副官の条件(藍染惣右介)
・・・僕は自分が持つ、観察眼と判断力を今まで疑ったことはない。
客観的な観察眼は、天に立つ者の持つべき絶対条件だと考えているからだ。
私情に惑わされない観察眼と、冷徹な判断力。
・・しかし、自分では完璧だと考えていたとしても、僅かなズレが生じることもある。
そして、その僅かだったズレが、最終的に自らを滅ぼす元に生りうることも僕は知っている。
どうしても、外部からの判断が必要なのだよ。
それも、その外部からの目は、いつ何時も何物にも囚われない者の目でなくてはならない。
・・・僕に心酔してしまうような者の目であってはならないのだ。
何物にも囚われず、僕を観察することの出来る力。
・・・・それが僕が副官に求める真の能力なんだよ。
自分の手足となって働く者など、いくらでも作ることが出来る。
しかし、僕の傍にいながら、僕に心酔しない者はなかなか居ないものだ。
その能力を持つ者。
・・・それが市丸ギンだ。
彼は、退屈を嫌う。
そして囚われることも嫌う。
僕の副官として十分な戦闘力を有し、僕の傍にいながらも彼の態度が変わる事はない。
まさしく、僕の副官たる必要条件を備えていると言うわけだ。
しかし、僕にとって危険な存在になりうることも分かっている。
僕が天に立ちうる存在ではなくなった時、若しくは彼の能力が僕を超えると彼自身が判断した時・・・。
ギンは僕に剣を向けるだろう。
恐らく迷いはないはずだ。
・・・それでいい。
・・実に愉快じゃないか。
彼が僕に剣を向けるときは、僕が天に立つ資格を失った時だと明確に分かる。
もちろん、その時になれば僕もむざむざと命を差し出す筈もないけどね。
だが、一つの指標になることは確かだろう。
ギンは掴みどころがない男だ。
正確に言えば、掴ませないようにしている男だろう。
彼を完全に理解することが出来る者がいるとすれば・・・。
ギンはその者に敗北したことになるだろうね。
それが僕かどうかなどは、気にはしない。
僕にとって、それがあまり意味のあることではないからだ。
彼が、僕を観察しうる能力を持ち続けること。
それが、僕が彼に求めるものなのだから。
さあ、ギン。
見せてやろう。
私が天に立つ様を。
君は後ろで見ていたまえ。
・・・ああ。刀に手はかけたままでいいよ。そのままでいい。
少しばかり緊張感があったほうが、楽しめるというものだろう?
・・・・君は、刀に手をかけたまま・・。
・・・・僕の後ろを歩むがいい。
なんちゃって。