受け取るがよい。・・さもなくば死を。(朽木白哉)

・・・薄汚い(笑)死神代行との一件以来、兄様は現世の事をよく勉強するようになった。

別に現世の事を勉強したところで、薄汚い死神代行(←もうええっちゅうねん)の事が解るわけではない。
だが、奇跡的かつ超絶的なまぐれ(注:当然負け惜しみです)とはいえ、自分を倒した人間がどのような世界に住んでいるのか、ちょっと興味が芽生えたのだ。

そして、10月31日がハロウィーンという日であることを兄様が知ったのである。
ハロウィーン。
由来を書いてると長くなるので省略するが、要するに子供が変装して「菓子くれへんと、いたずらするで?」←何故か関西弁だし)と近所を回って菓子を貰う行事である。

「・・・ハロウィンか・・。」

凝り固まった護廷隊。
それに新しい風を入れると言う事が必要な時期に来ている事を兄様は賢いので知っている。

「物乞いの如く、近隣を回るだと・・・?下らぬ。」←ありー?
いたいけな子供の楽しみを一刀両断した上で、兄様は執事の爺やを呼んだ。
「至急手配したいものがある。」


・・・そして、ハロウィーンが始まった・・・。

その日・・・現世の一護は強大な霊圧を感知した。
自分の部屋から窓の外を見ると、そこには存在するだけで威圧されるような兄様のお姿が。

「白哉?!オマエ、こんな所で何してんだ?!何で現世に・・。」
現世に何か大変な事が起こっているのかと、つづけて尋ねようとした一護の言葉を遮り、目の前に何かが差し出された。

「受け取るがよい。」
見れば、どうやら何かの菓子の様だ。饅頭の様だが、妙な形状である。
「なんだ?こりゃ。」
「このような簡単な事も知らぬと見える。ワカメ大使の人形焼きだ。」

・・・兄様、あくまで自らキャラデザインしたワカメ大使を世に広めたいらしい。(爆笑)。

しかし、一護の返答は冷たかった。
「いらねーよ、こんな妙なモン。」
ピクリと兄様の片眉が動いた。
「・・そうか。ならば仕方あるまい。」

ズボッ!!!
「何だ・・・?!」
一護の頭に何かが被せられた。
筒状のものらしい。直ぐに頭が抜けた。
「プハッ!なんだよコレ!!?」
と一護が自らの体を見ると・・・。

何やら緑色の着ぐるみを着せられていた。手足は抜けるタイプだ。胴体部分はもこもこしている。
「こ・・これって・・もしかして・・。」
「ワカメ大使だ。この私の施しを無礼にも受けなかった者は、仕置きとして今日一日ワカメ大使として過ごしてもらう。」
「何だよソレ!」
「今日は、兄らの文化ではハロウィンと呼ばれる日であろう?
それを私なりに取り入れたのみ。」
「どんな取り入れ方だ!!ていうか、こんな格好で一日居ろってか?!」
「では尸魂界へ戻るぞ。」
「って待てよ!オイ!」
「案ずるな。兄だけではない。」
「・・・?」

その時一護は初めて気がついた。
兄様は一人では無かったのだ。
兄様の後ろで緑の着ぐるみの、でかい体を恥ずかしげに小さくしているのは・・・。
「れ・・恋次?!」

・・そう、最初の犠牲者は一護ではなく、兄様の副官、阿散井恋次だった。

「ぶはーーー!!!恋次なんだ、その格好!!?」
「や・・やかましい!てめえだっておんなじ格好してるじゃねえか!」

「五月蠅いぞ。今より尸魂界へ戻る。ハロウィンの始まりだ。」

・・それは・・・

あまりにも異様な光景だった。


涼しげに瀞霊廷を歩む兄様の後ろに、もう死にたい←(恥ずかしくて)とばかりに顔を真っ赤にさせた、ワカメ大使が二体付き添っているのだ。
しかも悲劇は更にエスカレートする。

兄様単体でも菓子を受け取りにくいのに、ワカメ大使二体が付き添っているのだ。
「受け取るがよい。」と差し出されても、受け取れないのが普通の神経の持ち主だろう。

・・そして・・・

兄様が回る度にワカメ大使は増殖することとなった。←(笑)

ワカメ大使姿の七緒やイヅル、勇音に大前田だの、次から次へとワカメ大使にさせられた。
どうやら人形焼きを素直に受け取ると、ワカメ大使にならないといけない、と逆の解釈を皆したからだ。
頑なに受け取りを拒否する姿が、ワカメ大使の「受け取っとけ!!」という必死のアドバイスにも関わらず、次々とワカメ大使へと変貌していくのである。

ぞろぞろと大量のワカメ大使を従えた兄様。
まさに、百鬼夜行の光景だ。

・・しかし、兄様実はちょっとせつなかった。

だって、今日作らせた人形焼きは、餡も小麦粉も最上級。ジャムおじさんもまっ青のシロモノだ。それなのに、誰も受け取ってくれないのだ・・。

そこへ、<兄様の誇り>がやってきた。どうやら騒ぎを聞きつけたらしい。ていうか、何とかしろと言われたらしい。
「兄様!!!」

息を切らして、兄様の方へ駆け寄ろうとしたルキア、背後のワカメ大使の軍団に息をのんだ。
何かを語ろうとして開かれた口が、言う言葉が見当たらず、戦慄いている。
そして、兄様を戸惑いを含んだ目でとらえた後、ルキアは言った。

「・・流石です・・!兄様!!!」←大絶賛かい!
「ルキア。」
「なんという、究極の高みにまで到達したセンス・・!!
このルキア、改めて兄様の素晴らしさに感銘いたしました!!!」

「ルキア!てめえ本気か?!こんなんのどこが高み・・。」
「黙れ、一護!!!貴様ごときが兄様の美の領域に立ち入ることなど到底出来ぬ!!」

・・・命の恩人やのに、エライ言われようやな、一護。(笑)
「兄様・・!お願いです!!私にも・・私にもこのワカメ大使の一行に加わることをお許し下さい!!」
「ならぬ。」と兄様一言。
「そ、そこをなんとか・・!」
「これはハロウィンの仕置きだ。私の施しを無礼にも断った者たちに対する粛清なのだ。」
「・・施し・・?」

ルキアに差し出されたのは、ワカメ大使人形焼きwith朽木家家紋入り。
「何と・・!素晴らしい・・・!
兄様!!このような素晴らしきものを拒絶するものがこの世には居るのですか?!!」

うん、いっぱい(笑)。
それには無言で肯定する兄様。

「一行に加わることはならぬ。だが、勝手に付いてくることについては、私の知るところではない。」

出たよ!兄様のツンデレが!(笑)

「そろそろ仕置きの服も無くなったか。
よし。ではこれより、戻るぞ。」
「戻るって六番隊舎ですよね?」と確認する恋次。
「・・・六番隊隊舎だと・・・・?」
また兄様のまゆ根が不機嫌そうに寄せられたぞ〜〜?

「ワカメ大使は何時から死神となったのだ。
大使が帰るべき所とは、大使館しかあるまい。」

ワカメ大使館・・。考えたな、兄様(笑)。

そして、兄様、大量のワカメ大使を引き連れて、六番隊隊舎改め、ワカメ大使館へ帰還。
「これより、ワカメサミットを始める。」←

ワカメサミット・・・。
まあ、要するに飲み会ですな。
しかし、当然大使たちに、着ぐるみを脱ぐことは許されない(笑)。


そして、会場の隅の方では、恋次と一護がくだを巻いている。
「何だったんだよ、今日は。」
「知らねえよ、そっちのハロウィンてのが悪いんだろうがよ!」
「違えよ!ハロウィンはこんなじゃねえ!
普通にガキが近所回って菓子貰うだけなんだよ!まあ日本じゃあんま、やんねえけど。」
「・・ったく。朽木隊長にも困った・・。」
「何か言ったか、恋次。」
「げ・・・・!!!」

どうやら、恋次も一護も今日はとことんついていないようだ。

「・・なるほど。
兄らがその恰好が奇異に見える理由がわかったぞ。」
「そりゃ、フツーはおかしいだろ、この格好。」
「髪の色が合っておらぬのだ。」
「は?」
「その下賎で無粋な色の髪が似合わぬ原因なのだ。

・・染めるか?いっそ。やはり緑がよかろう。」

「イ〜〜〜ヤ〜〜〜〜〜ァ!!!!!」


ワカメ大使館に、哀れな悲鳴が木霊する。
それは亡霊の叫びにも似たり。



ハッピーハロウィン・・と一応祈っておくことにしよう。







なんちゃって。

 

 

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