副隊長しつけ勝負(三番隊VS五番隊)

死神たちにもたまには温泉で親睦を深めるということはある。
普段忙しくしていて、隊長副隊長クラスになれば、山じいの招集でもない限りは一同に会することはない。

ま、たまには仕事じゃなくて、温泉にゆっくり浸かって、みんなで宴会でもしましょうや、というのがあってもいいだろう。

さて、ソウルソサエティのとある温泉。
ここに護廷十三隊の全隊長および副隊長が集結した。

ここは、最大の露天風呂は男女入れ替え制だ。

まずは男性の入湯時間で汗を流した、死神たちはそれぞれ思い思いの過ごし方を楽しんでいる。

そこのバーカウンターに二人の男がいた。
三番隊隊長の市丸ギンと、五番隊隊長の藍染惣右介。
珍しく二人で飲んでいる。

「・・いよいよですなあ。」
「・・そうだね。」
「やっと、面ろいもんが見れますわ。楽しみやなあ。」
「相変わらずだね、市丸は。ところで・・・躾は済んでいるかい?」
「ええ、もうばっちり。いつでも、行けますわ。」
彼らが、『行動』に移ったときに、副隊長が意のままに動くようにしておくこと。
それを彼らは『しつけ』と称している。
「自信があるようだね。」
「なんなら、おたくの副隊長さんと勝負してもええですよ?何賭けましょうか。」
「勝負か・・・。それも悪くはないね。そうだな・・・ここの呑み代でも賭けるとしようか。」
「その話、乗りましょ。」

さて、勝負の内容は、それぞれの副隊長に風呂に入るついでに、隊長の忘れ物を取って来させるというものだ。
大露天風呂は、男女入れ替えの時間制。
惣さまの忘れ物は、入れ替え時間が過ぎたという理由で、雛森に取って来させる。

ポイントは、イヅルと雛森を同じ時間に大露天風呂に行かせる事だ。
どちらも、羞恥心は強いタイプだ。
同じ風呂で異性を見ながらも、隊長の忘れ物を無事取ってこられるのか。
これが勝負の分かれ目だ。
無論、風呂には雛森とイヅルの二人だけにしなければならない。

「さて、どうやってその状況を作るかやけど・・。」
「それは心配ない。・・・僕の能力は知っているだろう?」
さて、イヅルと雛森以外には「只今、大露天風呂故障中」の立て札が見えるようにした惣さま。
芸は細かく、雛森とイヅルには自分の性別の入浴時間であることの立て札まで見えるようにしています。

まずは雛森。
「え?忘れ物?」
「そうなんだ。部屋の鍵を忘れてね。露天風呂のほうに置いてきてしまったんだ。僕はここでまだ暫く呑んでいるから、風呂に入ったついでに取って来てくれないか?」
「分かりました!!」

そして、先に風呂に消えていく雛森。

「え?鍵をですか?」
「そうなんや。ボクはここで呑んでるさかい、悪いけど風呂に入ったついでに取ってきてくれへんかな。」
「もちろんです。」
「ああ、急がんでええで?ゆっくりしいや?」


さて、イヅルもまた風呂に消える。


そして、5分後・・・。
「うわ〜〜〜〜〜〜!!!!!」
叫びながら、惣さまとギンのいるバーカウンターを全速力で通過するイヅルがいた。
混乱のさなかにも、浴衣を引っ掛けることは忘れなかったらしい(笑)。
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・フッ。」


その10分後。

「あ・・あの。藍染隊長・・。今吉良君が・・。」

と困惑しつつ、しっかり鍵を持ってきた雛森が現れた。
イヅルを見て悲鳴を上げはしたが、しっかり身支度を整えて風呂を出る雛森。
この勝負、完全に五番隊の勝利だった。(笑)

「有難う、雛森君。よくやってくれたね。」
べた褒めする惣さま。

横には珍しく、つまらなそうな顔のギンがいた。
そして雛森が去った後。

「しゃあない。ボクの負けですわ。今日はおごらせてもらいましょ。どんどん呑んでください。」
「・・いや、僕はもういい。そろそろ失礼するよ。遠慮なくここはご馳走になろう。では先に失礼する。」

席を立つ惣さま。

「ボクのおごりと決まった途端、帰りよったな?
・・ホンマ、くえんオッサンや。
あ、お姉さん、御銚子20本ちょうだい。ああ、今からまた連れが来るんや。心配ない。」

一方、お使いが出来なかったイヅル・・・。’

「僕は・・・最低だ・・・!!雛森君を見てしまっただけでなく、市丸隊長の忘れ物すら取れないだなんて・・・!!」

呟きつつ、ギンの元に向かうイヅル・・。

この後、彼は上司に浴びるほど酒を一気させられるのであった・・・。


「僕は・・僕は最低だ〜〜〜〜〜!!!」
酔っ払って連呼するイヅル。

心配するな、最低なのは君じゃない。
ブラックな隊長たちだ!!

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