何処に取るや、戦いの場(更木隊)

隊長の更木が自ら連れ戻しに行った、現世派遣隊の一員、一角と弓親は表上は大人しく隊に戻っている。
破面と実際の戦闘経験がある彼らは、データ収集の引っ張りだことなっていた。

何故なら、第一回目の破面の戦闘においては、あまりの戦闘の激しさに用意されていた観測装置は、殆ど破壊され、取れたデータはほとんど存在しない有様だった。

これは、尺魂界が当初予測していたよりも、遙かに破面の力が凄まじいものであったことを意味している。
第二回目の襲来の時には、その反省を踏まえて、観測装置の増強が図られたため、ある程度のデータ取得には成功をおさめた。

しかしながら、十分なデータとはお世辞にも言える状況では無かったため、現世派遣隊は口頭での聞き取り作業に時間を拘束されるという羽目になっていた。

その中でも最も非協力的なのが一角だ。
根掘り葉掘り、技術開発局の者から聞かれるのだが、「結構強かった」だの、「パンチは効いたな。奥歯が2本やられたからな。」だのと答えるだけで、より具体的な話がまったく出てこないという有様だった。

それならと、見ていた筈の弓親に同様の質問が投げかけられるのだが、弓親の方ものらりくらりと話をかわす状態が続いていた。

そして、最後には技術開発局の現局長、涅マユリに「君たちはやる気があるのかネ!」とがっつり叱られて、「ふん!今日はもう時間の無駄だヨ!また明日君たちは来たまえ!」と放り出されて十一番隊に戻るという毎日だった。

マユリからは部下の非協力的な態度を非難するコメントが剣八に伝えられたのだが、肝心の剣八は馬耳東風と言った感じだった。
剣八からも一角らに破面について聞くようなことはしない。
必要なら、向こうの方から言ってくるはずだからだ。

だが、剣八は一角及び弓親が現世から帰って表情が変わっていることに気付いている。
破面の戦いは終わっても、奴らの中では終わっていない。
いまだ戦いは奴らの中では続いているのだ。

戦いの中でしか見られない、緊張感と興奮。
命をかけた者にしか味わえない、楽しさ。

奴らの表情からはそれがにじみ出ている。

『・・つまりは・・それだけ向こうが強えってことか。

・・・おもしれえじゃねえか。』

剣八も感じ取っている。戦いが近いことを。
踊りだしたくなるほどの喜びが近いことを。

そんな折。
一角たちと呑んだ。

いつもは煩い二人だが、今日は言葉数が少ない。

「・・隊長。」
「なんだ、一角。」
「一護のやつ・・大人しくしてますかね。」
「しねえな。」

即答した剣八。

「破面は・・強いですよ。」
「みてえだな。結構なことだ。こっちも楽しめるからな。」
「俺たちは、尺魂界でずっと待ってなきゃいけないんですかね。」
「少なくとも山本のじいさんはそう思ってるな。」
「藍染さんが攻めてくるのを、待つんですよね。」

「お前の言いてえことは分かる。
そんなのは、俺達十一番隊のガラじゃねえって言いたいんだろ?」
「・・・そうです。」
「やっぱり、僕たち十一番隊は攻めの姿勢を意識した隊ですから。ねえ、一角?」
弓親の言葉にうなずく一角。

「隊長が色々なしがらみがあることも知ってます。
けど、隊長は隊長のやりたいようにやって欲しいと俺は思ってます。
そして、俺はその隊長の下した結論がどんなであろうとも、隊長の下で戦うって決めてる。

俺は十一番隊に所属してるなんて思ったことは唯の一度も無いんス。

俺は所属しているのは・・更木隊ですからね。

俺たちの事なんて、隊長は考えなくてもいい。
隊長が進む方向に俺たちが付いて行くだけだ。

だから、隊長は行きたい道に行ってください。」

「奇遇だね、一角。僕も同じことを言おうと思ってたところさ。」

剣八に2対の決意を表す眼差しが向けられる。
たとえ、護廷十三隊の決定を裏切るような結果になっても、ついてくるという決意のまなざしだ。

「・・・ち、下らねえ気を回しやがって。」


・・・護廷十三隊、十一番隊隊長。


それが剣八の肩書だ。
だがそんな物に意味は無い。

何故自分は、死神になろうと思ったのか。
何故自分は、隊長になろうと思ったのか。


・・・戦いを求めて。


・・そこに目指す道はある。

・・・そして戦いは近い。


問題は・・・『何処で』戦うか・・・そのことのみである。






なんちゃって。


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