イジメのペスキス(ギンとグリムジョー)

『藍染サマから面白い事を聞いたんやけどなァ。
・・グリムジョー。
あの子、刀剣解放したらエライ可愛い格好になるんやて?
普段のあの子は性格は可愛らしいトコあるんやけど、ゴツすぎてあんまりボクのイジメたいタイプやなかったんやけど・・・。

そんな面白そうな事聞いてもうたら、ちょっとそんな気になってまうのも仕方ないやろ?
・・なァ?』


虚圏に渡った元死神の3名はそれぞれ異なる探査神経(ペスキス)を有している。
元九番隊隊長、東仙要は「規律ペスキス」。←(笑)
虚圏の王となった元五番隊隊長、藍染惣右介は前髪(?)での「ハーレムペスキス」を・・。←ていうか、オイラのいじりの中だけやんけ!

そして・・・元三番隊隊長、市丸ギンは「イジメのペスキス」を有している。

藍染がハーレムの王様なら、東仙は虚圏の風紀委員長、ギンはドSの王子様といったところだろうか。
・・話が元に戻そう。

市丸ギンは自他ともに認めるドSだが、何でもかでも苛めたいというわけではない。
いや、何でもかでもいじめるのは苛めるのだが←(笑)、苛める対象には当然、ギンも好みという物がある。

まず第一に内面に可愛げがあること。
誰からも分かりやすい可愛げのある性格の子はもちろん、ホントは弱いのに必死で隠そうと一生懸命になっている子も大好物だ。
強がっている仮面を無理やり剥ぎ取ってやる快感は、ドSのギンからするとたまらんらしい。

グリムジョーはこの意味では、十分ギンの守備範囲に入りそうなものなのだが、次の事項に今までは抵触していた。


第二に、見た目も可愛げがあること。
ギンはいじめのグルメである。やっぱり苛める相手が可愛くないと、テンションは上がらないものだ。
グリムジョーは、この第二項に抵触していた。
苛めやすい性格はしているが、あのガタイだ。しかも、自分が傷つくことには抵抗感は殆どないタイプである。
いじめっ子としては、ちとつまらない。

しかし、帰刃(レスレクシオン)の事を聞いて気が変ったのである。
帰刃(レスレクシオン)とは、刀剣解放する事により、破面としての肉体に虚本来の攻撃能力を回帰させ、破面の真の姿と能力を解放することだ。

そして、グリムジョーは刀剣解放すると、豹の属性を持つらしい。
そして、その姿は可愛らしいネコ系のおみみがついているのだそうな。
足はそのまま豹としての形状が残っているという。

おみみと猫足・・・これにギンのいじめペスキスが反応した。
「・・見たいなァ。
そんなん言われたら、誰でも見たい思うやろ?」

だが、グリムジョーの事だ。
何時もは帰刃したくて、うずうずしているが、じゃあ見せてくれというと、絶対見せないというに違いない。

しかしそこを見せさせるのが、ドSの王子様、市丸ギンの腕の見せ所なのである。

「グリムジョーちゃん、ご機嫌いかが?」
話しかけられたグリムジョーの眉がつり上がった。
普段は話しかけもしない、ギンが機嫌よく声をかけてきたのだ。
警戒するのは当然だろう。

「何の用だ、市丸。」
「おやまあ、相変わらずやねえ。ただ挨拶しただけやのに。」
「何の用だって訊いてんだよ。」

流石にヤンキーな性格をしているだけの事はある。
いや、先に威嚇するところなどはネコ目の性格なのかもしれない。

「キミの帰刃がえらい可愛らしい姿になるて聞いたんで、見せてもらいに。」
「・・・あァ?
何で俺がてめえに戦闘時でもねえのに、帰刃して見せなきゃなんねえんだよ。」
「ええやん。キミいつも帰刃したがってるし。この際見せてもろても。

それとも・・もしかして自信が無いのん?キミのホントの姿のこと。」

軽い挑発だ。しかし、それを軽く受け流す事など、グリムジョーの辞書にはない。
「・・・帰刃して、てめえを倒してもいいってんなら、やってやってもいいぜ?」
喧嘩上等、売られた喧嘩どころか、売られて無い喧嘩でもこちらから売りに行く性格だ。
不穏な雰囲気を滲ませ、凄んでくる。

一方ギンは表情一つ変えずに、ひょうきんさすら滲ませてそれに返す。
「そりゃ、怖い。けど無理やわ。」
「あァ?何がムリだってんだ。」
「どうあがいたかてキミにボクは倒せへんもん。キミがいくら可愛い耳やしっぽ出したかて、ボクには勝てへんで?」
「・・・なんだと、てめえ・・。」

「・・・イヤやなあ。
・・・あの藍染サマが、十刃にも負けるような実力のモンを側近にするて、本気で思てんの?」

口調も何も変わらない。ただ何所かで背筋が寒い。それが何かも分らない。
ただ、危険をグリムジョーの本能が告げている。
目の前に居る男が危険だと。
『・・・こいつ・・。』

得体が知れない男だ。
実力も、その考えてることも、得体が知れない。
思わず身構えるグリムジョーに、ギンが手をひらひらと振って続けた。

「・・て、こんな話しに来たん違うんやった。
キミの刀剣解放した姿の事やった。

まあ、ボクも素直にキミが見せてくれるとは思ってなかったんやけど。」

「・・で?今度はてめえが腕づくで俺に帰刃させようってのか?」
何時でも戦闘態勢に入れるように構えは解かないグリムジョー。

「そないな無粋なことせえへんよ。

もっと仲良うしてくれへんかなァ。
ほら、これキミへのプレゼントも持ってきたんやで?ほら。」

ひょいとギンがグリムジョーに何かを投げる。
片手で受け取ったグリムジョー。
しかし、ギンがプレゼントと言って投げてきたのは細長いものだ。
巻いている布を外すとそれは唯の木の棒にしか見えない。

「あァ?プレゼントだ?唯の棒きれだろうが。
これのどこ・・が・・・?・・・な・・・なんだ・・・これ・・は・・・」

力が入らない。
まるで糸の切れた操り人形のように床に崩れ落ちる。
体と思考が出鱈目な高揚を叫んでいる。全ての集中がたった一本の棒きれに集まっている。

これは唯の木の棒ではない。

「て・・め・・・ぇっ・・。何・・しやが・・った・・!」
視線すらギンに合わせられない。木の棒から外したくとも視線が外れないのだ。
そんなグリムジョーを面白そうにギンが眺める。

「おやまあ、ホンマに効いたみたいやねえ。そやけど、こんなに効くとは思わへんかったけど。
流石は豹の王様て言われるだけの事はあるようやねえ。」

「何した・・・て・・訊いて・・・るんだよ!!」
「何も。キミの言うように唯、木の棒を渡しただけや。」
「嘘・・言う・・・ん・・じゃ・・ねえ!!」
「ホンマや。それはただの木の棒なんやで?

ただ・・・マタタビの木の棒いうだけや。」

「マタ・・タビ・・だと・・?」

「そう。カワイイネコちゃんの人気No.1アイテム、マタタビや。
同じネコ科やから、効くか思てやってみたんやけど・・。

こちらが思てた以上に喜んでもらえたみたいで、ボクも嬉しいわ。」

「ふざけ・・やが・・・て」
「ほな、グリムジョーちゃん、ボクに帰刃して見せてくれる?」
「誰が・・!」
「・・ホンマに言う事聞かん子やねえ。

あんまり言う事聞かんようやったら・・・。
大事な虚の穴の中でそのマタタビ燃やしてまうで?
燃やしたら、もっと効くらしいし。

今でさえ、その様や。さぞかしおもろい事になるやろなァ。

あァ、ええこと思いついた。
それでそのままボクと一緒に虚夜宮散歩でもしよか?
キミのお仲間が今のキミの姿見たらどう思うか、やってみるもの一興や。」

「な・・・!てめ・・・!」

グリムジョーの視線はまだマタタビの棒きれから外れない。
そんなグリムジョーの上に屈みこみ、その耳元で殊更優しげな口調で囁いた。

「・・・もう一度だけ言おか。

帰刃・・してくれるやろ?・・なァ。グリムジョーちゃん?」


「く・・・そ・・・・っ!」

グリムジョーがその後、どのような行動を取ったのかは解らない。


ただ、その後ギンが藍染にこう言っている。

「藍染サマの言うとおりでしたわ。
エライ可愛い姿でしたわ。あの子。」

それだけで、藍染は何があったのかわかったようだ。

「・・上機嫌のようだね。

・・愉しめたかい?」

「そらもう、久しぶりに。」
「それは良かった。」


久々に、「イジメのペスキス」を全開にしたギンは、本人の言うとおりまさしく上機嫌のようだった。


そして・・・彼の気の毒な被害者には心から哀悼の意を示したいところである。





なんちゃって。

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