子供の遊び(浮竹十四郎)

京楽に言わせると、どうも俺は相当な子供好きらしい。

確かに子供は好きでね。
俺が8人兄弟の一番上だったからかもしれないが、どうしても子供を見ると声をかけてしまうんだ。
まあ8人もいれば、末っ子のヤツはまだ子供みたいなものだからな。
気付けば、うちの兄弟と比較してしまっている。
子供はいい。
元気そうに走り回ってるのを見ると、心がなんだか安らぐものだ。

・・・子供が当然のように、子供らしくいられる世界。

それが俺の理想だ。

だが、現実はそうじゃない。
まだ年端もいかない子供のまま、実力さえあれば護廷隊に入隊することは、もう珍しくもなくなった。
実際、子供だが立派に死神として頑張っている子たちも多くいる。

その筆頭が日番谷隊長だろう。
あの年齢で、あそこまで死神として能力を持っていることは正直凄いことだ。
日番谷隊長もあまり子供らしい所は見せない。人格も出来た男だ。

だが・・・それでも俺は出来れば彼くらいの子供は戦場に出るべきではないと思っている。
尤も今の護廷十三隊の状況ではそんな事は言ってられないのだが。

藍染との決戦。
空座町のダミーで、破面の子供を見かけたんだ。
それも女の子でね。顔もまだあどけない所が残っていた。
十刃の従属官として来てるみたいだが・・・。

明らかにその子は他のどの破面よりも未熟だった。
何故こんな子がこんな決戦の場に居るのか。
こんな決戦の地で、こんな子供がどうなるかくらいは容易に想像出来るだろう?

それは連れている男も解っているはずだ。
俺が質問する前に京楽も同じ事を思ったのだろう。
十刃の男に、その子を戦いから外すように言ったんだ。

戦いで一番の被害を被るのは、子供や女性だ。
そして、その子はそのどちらでもあった。
こんな戦いに出るべき存在じゃない。
この場に居るべき存在ですらないんだ。

だが、十刃は断った。反対に、他の戦いが終わるまで適当に時間を潰さないかと俺たちに持ちかけた。
本気なのかどうなのかは分からないが、どうやら戦うのを避けているようだ。

その通りだ。
避けられる戦いなら、戦いなんてするべきじゃない。

・・だが、この戦いは避けられない戦いだ。

十刃の方は京楽が相手をするようだ。
・・・解ってるよ、京楽。
久しぶりにそんなにやる気を見せてるお前の相手を、奪りゃしないさ。

俺とその子は京楽と十刃との戦いを見届けるようになった訳だが・・。
その子とのやり取りで、どうも怒らせてしまったみたいなんだ。

俺は諭していたつもりだったんだが、どうも機嫌を損ねてしまったようでね。
怒ったその子を見て、不意に妹を思い出してしまったよ。
あ、8人兄弟のうち、二人は妹でね。
ハハハ・・昔、「いつまでも子供扱いしないで!」と叱られた時を思い出してしまった。

それが困った事に、その子は刀を抜いてしまってね。
どうやら俺と戦う気のようなんだが・・・。
それはどうみても自殺行為だった。
そしてもっと危険なのは、俺の実力すら測れないその未熟さだ。

戦いは子供の遊びじゃない。
凄惨で、とても子供が見るべきものなんじゃない。
ましてや、参加するべきじゃない。

自分の実力も、そして相手の実力すら測れない子が、戦いで生き残れると思うかい?

どうやったら、この子を家に帰らせられるだろう。
京楽の事を心配して俺に加勢を勧めるくらいだ。
この子は優しい。
破面とはいえ、まだ更生出来る筈だ。死ぬべきじゃない。

どうやったら解ってもらえるだろう。
この子には刀なんて似合わない。
毬で大はしゃぎして遊んでいる姿の方がどんなにずっと似合うだろう。

そんな子と戦うなど俺には出来ない。



頼むから、子供は戦いではなく、子供の遊びで健やかに育ってくれ。




なんちゃって。
 

 

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