春よ来い(日番谷冬獅郎)

・・4月。
桜も満開をとっくに過ぎるような、春真っ盛りだ。

春。
この時期をこう呼ぶようになったのは、諸説あるみたいだが、枝が張るとか言う意味の”はる”から来てるらしい。
英語でもspringとか言って、弾むとか言う意味の言葉が春を意味する言葉となっている。

要するに、植物がドンと成長する季節。
それが春ってわけだ。

この時期、俺達死神には一応毎年健康診断がある。
四番隊が取り仕切って、隊士たちの健康状態をチェックするというものだ。
隊長格もそれを受ける。無論俺もだ。

健康には自信があるから、別にイヤなもんなんかじゃねえんだが、一つだけやりてえのか、やりたくねえのか自分でもよく解らねえ検査がある。
身体測定だ。

俺の背はここしばらく殆ど伸びてねえ。
どうみても成長期の筈なんだが、俺の背は一向に伸びる気配が無い。
恐らく今年も去年と同じになるだろう。

健康についての総評をするのは、俺達隊長は卯ノ花が行うことと決まっている。
今年も、卯ノ花が優しげな顔で去年と同じような事を言った。

「日番谷隊長の健康状態は、特に問題はございませんでした。
各筋力は昨年よりも伸びているとありましたし、順調なようですね。」

・・”筋力は”・・か。卯ノ花は俺が気にしてるだろうことを知ってか、背についてはあまり触れてこないようになった。
その代り、身体能力の向上を殊更言ってくる。

・・ま、卯ノ花なりの気遣いというわけか。

だが、それは俺にとって根本的な解決にはならねえ。
「卯ノ花隊長。何故俺の背は伸びない。考えられる理由を教えてくれ。」
ズバリと訊くと、卯ノ花は困ったような顔をした。

「一度、精密検査を受けた方がいいのか?」
続けると、「いえ・・本当に特に異変があるというわけではないのです。恐らく精密検査をしたとしても、身長が伸びない理由は出てこないと思われます。」
「俺たちは、一番戦うに最適だと思われる身体年齢で、成長が止まる。そうだな?卯ノ花隊長。」
「ええ・・一般的にはそう言われています。」
「ということは、この状態が俺にとって最も戦うに最適というわけなのか?」
「それは違うと思います。
日番谷隊長は今の段階でも素晴らしい能力をお持ちですが、身体的な未発達のために、本来の力を出せていないこともありますし・・。
これから成長があって然るべきだと思います。」

卯ノ花は実に的確な意見を言う。
「では、なぜ俺の背は伸びない。」聞くと、卯ノ花はまた困ったような顔をした。

「・・そうですね・・。個人差があるというのはありますが・・。
日番谷隊長の大き過ぎる霊圧と、その肉体のかい離がもしかして、影響しているのかもしれません・・。
ですが、必ずこれからも成長すると私は考えております。
死神としての能力は隊長になられた後も伸びておられますし、何時の日かいきなり伸びるという事もありうるかもしれません。
ですが、今の段階ではなんとも・・・。」

「そうか。」「すみません、あまりお役に立てなくて。」「いや、こちらこそすまなかった。」

やはり、理由は解らず・・か。ある程度予想していたとはいえ、どこかで落胆する自分を感じていた。


・・・まるで氷漬けにされた新芽みてえだな。俺の背は。
ふとそう思ってハッとした。
俺の斬魄刀は氷系だ。冬みてえなガキだとさんざん言われてきた。

もしかして、斬魄刀の能力と関係があるのか・・?
氷系の斬魄刀。そう言えば、朽木の妹は氷系の筈だ。
そういえば・・朽木ルキアもあまり成長はよくないように見える。←自分のことを棚に上げたらしい(笑)。

・・無いとも言えねえな・・。

だが、卯ノ花も言ったように、俺はいつかは背も普通に伸びるはずだ。
氷づけにされた新芽が氷が無くなったとたん、一気に芽吹くように。

・・はじけるように。一気に枝が張るように。

俺の背にもいつかは春が来るはずだ。


・・・まあ、いつかは解らんが。

・・・・いつだよ、その時は・・。


・・くそ・・っ。


早く来いよ、春。






なんちゃって。
 

 

inserted by FC2 system