只今西洋かぶれにつき(藍染惣右介)
・・・・虚夜宮はデカい。
そして、当然、その主たる藍染惣右介の部屋もこれまたでかい。
ちなみに、何故か家具もでかい。
ついでにいえば、使う食器の取っ手は長い。
更に言えば、そんな藍染の前髪も長い。←あっ
我々ウサギ小屋などと呼ばれて久しい日本家屋で育ったものとしては、えてして広い部屋に憧れる。
広々とした空間。ちゃんと家具もあるのに、体操できるくらい広かったらいいな〜〜。
そんな我々でも、流石にその部屋は広すぎてイヤだな・・とか思うくらいに広い部屋の持主が藍染である。
どう見ても体育館くらいありそうな広さのオーディオルーム。
ビル4階に届きそうなくらいの、ありえない大きさになるスクリーン。
注)流石に首が疲れるので、そこまで大きくすることは少ない。
中には椅子がたった一つ。
正直言って、コレ何のお仕置き部屋?大は小を兼ねるとか言うけど、流石にこれは兼ねれんやろ。とか思ってしまうくらいの広さだ。
そして、その椅子にお仕置きの為でなく、情報収集のために自ら座るのが藍染惣右介である。
当然冬は寒い。
2月の下旬とかは暦の上では春に入ったり入らなかったりするのかもしれないが、寒いのは寒いのだ。
でも、大丈夫。藍染のお部屋は床暖房。霊子を核分裂させて電気エネルギーに似たものを作りだし、虚夜宮の動力源となっている。
なんせ水のない虚圏に水出して、お茶入れるくらいなんだから、それくらいは出来るだろう。
・・たぶんだけど。
藍染は生活様式を虚圏に来てからは、全て西洋方式と決めている。
尸魂界の頃とは違うのだ。尸魂界では五番隊隊長だったが、こっちでは王様となっているのだから。
やっぱ心機一転を図るには生活様式を変えるってのも重要だよね!うん!
けど、寒いとちょっぴり恋しくなるのは、昔の生活様式だったりもする。
掘りごたつや昔懐かし火鉢。火鉢の上には網を引いて、餅や干物を焼いたものだ。
やかんを置いて、しゅんしゅんと音を立てるのを何とはなしに聞くのはいかにも冬には似つかわしい風景だった。
冬の時期によく藍染が食べていたのは、当然湯豆腐。
小鍋立てが最も良い。
食べるスピードに合わせて自分で煮え加減を調節出来るし、目の前に小さな焜炉があるため温かさも格別だ。
「・・そう言えば・・こちらに来てからは食べていないな・・。」
小鍋立てから立ち上る、湯気が少しばかり懐かしい。
ちなみに藍染の好物は豆腐だ。
バリバリの和を代表する食である。
しかし、現在藍染はバリバリの西洋かぶれ中。
ちなみにスペインのスメルが一番高い。
けど、豆腐がなんだか食べたい藍染惣右介。
「今や、TOFUとして国際食となりつつある豆腐だ。
あまり気にする必要もないか。」
されど、流石に豆腐に醤油をかけて食うとか、湯豆腐にしてくれないかと、藍染の料理人には頼みづらい。
「ああ〜〜、なんだかんだ仰られてもやっぱり、藍染様も昔が懐かしいんですねえ。」とか言われるのはやっぱり嫌だ。
まてよ?加工はしやすい食材だから、スペイン料理に入れてもらえばいいじゃん?
何がいいだろうか。やっぱスープ系が欲しい。
ガスパチョはトマトの冷製スープだ。寒い日に食うものではない。
温かいスープ系。となると、にんにくスープのソパ・デ・アホ?
「・・悪くないな。」
良い豆腐は、あまり火を通しすぎないのがポイントだ。
なのであまり煮込みには向かない。
前菜として、トマトとアンチョビ、食感を出すためにキュウリと一緒に出すというのも考えられる。
巨大なオーディオルームにたったひとつある椅子に腰かけながら、あれこれ思いを巡らせる。
けど、やっぱり小鍋立てで柚子こしょうをたっぷり入れたポン酢で喰う湯豆腐には叶わないと思われる。
西洋かぶれも楽じゃない。
思わずひじ掛けに頬杖をつく藍染だった。