傀儡の糸(市丸ギン)
・・・ボクな?
ちょっとした特技があるんやで?
他人の弱みが分かってまうんや。
・・・直ぐになァ。
まあ、それがボクの遊びのネタなんやから、分かって当然なんかも知れんけど。
誰にでも触れられとうない所の一つや二つあるやろ?
それが分かるんや。
なんて言うたらええのん?鼻が利くいうやつ?それや。
完璧やと言うお人ほど、その弱みを見つけ出すんが楽しゅうてなあ。
・・・ホンマ、止めれんわ。
まあ、そんなボクの副官になるいう子は、最初から決まってたんやけど。
イヅルや。
けど、わざわざボクはイヅルの弱点や探さへんで?
そやかて、弱点だらけの子やったもんなァ。
成績からしたら、立派なもんや。
何所に出しても、胸張れる成績やった。
そやけど、本人は胸張っとるどころか、ボクに最初の挨拶する時に足が震えるような子や。
ボクは直ぐに分かった。
この子の成績のエエんは、自分に少しでも自信付けよう思うて、一生懸命やった結果なんやてなァ。
まあ、気が小さい言うところはあるけど、そんな卑屈になるようなもんやないんやけど。
そやけど、イヅルはその事になんや物凄う劣等感を感じとったみたいやねえ。
多分、完璧主義なんやろうけど。
それが余計、イヅルを弱点だらけにしとった。
自分に自信が無うて。
自分を必死で奮い立たせて。
それから、自分を必要としてくれる人に、物凄う飢えてる。
・・・誰かに必要とされたいんやろ?
・・・誰かに尽したいんやろ?
・・・誰かに尽くす苦労に喜びを感じたいんやろ?
・・そんで心のどっかで誰かに壊されたいんやろ?
・・壊したろか?ボクならそれが出来るんやで?簡単な事や。
・・ウソ、ボクはやらんよ。
・・壊れそうな子は壊すしとなくなるもんや、不思議となァ。
よし、決めたわ。
ボクはのらりくらりした上司になってあげよか。
仕事せんと、何処ほっつき歩いとんか、分からんような上司や。
好きやろ?イヅル。そういうのが。
ボクが仕事せえへんから、補佐せなあかんから、いっぱい仕事出来るやろ?
ボクを探さなあかんから、小言言いながら探せるやろ?
そんな苦労をさせたげるわ。
キミはそれで幸せ感じるタイプやから。
「イヅル。」キミを呼ぶときはこう呼んだげる。
そやからキミはボクの後ろについといで?
キミの名前、呼ばれるん好きやろ?
自分が必要にされてるて、呼ばれる度に思うやろ?
・・・でも、気づいてるんかなァ。
・・・ボクが名前を呼ぶたびに、キミの体には傀儡の糸が絡んでるんやで?
呼べば呼ぶほど、何重にもなァ。
時機にボクに名前呼ばれただけで、キミは何でもボクの言う事を聞くようになるやろうなァ。
ホラ・・見てみ?
もう・・身動き取れへんようになってるで・・・?
なァ・・イヅル・・?
なんちゃって