洒落者オヤジ(京楽春水)

洒落者。

人は京楽をそう評する。

武道に秀でた上流貴族の京楽家。その次男坊である春水は、跡取りである長男に比べ格段にフリーダムな人生を送ってきた。
生来の女好きということもあり、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
そして、言い寄った女にパチンと手をやられて、「ふられちゃったよ〜〜。」とまた別の女へ寄って行く。
ふった女たちは口をそろえてこう言うそうだ。
「だって全然本気じゃないんだもの。あの人。」

と言いつつ、それなりに若いころは鳴らしたらしいが、年を取ってくると、やはりパチンとやられる確率は多くなったそうだ。けど、まったく凹まない。でもまた果敢にチャレンジするところはある意味評価に値するかもしれない。

そんな京楽は何気に自称、オシャレである。
「ではまず、ひげを剃れ!」と言われかねないが、どうやらひげも彼にとってはオシャレの一端を担っているらしい。
何でも、男性らしさの象徴なのだそうな。で、腕だの胸だのの毛も出してるわけだ。
うら若き乙女に毛など全く受けないので、結構大事な問題だと思うのだが、それは譲れないらしい。

京楽は足袋を履かない。
冬だろうがなんだろうが裸足に草履だ。
足袋に草履が基本の死神スタイルだが、これはずいぶん前から続けているようだ。
あの剣ちゃんでさえ足袋は履いているので、かなり目立つ。
「君は何故足袋を履かないのかネ?
いや、言わなくてもいいヨ。私が開発したこの新水虫薬なら、どんな水虫でも直せるんだが、如何かネ?」
涅マユリに言われた時、京楽は笑いながら「違うよ〜〜、水虫なんかじゃないよ〜〜。ホラ〜。」と草履を脱いで見せようとすると、マユリが言ったそうだ。
「・・君は足に毛生え薬でもつけているのかネ?」
視線の先には足の甲にまでびっちり生える足の毛。
・・これは女の子にはかなり辛いだろう・・。

なので、女性死神たちは京楽の足袋履きを強く要望しているそうな。


そのお洒落に、この百年で追加されたのが肩にはおる女物の着物だ。
これは安物だ。
何故かと言うとこの着物、外でごろんと昼寝をするとき敷物になるからだ。
隊長の羽織を汚すわけにはいかないので、着物をはおるようになった。男物の着物は地味で楽しくないそうだ。
ともあれ、この羽織のおかげで戸外で昼寝をすると気持よさそうな場所を見つけると、ごろんとすることが多くなった。
しかし、外で昼寝となると、邪魔になるのがお天道様。
折角いい天気なのはいいのだが、お天道様が真上でさんさんと照っていると、流石にちょっと眠りにくい。
そこで、編み笠を被るようになった。今や編み笠と女物の着物は京楽にとっては必需品だ。


年を経るごとに、京楽は戸外の昼寝が多くなってきた。
何処で取ってきたのやら、草の葉を加えて鼻歌を歌いつつ昼寝する。

『なんでもかんでもあくせくやるのは、どうも性に合わなくってねえ。』

「京楽隊長、こちらにいらしたんですか?起きて下さい。」

京楽は副官は絶対女の子にすると決めている。


どうせ起こされるなら、女の子に起こして欲しいのだそうな。


単なるスケベオヤジとも言えなくもない。


なんちゃって。

 

 

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