絶望の拒絶(ウルキオラ・シファー)

・・・変わった女だった。


事象の拒絶という特異な能力だけでも十分変わっていたが、その精神はその上を行っていた


あの女・・井上織姫とちゃんとした形で対峙したのは、断がいの時だ。
護衛の死神を二人を消せば、必死になって回復しようとしていた。
逃げることなど、最初から選択肢にないかのように。
激しく損傷した死神。それも下らない能力しか持たないザコだ。
恐らく女と面識もあるまい。

そんな死神共を自らの命の保全を考えずに必死で直そうとする姿に、奇異を俺は感じていた。
治そうが、俺がもう一度壊せばどうする?何故それを考えない?
それを考えれば、治すことなど意味は無いこどに気づくはずだ。

そして、俺は女に選択肢を与えた。
最初から一つしか選べないような選択肢だ。
最初から女が虚夜宮に来る事になる事は誰の目にも明らかだった。

そして、女はやってきた。読み通りに。

だが、俺の読みが外れていたことが一つあった。
女の眼は、不安、極度の緊張、決意、そんな感情を迷彩色のように宿していた。

だが・・絶望の色だけが無かった。

・・何故だ。他にもう選択肢がなく、仲間とも永久に離れるこの選択を選び、何故絶望しない?
絶望に打ちひしがれ、操り人形のようになっていてもおかしくない筈だ。

・・・何故、お前は絶望しない?

仲間がお前を助けようと無謀にも虚圏に乗り込み、一人づつ倒れていくのを手に取るように感じたはずだ。
不可能だとお前自身も解っているだろう。

・・お前たちに勝ち目は無い。

全ての希望はお前達の手には無い。

「彼女はもう用済みだ。」
藍染様のこの一言で、女の命の行方も決まった。
女が自分だけは大丈夫、と何処かで思っていたのは藍染様にとっては自分は有用だと思っていたからの筈だ。

その保証さえ失い、お前にはもう何も残っていない。
後は哀れな死を待つ時が残されているだけだ。


・・・なのに何故そんなにも静かな眼をしていられる。

「怖ろしいかと訊いている。」
「怖くないよ。」

・・なんだと?

「みんなが助けにきてくれたから。
あたしの心は、もうみんなと同じ処にあるから」

その言葉に嘘は感じられない。
この女は死を覚悟している。
だが、その眼に絶望の色は無い。


この女の能力は”事象の拒絶”。


・・これではまるで・・・


絶望すら拒絶できるとでも言わんばかりだ。
不可能だ。絶望という恐怖から生まれた俺がそのことを一番よく知っている。
絶望を拒絶することなど、できはしない。

・・変わった女だ。


藍染様はこの女を殺せとは命じてはいない。
そして、同時に生かしておけとも命じてはいない。


『・・俺に任せるという事か・・・。』


目の前の変わった女。


・・戦闘能力など無いに等しいこの女が・・危険だと頭の中で知らせていた。







なんちゃって。

 

 

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