美しき生き方(綾瀬川弓親)

・・ホントはね・・。

僕は・・昔はこの顔の事を言われるのが大嫌いだったんだよ。

僕は小さい頃からよく女の子に間違えられてたのさ。
別に、女の子らしい恰好をしていた訳じゃないんだけど、周りから言わせると「女顔」って言われてね。

からかわれたし、いじめられたものさ。

女男だの、オカマだの、生まれてくる性別間違えてるだの、もっとひどい事も言われてきた。
この顔が嫌いだった。
みんなみたいに、なんで普通の顔じゃないんだろうっていつも思ってたものさ。

この顔が嫌いで・・そしてそんな顔の僕自身も大嫌いだった・・。

そう、一角に会うまではね。

一角に初めて会った時の事は忘れないよ。
初めは一角も、僕の事を女の子だと思ってたんだ。
やけに優しくしてくれてね。でも男だと伝えた途端、急に豹変さ。
「なんだよ、野郎かよ。じゃ、気づかいは無用だな。」

それでおしまい。
一角の僕への言動は、ただの男にたいするものと同じものだった。
僕の顔をからかってきた連中に殴りかかる際にも僕にこういったんだ。

「何やってんだよ、てめえは!
コケにされたら、殴り倒さねえか!てめえ男だろうが!」

・・・一角らしいだろう?
僕のずっと悩んでいたことが、何でもないような事だと一角は言い切ったに等しかった。

多勢に無勢をものともせず、楽しそうに殴り合う一角。
一角は物凄くその頃から強かった。でも体中小さな古傷だらけさ。
そして、傷を負いながらも戦いぬく姿に、僕は奇妙な感動を得た。
僕は戦いに加わった。そしてその時、本当に僕は自分が男だと実感したんだと思う。

喧嘩が終わったときには、立っているのは僕と一角だけだった。
お互い酷い顔さ。
「なんだ、てめえ結構つええじゃねえか。」
一角が褒めてくれた。
「・・どう・・も・・。」僕は慣れない事でもう息も絶え絶えさ。

「なんか、色々つまんねえことで悩んでるみてえだけどよ。
考えるだけ無駄だ無駄。」
「・・?」
「男にはたった二つしかねえ。
勝つか負けるかだ。

気に入らねえ奴は殴り倒す。力が強え方が良くも悪くも掌握する。
それで終いだ。
そんな所に悩みなんて付け入るトコなんてどこにもねえんだよ。

悩むヒマあんなら、喧嘩の相手でも探しやがれ。」

・・・ハッ!やられたとは思わないかい?
なんて、シンプルなんだろうって。
馬鹿が付くほどのシンプルな生き方さ。

・・けど・・・

・・・本当の美ってのは・・シンプルな中にあるものなのさ。

一般的に美しさってのは、装飾を伴うと僕は思ってる。
女性が必死で化粧やファッションに取り組むのは、装飾に美があるからだ。
僕もそれは否定しない。今現在の僕も僕自身の美を高めるために、付け眉をしてるからね。

・・けど・・シンプルであるって事は、余計な装飾がないって事だろう?
装飾で誤魔化すことが出来ないんだ。
その状態で、人を感動させるほどの美に・・装飾した美がかなうはずなんてない。

装飾は取れてしまうからね。
けど、ありのままの美は取れない。
だから、最強の美と言えるのさ。

僕はね、一角の生き方に最上の美をみたのさ。
そして、その一角が命を預けた更木隊長にも同様にね。

彼等と同じ所で生きたいんだ。
彼等と同じ戦場で。
同じ所で戦って・・・同じ所で死にたいのさ。

だから僕の斬魄刀が鬼道系だって知ったときは・・・悲しくてね。
彼等と同じ場所で戦えないと、恐怖すらしたものさ。
だって一角たちと同じ場所で戦うには打撃系じゃないとだめだ。
打撃系で倒さなくっちゃ、彼等と同じ場所で戦う資格がないからね。

僕は必死で考えた。
そして、斬魄刀「瑠璃色孔雀」は「藤孔雀」と僕に呼ばれるようになった。

斬魄刀の真の力は、当然真の名前を呼ばれなくては解放されない。
機嫌を損ねた「瑠璃色孔雀」は中途半端にしか力を解放しない。
4枚の刃を持つ刀。

それが、一角や更木隊長と同じ戦場で戦えるギリギリのラインだから。

彼等と同じ戦場で生きたいんだ。
だって、彼等は男としての最も美しい生き方をしているんだからね。

僕の本当の能力を出せなくて構わないのさ。
彼等が僕の事を鬼道系斬魄刀の使い手だって知って、侮蔑の視線をなげかけるくらいなら・・・。

・・・僕は真の能力を隠したまま、死んだ方がいい。


認めていいよ。僕は美しさへのコンプレックスを抱えている。
だからこそ、僕は美しく生きたい。


・・いつだって、一角にも更木隊長にも胸を張れる男でありたいんだ。


・・だって、僕も男だからね。




なんちゃって。

 

 

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