他山の石(松本乱菊)

<他山の石>
意味*「他人の誤った言行も自分の行いの参考となる」


・・女にとって不幸な事ってのは、たちの悪い男に引っかかる。


・そういう事なのかも知れないわね。


でも、危険な男って言うのは、不思議と女を惹きつける。
女はその危険を感じ取りながらも、そんな男に引き寄せられる。

それはまるで炎へ飛び込む虫のように。
そんな子が近くにいるの。

雛森。
良い子よ、とっても。あたしと違って真面目で可愛い女の子。
謙虚で一途で。
藍染隊長を心の底から信頼してた。
もう崇拝と言っていいわね。
あたしから見ても呆れるくらい、藍染隊長の事大好きだったわ。

藍染隊長は確かにいい人だった。
・・けど・・・

誰よりも最悪な男だった。


尸魂界を根底から大混乱に陥れて、さっさと自分は虚圏に逃亡。
あれ程自分を慕ってた雛森を瀕死の状態にして。
雛森が今生きてるのは、たまたま居会わせたた卯ノ花隊長のおかげ。
正直言って奇跡だわ。

・・けど。
生き残った雛森もまた最悪の状況だったの。
信じないのよ。どうしても。
藍染隊長がそんなことするはず無い。って言ってね。
自分がその男本人に殺されかけたってのに。

卯ノ花隊長があたしに言ったわ。
「雛森副隊長は、いわば藍染隊長に洗脳された状態です。
今何を言っても無駄でしょう。
今は唯静かに日々を過ごし、少しずつ現状を知ることから始めなければなりません。
洗脳を解くのに、特効薬はありません。
時間と根気が必要です。焦ってはなりません。」

・なんてことなの・・。

最悪にたちの悪い男にひっかかると、こうもなってしまうのね。

背筋が少し寒くなったわ。
私も少し・・覚えが無いわけじゃないからね。

・・気をつけなきゃ。
引きずられちゃダメ。
自分をしっかり持たなきゃ。

たちの悪い男にいい様にされるなんて、あたしの趣味じゃないの。
男を振り回すくらいの女じゃなきゃ。

空座町の決戦の前。
あたしは日番谷隊長と一緒に雛森に会いに行ったのよ。
でも、決戦があるなんて一言も言わないわ。
だって、そんな事を知ったら、雛森が出てくるとも限らないと思ったから。
日番谷隊長も同じ様に思ったみたいね。
雛森の体調を気遣う言葉と、いつもの軽口しか利かなかった。

一見雛森は普通に見えた。
けど、何かの拍子でおかしくなる。
それは前の通信でいやと言うほど見ちゃったもの。
雛森はまだ戦うべきじゃないわ。
特に藍染隊長が居る場所ではね。


・・けど・・。
雛森は出てきてしまった。
何処で聞いたのか、この決戦の事を知ってしまったのね。
まあ・・これだけ隊長格が居ない状況なんだから、どこかで知ってしまっても仕方ないのかもしれないけど。

けど・・来ちゃダメよ雛森・・。
あんただけは来ちゃダメなのよ・・。


雛森はもう自分は大丈夫だと言ったわ。
・・けど・・・それは自分で思っているだけ。


・・気をつけるのよ。雛森。

そして気をつけるのよ、あたし。

気を緩ませちゃダメよ。
たちの悪い男に引きずられないように。
自分のやるべき事を、忘れちゃダメ。


・・・雛森、あんたを見てると不思議ね、あたしの覚悟が強まるわ。


・・こういうの、他山の石って言うんだっけ。


でも、藍染なんかの磨き石なんかになっちゃダメよ、雛森。


あいつの頭にぶち当ててやるくらいじゃなきゃ。



さあ、行くわよ雛森。




なんちゃって。


 

 

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