心の急所(ギンと白哉)

・・面白い話を聞いた。
あの仏頂面の朽木隊長が、なんや戌吊出身の女の子を無理やり自分の妹にしたんやそうな。

・・・それも、死んだ嫁さんそっくりの女の子なんやて。

確か嫁さん貰うときも、貴族の掟がなんとかいうて揉めとったなあ。

あの堅物の朽木隊長が掟破ってまで嫁さんにしたいうんもビックリしたけど・・・。

ホンマおもろいなあ。

・・またやりおった。

凄い思わへん?

2回も掟破ってはるんやで?

あの・・・『朽木隊長』が。

どんな女の子か興味あるやろ?
あの『朽木隊長』が執着する女の子ってどんな子なんやろう。

前の嫁さんは会うたことないけど、今度の妹さんは幸い死神や。
ボクでも会える。
ここはひとつ顔見とうなっても・・おかしないやろ?

会う機会はボクの予想よりも早く来た。
なんと朽木隊長がご丁寧に今度の妹さんを連れて挨拶に来たんや。

「私の妹となったルキアだ。よろしく頼む。」
「朽木ルキアです。よろしくお願いいたします。市丸隊長。」

正直言うたらガッカリしたわ。
どんなボン・キュッ・ボンな子かと思たら、ちっちゃいガリガリの子や。
大きな目だけが目立ってる感じやなあ。
ま、可愛いいうたら可愛いけど、小動物みたいな子や。

『・・・なんや、朽木隊長いうたら、こういう子が趣味なんやなあ。』

「市丸ギンや。よろしゅう頼むわ。」

お兄さんのしつけの賜物か、えらい低姿勢でお辞儀をした後ボクの顔を見て、ルキアちゃんは顔を強張らせよった。

・・・へえ。気付きよったな。

小動物は捕食者の影にいつも怯えるもんや。
警戒心を解いたら直ぐに食われてしまうもんなあ。
危険を察知する能力だけはあるもんや。

ボクの『何か』に気付いたらしい。

「可愛い妹さんやなあ。朽木隊長、大事にせなあかんで?」
「・・・兄が心配をすることではない。では本日は失礼する。」

挨拶が済んだら、さっさと帰りよった。
ご丁寧なことや。
余計な虫がつかんように先に挨拶を兼ねてクギ刺して回ってるんやから。
お兄様はタイヘンやなあ。

・・・自分の弱点をわざわざ知らして歩くやなんてボクには出来んわあ。
ここ攻めて来い言うてるようなもんや。

隊首会のちょっとした宴会の時や。
「ルキアちゃんは元気でやってますのん?朽木隊長。」
話をいきなり振ってみた。
そしたら片眉が動きよった。
「・・そのようだ。・・妹がどうかしたか?」
「いや、エライ大事にされてはるみたいやったから、死神辞めさせたんちゃうやろかて思うて。」
「ルキアは死神だ。それ以上でもそれ以下でもない。任務によって命を落としたとしてもそれはルキアのもつ運命だ。」
「・・へえ。わざわざボクたち隊長格に兄様自ら挨拶された割には冷たいお言葉やねえ。」
「元々我等死神に家族の情などない。兄の思い違いだ。」


・・・ウソ言いなはれ。
席官につかんように影で手を回してるのは誰やったかなあ。

妹さんが大変な事になったら、朽木隊長も顔色変えるんやろうか。
・・・見て見たいなあ。
妹さんの命を助けるために、必死になって動くんやろか。
この人形みたいに無表情は顔が、苦悩に歪む様を見て見たいもんや。

「なあ、朽木隊長。
自分に大事なものを作るいうことは、新たな弱点を作るようなもんやと思わへん?」

「思わぬ。」

「なんでですのん?」

「弱点を攻めようとするものを片端から消せば良いことだ。
それが出来ぬ者の考え方だな、兄の考え方は。」

「・・・これはまた手厳しいなあ。」


・・・決まりやな。

ホンマに護りきれるんかお手並み拝見といこうやないの。
幸いルキアちゃんはボクが嫌いや。

・・・追い詰めるんは簡単や。

それだけやつまらんなあ。
ルキアちゃんが死んでいくのを見るいうのはどうや?

その時のお兄様が見物やなあ。

・・・情がないという死神のお手本として、顔色一つ変えんのか。


・・・それとも妹を護りきれなかった苦悩にその顔をゆがめるんか。


その時が楽しみやねえ。


・・・なあ、朽木隊長?




なんちゃって。

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