決戦来たらば(浮竹と京楽)

・・・・四ヶ月。


永きを生きる死神たちにとって、4ヶ月という期間はほんの瞬きする時間にも等しい。


しかし、彼等にとってこの時間が、彼等自身、そして彼等が守護するもの全てを護れるかどうかがかかる時となっていた。


・・・・四ヶ月。

この僅かな時間の中で彼等は裏切り者藍染惣右介に対向しうる実力を身につけなければならないのだ。

・・・技を一つ習得するにも幾年もかかるにもかかわらず。

しかし、嘆く時間などはない。

なぜなら・・今この時にも『その時』に向かって『時』は刻み続けるのだから。


「・・・4ヶ月か。短いな。」
「さあて。どうボク達は動きますかねえ。
一緒に修行でもするか〜?浮竹。」
「それもいいが・・・。

期限は4ヶ月だ。
俺たちよりも・・・より成長が期待できる者に重点を当てたほうが良いだろう。」

「つまりピチピチの若い子を鍛えるってことかい?」
「若い者は経験不足により十分能力を発揮できていないケースも多い。
それだけに経験値を上げることで格段に強くなる場合もある。

俺たち年長者は若年者の指導に当たるべきだと思う。
限られた時間が短いのならば余計にだ。」

「ま、確かにボクたちアダルト組みよりも若いこの方が成長は早いからねえ。

・・で、お前さんは日番谷隊長を鍛える訳かい?」

「成長の可能性が一番高いのは彼だからな。そのつもりだ。
もっともむこうはイヤがるかもしれないが・・。」
「・・そんなこと、言ってられないっていうのも事実だからねえ。」
「その通りだ。」
「相変わらず、可愛がってるねえ。」
「彼には生き残って欲しいからな。行く行くはこの護廷十三隊を任されるのは彼だと思う。

・・山本先生は、恐らくこの事態に陥ったことを深く責任を感じてらっしゃるはずだ。
俺たちが止めたとしても前戦に出られるだろう。
ご自分で幕を引かれる覚悟だと俺は思う。」

「山じいらしいねえ。にしたって、山じいからいきなり日番谷君に行くわけにはいかないでしょ。
誰かが橋渡しにならないと。」

「俺は前線に出るつもりだ。止めても無駄だぞ、京楽。」
「おいおい。病気の方も一進一退なんだろ?そんなので前線に出なくてもいいんじゃないの?」

「だからだ、京楽。俺は死ぬなら戦って死にたい。
・・・病で死ぬのではなく、戦って死にたいんだ。

この肺の病とも生まれた時からの付き合いだ。
だからこそ、死ぬ時は戦って死にたい。・・・一人の死神としてな。」

「お前さん・・・この戦いで死ぬつもりなんじゃないだろうねえ。」
「・・いつかは死ぬさ、京楽。」
「冗談じゃない。
ボクはこの戦いで誰も死なせるつもりはないよ。
山じいも、日番谷君も、そしてお前さんもね。

お前さんは山じいが引退したあと、日番谷君まで橋渡しをしなきゃならない。
それがお前さんの役目だ。
死んでるヒマなんてないさ。」

「京楽。だが、俺はこの戦いには出るつもりだ。
これはお前の制止でも聞けない。」

「・・・・分かってるよ。
だからボクも行こうじゃないの。」
「しかし、瀞霊廷を空にするわけには・・。」
「だからこそ、副官ていうのがいるんだろ?

・・・浮竹・・・忘れちゃったのかい?」


『我等はいかなる時にも志は同じ。・・・我等の斬魄刀にかけて。


・・我等はそれをここに誓うものなり。』


遥か昔の誓いが浮竹の脳裏をよぎる。
そう、真央霊術院を卒業した日に交わされた、若き日の誓いだ。

昔を思い出すように下を向く浮竹。

「・・ああ、忘れてないさ。

・・あの誓いは。

忘れる筈が無い。」

そして、顔を上げ京楽の顔を見据えた浮竹には、迷いは消えていた。

「じゃ、やれるだけ、やってみますかねえ、色男。」
「無論だ、京楽。」


時間は限られている。

だが、その限られた時間の中で最大限の成果を得るべく、二人の盟友は動きはじめた。



・・・・彼等の護るべきものを護るべく。


そして・・



・・・・彼等の信じるべきものをを信じて。



かっての「学院の双刀」は「護廷十三隊の双刀」となりつつあった。




なんちゃって。

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