒崎一護からBLEACHに入ったってやつでも、いつの間にか他の奴にハマっちまったって奴もいると思う。

いいんじゃねえ?それはそれでよ。

けど、この作品を最後に締メんのはこの俺だ。
物語がこれからどうなろうと、どんな展開になろうと、最後の最後でビシッと締める。
それが俺の役目だ。そんで、俺はそうやって締めれる男になってなくちゃなんねえんだ。

その締める強さってのは、知識や教えられて身についたモンなんかじゃ、身につかねえ。
てめえが苦労して手に入れた強さだと俺は思ってる。
だからこそ、その過程ってのはスゲエ大事なんだ。

だから、今は回り道だって思われても構わねえ。
イライラさせちまったら、悪りィ。


けど、これだけは言っとくぜ。


俺が”最後の男”になる。


他の誰にも渡さねえ。
最後にシメんのは、この俺だ。




なんちゃって。
 

 

inserted by FC2 system