孤高の桜に嵐吹く(朽木白哉)

・・緋真に出会い、愛するを知り、緋真を亡くして孤独の意味を知った。

緋真は死に際に、残される私に家族を遺した。
ルキアだ。緋真の実の妹。
妻の死後、あれだけ妻が探していたにもかかわらず、あっさりと行方が知れた。皮肉なものだ。
いや・・緋真がそうさせたのかもしれぬ。
そして私の妹にした。
故あって、ルキアにはそのことを知らせていない。
亡き妻に似ているを理由として、妹に迎えたと教えられているはずだ。

だが、兄らしきことをした覚えはない。
「朽木家のペット」と、影でののしられ、ルキアが肩身を狭い思いをしていることも知っていた。
だが、何もせずにいた。

いかなることがあろうとも、掟をもはや破らない。
私が掟を破ったのは過去に2回ある。
ひとつは緋真を妻に迎えたこと。二つ目はルキアを私の妹にしたことだ。
二つ目を最後として、掟を守る。
これは父母への誓いだ。

ルキアは今双極の前に立ち、全てを悟った穏やかな表情を浮かべている。
死を前にして。

『白哉様・・・』
・・・許せ・・・。
『白哉様・・・どうか・・』
・・許せ。
『白哉様・・どうか妹を護ってやってください・・』
許せ、緋真!誓ったのだ!もう掟は破らぬと!!


双極の前に立つルキアが私に静かに礼を言うのが分かった。

何故私を責めぬのか。・・・いや、責めて欲しかったのは私のほうか。
いっそ、責めてくれたほうが楽だから。
しかし、あれはそんなことはすまい。

今こそ感情が面に出ぬよう教育されたことを、ありがたく思うことはない。
『朽木家の当主たる者、一度なしたその決定を覆してはならぬ。』
そうだ。これも掟だ。私は、ルキアを助けぬという決定をしたのだ。

不意に自分の手足が、掟と言う名の鎖に繋がれている様な感覚を覚えた。
体が・・・重い・・・。


今まさにルキアが双極に貫かれようとした時、あの子供はやってきた。
黒崎一護。・・ルキアを助ける、というその誓いのままに。
あの子供は一目見ただけで、私と対極にある者だと分かった。
掟などに縛られず、ただ己の信じた道をすすむ者。

掟は世界の秩序のためにある。
秩序あってこその平和なのだ。

・・・癇に障る子供だ。なぜ、私は助け出されたルキアを見て、こうも安堵しているのか。

癇に障る子供だ。なぜ、そうも自由に、そして迷うことなく進めるのだ。
まるで、私のしてきた全てを否定するがのごとく。

許さぬ。

貴様は・・・私が斬る。
貴様は己の信じる道とやらを刃とするがいい。そして私は、掟と言う刃で貴様を斬ろう。
斬って私が正しいことを証明する。

だが・・・万が一・・貴様が勝ったら・・・緋真・・全てを捨てて、お前との約束を護るだろう。
・・・全力でルキアを護るだろう。

『白哉様・・・』

『白哉様・・・どうか・・』

『白哉様・・どうか妹を護ってやってください・・』

嵐の予感がした。


なんっちゃって。

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