パンドラ・ボックス(浦原喜助)
「人は皆何かしらすべきことをする為に、生を受けるのだ。」なんて言う人がいましたっけ。
だったら、アタシは・・・一体何の役割があるって言うんでしょうかねえ。
いやね?時々思うんスよ。
浦原喜助と言う男ってのは・・
・・まるでパンドラの箱みたいな男だってねえ。
好奇心は昔から強い方でした。
それで、新しい物を作るのが好きでしてね?
ちょっとこういうの在ったら面白いんじゃないかなんて思いついちゃったら、次にはそれを作ってました。
それが何のためになるのかなんて、正直考えてはいなかったスね。
ましてや、自分が作った物がどういう影響を及ぼすかなんて、欠けらも考えちゃいませんでした。
ただ自分の好奇心の赴くままに。
それが使えるものであればよし、使えなくてもよし。
アタシは確かに変人でした。
けど、たまにはそんな変人てのが居てもいいんじゃないスかねえ。
皆が皆、同じ様なじゃつまらない。そう思いませんか?
流石に席官の数字が上にあがっていくにつれ、一応ひと様の為になるような発明も考えなきゃなんないとは思うようにはなったんですよ?これでも。
けど、それはあくまで好奇心の延長でしかない。
まあアタシは所詮、その程度の男って訳です。
そしてアタシの好奇心の産物たちはどんどん増え続け、やがて尸魂界を混乱に陥れる程になってしまった。
藍染惣右介はアタシの作った崩玉を手に入れるために、四十六室を全滅させ尸魂界に未だ癒えない大きな傷を作っていきました。
アタシの好奇心の産物が、他の人から狙われる時が来るなんて、イヤな時代になりましたねえ。
アタシの好奇心の産物は、使い方を誤ればとんでもないことになる。
だからこそ、保管には十分気をつけなくちゃならない。
開けてはいけないパンドラの箱のように。
だけど、その箱は開けられてしまいました。
藍染の手によってね。
途端に混乱と恐怖、怒りと絶望が尸魂界に飛び散ってしまいました。
そして、それはほんの序章にすぎません。
開かれたパンドラの箱の底に残ったのは一つ。
ちっちゃな「希望」だけっス。
アタシが研究することはまたパンドラの箱に新しい中身を入れることに他ならない。
だから、研究をしないという手ももあるわけっス。
だけど、そんなんじゃ終われません。
この際だ。とことん箱の中身を増やしてやろうじゃないですか。
それがまた新しい災厄にならない保証はどこにもありません。
けど、何も無かった頃にはもう戻れないんス。
アタシはこの道を行くと決めました。
だから、決めた以上は責任を取らなきゃいけませんよねえ。
少なくとも崩玉はアタシがなんとかしませんと。
事態は深刻です。
けど、アタシは心のどこかでこの状況を好奇心をもって見ている自分が居るんス。
開けてはいけない筈のパンドラの箱。
それを開けさせてしまったのも、そういや好奇心てやつでしたっけ。
全くアタシはとことん困った男ですねえ。
「店長!ケーキのろうそく点いてるんだぜ?!
何ぼんやりしてんだよ!
早く消せよ!こんなんじゃ何時になっても食えねえじゃねえか!」
「ジン太くん、そんな言い方・・。」
「あ?ああ、スミマセンねえ。」
「何やら思案することでもありましたかな?店長。」
「いや、大したことは無いんスよー。じゃ、消しますよ、フー!」
「誕生日おめでとう店長!大晦日ではた迷惑な誕生日だけど、この際ケーキで許してやるぜ!」
「・ジン太くん。あ、お誕生日おめでとうございます。浦原さん。」
「おめでとうございます。店長。またひとつ年を重ねられましたな。」
「いやあ〜〜、どうもっス〜〜!ますます色男に磨きをかけまくりますよ〜〜。」
「ヘイヘイ。」
「では不肖の私が、ケーキを切り分けましょう。」
「あ、俺らは子供だから大きいのにしてくれよ?」
「均等に切らせていただきます。」
「え〜〜?!」
「均等に切らせていただきます。」
「可愛らしい子供に譲ってやるって気はねえのかよ!」
「均等に切らせていただきます。先ほどから聞いておりましたが、いったい誰の事を”可愛らしい子供”などと言われておられるのですかな?」
「・・・ちぇっ。」
勝負はついたようっスね。
鉄斎サンとも長い付き合いになりましたっけ。
皆、こんなアタシによく付いてきてくれてますよ。
「では、店長はこれを。」「どうもっス〜。じゃ、いただきましょうかねえ。」
「いただきまーす!」
こんなアタシにも誕生日を祝ってくれる人がいるってのは嬉しいもんスね〜。
パンドラの箱に残ったもの。
希望ってのはこう言うもんなのかもしれませんねえ。
「・・・おぬしら、儂のケーキはどうした。」
「夜一さん!!帰ってらしたんですか?!!!」
「何じゃ、その顔は。帰ってきたらマズイとばかりの顔じゃのう。
で?儂の分のケーキはあるのじゃろうのう?」
「・・・・。」
・・・あ、今のやっぱりナシと言う事で。
なんちゃって。