どいつもこいつも腰ぬけだ。(ノイトラ・グリムジョー・ザエルアポロ)

・・十刃に対し、藍染からは二つのみ禁止事項が言い渡されている。

本来ならば、禁止事項は二つのみで済むはずがない。
「十刃同士、表向きはいがみ合ってはならない。」だの、「公然と藍染様の悪口を言ってはいけない。」だの「電気はつけっぱなしにしてはいけない。」だの「暖房の温度は20度以上にしてはならない。」だの虚夜宮を管理運営する上で、禁止したところは山のようにあった筈だ。

だが、あえて二つのみに藍染が絞ったのは理由があったからだ。

「・・・彼らが守れる約束は二つまでだろう。
それ以上は、残念ながら覚えてくれそうにないからね。
守れない約束などに意味はない。
彼らが二つしか約束を守る実力がないのなら、それに合わせるまでの事だ。」

十刃に約束を守らせることは至難の業である。
なぜなら生来フリーダムな体質だからである。
自分の生死に関係するならば、大体のことは言うことを聞くのだが、それ以外については興味がない。
流石は元虚といったところだろうか。

さて。その二つのみの禁止事項とはこうだ。
一、虚夜宮の天蓋の下で「王虚の閃光」を使ってはいけない
二、同じく虚夜宮の天蓋の下で第4十刃以上の解放をしてはならない。

これだけである。
これだけならだれでも守れそうなものなのだが、禁止されてしまうと余計やりたくなるという輩もいるということは事実である。

ここにも、そんな輩が集っていた。
「俺達の特権の閃光を使うなって、藍染は言いやがったが、笑わせるぜ。
虚夜宮で使っちゃいけねえって言うんなら、いったい何処で使えってんだ?あァ?」
さっそく使いたくてムラムラしちゃったグリムジョーである。

「全くだ。俺たちは基本的に自分の宮に居る訳だからな。虚夜宮から出ることなんさ、そうざらにあるわけでもねえ。実質は使えねえってことかよ。けっ。」
珍しくも同調したのはノイトラだ。
「つまり虚夜宮を壊されたら困るってことだろう?まあ、僕も折角の研究材料を壊されても困るしね。
藍染様の言うことも一理あると思うよ。」
ザエルアポロはそうでもないらしい。

「壊れたって言うなら、また作りゃいいことだろうが。
なに面倒くさがってやがんだ。」
「また作る・・か。・・・そうだ。それがいいよ!またもう一度作ればいい。
僕が手伝っても・・イヤ、全面的に僕がやってもいい。
虚夜宮を僕が作る・・。これはソソられそうな話じゃないか。いろんな仕掛けを付け放題だよ。」

「誰がてめえなんぞが作った所で住むかよ。気色悪りィ。」
「いいじゃないか、それくらい。いろいろ役に立つことはあると思うけどね。
まあ僕も基本的には虚夜宮からは出ないから、せっかくの閃光を出せないのは残念だよ。
しかし、第4十刃以上の方に、解放までを禁じられたわけじゃないから、よしとしようじゃないか。」

「はァ?馬鹿かてめえは。」
「・・何だって?誰が馬鹿というのかな?ノイトラ。」
「てめえしかねえだろうが。
要するに5以下は刀剣解放しても虚夜宮がぶっ壊れるまでのことは無えって言われてんだぜ?
俺とウルキオラの番号は一つしかねえ。
なのに、あっちは解放すりゃ虚夜宮が壊れるとかいう理由で解放はナシだ。
番号で戦いに制限加えるとは、いい度胸だぜ。」

「守る必要なんてねえよ、ノイトラ。
俺たちは闘いたいときに、戦いたい方法で戦う。
それだけの話だ。藍染の野郎がどう言おうが知ったこっちゃねえ。
そうだろ?
藍染の言いつけを守って虚夜宮の中で4番以上がのたれ死のうが、ソイツも知ったこっちゃねえってことだ。」
「違いねえ。今日は冴えてるじゃねえかよ、グリムジョー。」
「その論理でいくと、僕が壊れた虚夜宮を自分風にアレンジしていくというのは不可能じゃないってことかな。」

「藍染がなんと言おうが、俺はその時になったら躊躇わずに『王虚の閃光』を使うぜ。
てめえらはどうだ?藍染を怖がって尻尾を丸めて終いか?」

挑発するように言うグリムジョー。
そんな風に挑発されては、それを受け流せるほどノイトラもザエルアポロも大人ではない。
「当然だ。誰に向かって言いやがる。」「僕もそこまで臆病じゃないよ、グリムジョー。」


・・そして・・・


公約通りに、虚夜宮の中で王虚の閃光を使ったグリムジョーに対し・・。

ノイトラとザエルアポロは最後まで王虚の閃光はつかませんでしたとさ。

やっぱりその時になると、わが身が可愛いということでありました。

「・・・どいつもこいつも腰ぬけだ。」
グリムジョーが瀕死の陰で呟いたのはだれも知らない。



なんちゃって。
 

 

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