家なき子(猿柿ひよ里)
うちらは「ヴァイザード」。
仮面の軍勢言われてんのは知ってるやろ?
まあ、元死神が禁術を使こて虚の能力を手に入れた連中の事や。
「ヴァイザード」やで!
えらい大層な名前つけたもんやのォ!
・・何が「ヴァイザード」やねん・・。
・・・うちら・・ただの帰るとこ無い・・ただの家無し子やんけ・・・。
強よなりたい言うんは、死神やったら誰でも思う事や。
うちもそう。
死神やった時かて、必死で鍛錬してたんやで?誰にも負けんくらいに。
そやけど・・・それまでの自分の実力ではどうにもこうにもならん時があって・・・
・・・それで、禁呪に手ェ出したんや。
皆が死んでくのを、もう見てられへんかった。
自分に力が無いんが許せんかった。
「がしんたれが!」て自分に死ぬほど言うたもんや。
力が手に入る方法があるて知った時は、小踊りしたもんや。
自分が死ぬかもしれへんけど・・それでも力が手に入るかも知れへんいうなら・・何でもしたかった。
それで、禁呪使こた。
禁呪は成功した。虚の力が発症したんや。うちは喜んだ。けど・・その後で死ぬかと思た。
真二は言うた。
内なる虚との内在闘争を経て虚化を会得できへんかったら、うちを殺すて。
何言うとるねん、このハゲ!思たけど・・ホンマに死ぬか思た。
まあ、そんなこんなで何とか、虚化することが出来るようになって、散々うちらを懲らしめてた虚を倒しに戻った。
楽勝やった。こんなんにうちら、やられてたんかて思うくらいに楽勝やった。
嬉しかった。これで、みんな助かったんやて。
それで、皆の方を振り返ったら・・・皆の表情が一変してたんや。
それでも、最初の方は虚を倒してくれて有難うていうてたんやけど・・そんなんは長く続かへん。
仲間がうち見る顔は、前みたいにはならへんかった。バケモノや。うちはただのバケモノでしかなかった。
ちょっと平和になったら直ぐにうちの居場所は無くなった。明らかに別次元の強さのうちが邪魔になったんや。禁呪使た罪で、うちは直ぐに尺魂界から放り出された。
使えるときは使て、要らんようになったらポイや。
ホンマ・・ムカつくのォ。
・・・うちは・・アンタらの仲間ちゃうんかい・・。
アンタらの為に戦ったうちは・アンタらの仲間とは言えんのかい。
そうか・・ただのバケモノでしかないんか・・。そういう事か。
放り出されたうちは、現世で人間に紛れて最初は暮らしてた。
けど、直ぐにいじめの対象になった。なんかが、違うみたいや。人間とうちとでは。
人間のいじめ言うんはエゲつないのォ。
相手が、反撃してこん思たら、どんどんエスカレートした。
住んでたアパートにまで火ィつけられた。
霊力や無いくせに、うちが不気味やと思うらしい。
それで、うちを排除しようとしてきた。
そしたら、虚圏でもいこか思たら・・藍染とかいうハゲがもうしっかり手ェつけてた。
・・うち・・もう何処にも行くところない。
「・・行くとこ無いなら、オレんとこ来い。」
そんなうちに声かけて来たんは真二やった。
平子はうちが禁呪使う前から、声掛けてた。けど、うちはそれを断った。
行くとこくらい自分で見つけるて思てた。けど、真二はうちがこうなることを解ってたんや。
・・悔しいのォ・このハゲが。
「・・アンタの嫁になる気は無いで?」悔し紛れに憎くまれ口の一つも叩いたるわ。
「誰がお前みたいなガキ嫁に取るか。アホちゃうかって・・イテ〜〜!!!なんすんねん!!」
「やかましわ!!ここは一発シバくところやろが!」
「誰が突っかけでシバけ言うたんや!」
「じゃかーしい!シバきの基本は突っかけじゃ!ボケ!!」
そんで連れて行かれたのは小汚いアジトや。
平子の他に六人おった。
何も言わんけどうちみたいに、行く所の無い元死神たち言うわけや。
うちらは・・何処にも行くとこが無い。
虚圏にも、尺魂界にも・・そして現世でも。
見つからんように、騒ぎにならんように身を隠して過ごす毎日や。
うちら・・いつか堂々とお天とさんの光の下で、堂々と歩ける日が来るんやろか。
真二は必ず作ったるいうてるけど。
そやから、仲間の数増やすのが重要やて言うてる。
めんどくさいわ。町一つくらい、人間殺して乗っ取ったかて、エエやん。
そう言うたら、真二にいつも窘められてる。
それやったら終いやて。
うちら・・そんなにコソコソせないあかん存在なんかな・・。
・・・うち・・虚やキライや。
・・・人間もキライや・・・。
・・・死神かて・・キライ・・。
うちらには帰る家やないで。堂々と大手を振って帰れる家や。
そないな家の無い奴の集まりが、うちら言うわけや。
・・うちらは力を求めてその力を得て・・・。
・・その代償に帰る家を無くしたモン達や。
その集まりが・・・・ヴァイザードなんやで?
どや?笑える話やろ?
なんちゃって