感謝の言の葉(黒崎一護)
・・・あんまり俺は喋るのは得意じゃねえ。
なんつーか・・自分の考えを上手く伝えるのって、難しくねえ?
こっちはそんな風に思ってもねえのに、向こうは全然違うように取ったりしてよ。
「そんなつもりじゃねえ」つってんのに、それさえ上手く伝えられねえ時もある。
それでも俺らの周りには、常に色んな言葉が飛び交ってる。
ダチとの会話にも、家族との会話にも、教科書どころか、マンガにいたるまで、全部言葉だらけだ。
そんなに言葉だらけなのに、上手く使えねえ。
だから、俺はついつい行動で済ませちまう事が多い。
ダチのチャドも似たようなタイプだ。
つうか、俺よりも更にしゃべらねえ。
・・けど・・チャドの言葉は重い。
言葉の少ねえ奴だからこそ、出てきた言葉に重みがあるんだよな。
たぶん、自分の言葉に責任を感じているからこそ、そうなんだと思う。
俺は毎日色んな言葉を放っている。
放たれた言葉は、時には誰かを傷つける。
その傷は見えねえ。だけど・・痛え。
その傷を言葉で治すことも、出来っけど、一つの言葉で出来た傷は一つの言葉では治らねえ。
100も200もかかって治るかどうか・・いや・・たぶん殆どは治らねえかもな。
そのためには、その言葉が本当に信じれることであることを示さなきゃなんねえ。
それは行動によって示すしかねえだろ?
傷つけられたヤツは、行動と言葉がセットになっているのを見て、初めて俺の言葉を信用する気になるんだと思う。
特に俺は喋るのが得意じゃねえから、絶対に行動でその不足分を足してやんねえといけねえし。
だからっつー訳じゃねえが、俺はどうも突っ走っちまうことが多い。
それが、仲間を逆に傷つけていることさえ、知らなかったんだ。
チャドは強くなっていた。
手加減してても、受ければ分かる。
・・チャドは強くなっていた。
「俺達を信じろ。
一人で背負うな。
その為の仲間だ・・!」
・・・スゲエよな。
・・・こんなスゲエ言葉を出せるんだぜ?
・・・こんなにスゲエ言葉を出せるヤツが、俺の仲間にいるんだぜ?
・・なあ、俺はなんて言やいいんだ?
上手く伝えられる言葉を俺は持ってねえんだ。
この思いを。
・・・チャドにも石田にもまだ礼すら言ってねえ。
ゴメンな?チャド、石田。
頼むから宿題にさせてくれよ。
井上を取り戻して、無事に現世に戻った時までの。
一緒に来てくれ。
また俺と一緒に戦ってくれ。
そんで・・また皆で現世へ戻ろうぜ?
皆で笑って帰るんだ。
オマエたちがいるっていうことに、ホントにホントに感謝してる。
そんで、現世に戻った時にちゃんと礼を言わせてくれねえか?
今はろくな言葉が浮かばねえし、その時になっても気の利いた言葉が出てくるかどうかなんて、分からねえけど。
それでも、つたない言葉に力を篭める事は出来っだろ?
その為に俺自身がこの戦いで強くなってやる。
行こう!チャド!石田!!
今は心の中だけで呟かせてくれ。
「・・アリガトな・・。」
・・・宿題の結果は「すまねえ」なんかにゃゼッテーしねえ。
・・・ゼッテーにだ。
なんちゃって。