アニメ209話のいじり(六車拳西)

妙な事件の噂は割合早く俺の耳に入ってきた。

『流魂街の奴らが、服だけ残して消えてるらしい。
それも、残された服は着ていたまんまの状態。
生きたままいきなり、消えたとしか思えない。
消えた奴らは、別段変ったところは消える直前まで無かったのに。』

・・確かに妙な事件だった。
フツー死んだんなら、服も一緒に消えるもんだ。
それが、服を残して消えたとなると、“生きたまま”消えたことになる。

そいつらにいったい何が起こったんだ。
そいつらは、今どうなってる?

流魂街に不安が広がってるのは当然だろう。
恐らく俺達護廷隊に真相の究明の命が下るのは時間の問題だった。

『これを割り振られた隊は貧乏くじだな。すくなくともウチ(九番隊)とっちゃそうだ。』
俺は正直そう思った。
原因不明の魂魄消失。
敵がいるのか居ないのかもわからない。
ひょっとすると、何か新種の病気ってこともありうるわけだ。
そうなると、俺達の出番はない。
敵を倒すってんなら、ウチはどこにも負けるつもりはねえが、相手が病気となりゃ、俺たちは正直お手上げだからな。

『さて・・と、この貧乏くじを引くのはどこの隊なのやら。』

「そこで、この魂魄消失事件の真相究明を、おぬしの九番隊にやってもらいたい。やってくれるかの?六車隊長。」
「・・・・かまいやしませんが、病気とかが原因だったら、ウチはお手上げですよ?」
「それは承知の上じゃ。その時には、十二番隊なり、四番隊なりに引き継ぎとする。」
「最初から奴らに振らない理由は何かあるんですか?」
「まずは“何が起こって”魂魄消失となっているのか、その状況を把握せねばならぬ。
それには機動力と組織力が必要じゃ。瀞霊廷内なら隠密機動を抱える二番隊に振るところじゃが、今回は流魂街。
総合的に判断して、おぬしの隊が最適と思うたのじゃが・・はて、不足だったかの?」
「ンなわけないでしょう。やりますよ。ウチで。」

このくそじじい。
・・ハッキリ言って俺は、生まれてこの方くじ運てのが悪い。
そして、見事そのくじ運の悪さで、うちがやる事になったわけだ。

とにかく、じじいの言った通りだ。
何が起こってるのか、把握しなきゃなんねえ。
流魂街の奴らに、事情聴取も予めしねえといけねえし・・。

「笠城、とりあえず先遣隊を出すぞ。」
「承知しました。何名で向かわせますか?」

流魂街の奴らに話を聞いて様子を探るくらいの任務なら、普通は五名で十分だ。
「五・・いや・・」
この時理由は解らねえ。だが、五人じゃダメだと俺の感が言っていた。

「十名で向かわせろ。」
「十名・・?!ですか?」
三席の笠城が驚いた顔をした。海とも山とも解らねえシロモンに、最初から出す人数じゃねえからだ。
だが、もし誰かの差し金でこの妙な事件が起こってるとすれば、そいつらとぶつかる事もあるえるからな。居たとしてもこれだけ犯人らしき者の目撃が無いってえことは、少人数の筈だ。
何かあったとしても、その人数なら倒すなり、時間稼ぎなり、対応するにゃ十分だと思っていた。

先遣隊はさっさと出て行った。
こんな大人数で行くのか?と奴ら自体が思ってるみてえだ。
だが、まあ気味悪ィ事件だ。しっぽをつかむだけでも時間がかかるかもしれねえな。仲間は多い方がいいだろう。

先遣隊を送ったはいいものの、俺の気分は良くなかった。
ざわつくんだよ。首のあたりがな。
こう言うときは、かならずちょっと厄介なことになる。

「笠城。俺たちも出るぞ。支度をしろ。」
「え?隊長自らですか?先遣隊から連絡があってからでも遅くはないのでは?」
「こういう気味悪ィ事件はさっさと片付けた方がいいだろうが。白には留守番させとけよ?」
「はあ・・しかし、久南副隊長がなんと言うか・・。」

笠城は、白の性格をよく知ってやがる。
そして、やっぱり白も付いてきた。ぶうぶう、文句たれながら。

道中は奇妙な緊張感が立っていた。
本来なら、俺みたいな隊長が自ら動く事態じゃねえ。
その辺が、隊の奴らにもこの任務のやべえ感じが解るんだろう。
普段なら何が起こっても笑い飛ばすような笠城も神妙な顔してやがった。

まあ一人を除いてだがよ。

「もうーー!なんであたしたちが行かなきゃなんないのよーー!
せっかく、あの後団子屋さんにでも行こうかとか思ってたのにさー!
拳西のせっかちー!出たがりー!バカー!」

・・・うぜえ。っていうか、てめえの隊長に向かって副隊長がバカとか言うな。バカ野郎。

こいつは、いつだってこうだ。
どんなヤベエ時でも、いつだってこうだ。
ガキみてえに駄々コネやがって、周りの迷惑なんざお構いなしだ。

けど、そういうこいつを見て、隊の奴らはどこかでホッとしてやがる。
俺は正直強面だ。愛想笑いなんて芸当は出来ねえ。
俺が愛想笑いだと思って笑ってみても、余計こええから止めてくれとか言われる始末だ。
仕方ねえだろ。誰でも向き不向きってあるだろうが。

だがまあなんだ。いつもいつもしかめっ面ばっかりした野郎どもがうようよしても仕方ねえ。
どっかで雰囲気を変えれる奴が要るもんだ。
それが白だと思ってる。

今回も、所構わず駄々コネながらついてきやがった。
隊の奴らは半分以上呆れつつも、そんな白を見てどっかでホッとしてやがる。
正直、今回はこいつは隊に残った方がいいんじゃないかと俺は思った。

何故かは知らねえ。


知った時には、もう既に何もかもが遅かった。

信じられなかった。
まさか・・まさか俺の隊から裏切り者が出るとは・・・。

この六車九番隊から裏切り者が出るとは・・!


・・・ちくしょう・・!!!


その後のことは覚えていない。

気がついたら、俺はもう前の俺では無くなっていた。
たちの悪い悪夢だと思った。


だが、それは残念ながら現実だった。






なんちゃって。

 

 

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