究るに終わりなし(阿散井恋次)

「オラオラ、何やってんだ、茶渡!!随分動きが遅くなってきやがったぜ!?
もうバテてきやがったのか?あァ?!!」
「ム・・!」

茶渡が、荒い息の下から必死で攻撃の一撃を繰り出してくる。
遅せえんだよ。当たるか、そんなもん。
俺は、お返しとばかりに狒狒王蛇尾丸を奴に向けてぶち込んだ。

まあ・・死なねえ程度つうか、大けがしねえ程度には気をつけてるけどな。これでも。
・・・だが、意外だったぜ。
まさか、現世のこんな所で卍解を使いまくるハメになるとはな。


事の始まりは浦原さんだった。
「阿散井サン、ちょっとお願いがあるんですけどね?
茶渡サンの修行の手伝いをしてあげて欲しいんス。」
てめえの弱さに流石にヤバいと思ったんだろう。茶渡が浦原さんに強くなれるよう修行を頼んできた。
まあ・・強くなりてえってのは分かる。破面との戦いで自分が使い物にならねえってわかったんだ。何とかしてえと思った奴の頭の中で頼れるのは浦原さんしかいねえだろうし。
しかし、その修行の相手が俺に回ってくるとは思わなかった。

茶渡の修行相手は卍解を使える相手じゃねえとダメだってことだが、浦原さんの卍解は修行向きじゃねえそうだ。
ま、それで俺に浦原さんが回してきたってわけだが。

何のかんのと言いくるめられた感は否めねえが、修行相手を引き受けることになった。
最初は面倒くせえと思ってたんだが・・・。
途中からは、俺も本気で相手をしてやるようになった。

ちっ、またちょっとずれたか。
狒狒王蛇尾丸は巨大な蛇の骨の形状をしてる。俺はそれを操り、敵に蛇尾丸の牙で襲わせたり、胴体を絡ませて動きを奪ったりしねえといけねえわけだ。

死ぬ思いで習得した卍解だが・・・。
俺はまだ完全に使いこなせちゃいねえ。

まただ。今度は強すぎたか。やべえな。茶渡の野郎、大丈夫か?って・・まあタフな奴だからなんとかなってっか。
元々俺は細かい技を使うのは苦手なんだが、修行の相手をしてるとそれを思い知らされる。大けがしねえ程度に攻撃したり、ギリギリ避けられる所を狙って攻撃したり。ついていけねえスピードギリギリでこっちも避わしたり。
いざ、茶渡の修行の相手をしてみると、俺はまだまだ蛇尾丸を使いこなせていねえ事に気がつかされた。

まあ、今までは朽木隊長に追いつこうと、大技ばっかに目が行ってたからな・・。
だが、いざ朽木隊長と戦ってみれば、朽木隊長は鬼道みたいな小技を上手く使って俺と戦ってきた。一つ一つは取るに足らねえと思っていた技が組み合わさるとどんな風に脅威になるのか、俺はあの戦いで知った。

卍解にしてもだ。一護に聞いたが、朽木隊長は卍解をさらに2段階変化させやがったらしい。
卍解の進化系だと?そんなの聞いたこともねえぞ。
卍解を会得したとしても、まだまだ先は長いってわけだ。朽木隊長を倒すにはまだまだ先がな。

大技も勿論大事だ。最大の破壊力はでけえほうがいいに決まってっからな。
だが、それを最大限に生かすためには、小技でその状況を作れるようにしねえといけねえ。

狒狒王蛇尾丸を十分使いこなせねえ今では、大技を編み出そうとしても、ムダだろ。

それに・・・。
「ふん!」
ちっ、避けようと思ったんだが、かすったか。

格下だと思ってる茶渡の攻撃だが、100にひとつくらいは、こっちがヤベエと思うものがある。それが俺の気の緩みなのかどうかは解らねえがな。

俺は今まで、修行するなら俺より強い人とじゃねえと意味がねえと思っていた。
だが、茶渡の修行の相手をしてても、気づかされることは多いし、こっちが鍛錬になることもある。要はこっちの気の持ちようってことなのかもな。

強くなりてえ。
当然、茶渡の野郎もそう思ってっから今修行してんだろうが、俺も気持ちは負けちゃいねえ。
お前は俺の胸を借りてるつもりかも知れねえが、タダで貸す俺じゃねえぜ?
反対に、お前を相手にして卍解を完璧に使いこなせるようにしてやる。

今まで卍解を会得するために必死でやっていた。
卍解さえ手に入れれば何とかなると思っていたところがあるのは事実だ。

だが、そんなんじゃねえ。
卍解を習得しても、まだまだ上はある。先も長げえし、やらなきゃなんねえことは山ほどある。
悔しいが、また苦手だった鬼道の方も鍛え直さなきゃなんねえしな。

卍解という強さを手に入れても、それは単なる通過点でしかねえ。


強さを究めるには・・終わりなんてねえのかもな。
ま、それでいいじゃねえか。
終わりがねえからこっちも面白いってもんだ。

俺がどこまでいけるのか。
何所まで強くなれるのか。

・・俺自身が決められんだからよ。

「おい!何何時までもヘバってやがんだ!とっとと立てよ、オラ!次行くぜ?!」

そうだぜ?茶渡。ヘバってるヒマなんて俺たちには無え。

これからなんだからよ、てめえは。

それと、当然俺もだけどよ。
やってやる。そしていつか必ず・・俺の目標を・・・朽木隊長を超えてやる。


それまで、待っててくださいよ。朽木隊長!




なんちゃって。

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