恐怖の「黒ヒゲ危機一髪」 護廷十三隊、次席

「・・・・絶対に・・・


・・・負けられない戦いが・・・・



・・・そこには・・・ある・・!!」


・・・13人の副隊長及び代行たちが、真剣な面持ちで一つのものを見下ろしている。

その背には、皆極度の緊張が走っている。
それだけではない。

ある者は額ににじんだ脂汗をぬぐい、またある者は何かを祈るがごとく、両手を合わせ目をつぶる。

『・・ダメだ・・こんな戦い・・できるわけない・・!』
心の中で叫ぶのは吉良イヅル。
緊張のあまり、手が震えるのを必死で堪える。
しかし、だからといって逃げるほど、彼のプライドは低くは無かった。

そして・・

「か・・帰りてえ・・。」
情けない呟きが、二番隊の大前田の口からこぼれていた。
大前田の表情にあるのは、確かに恐怖の色だ。



どうしてこんなことに・・・。


それはある思い付きから始まった。

久方ぶりに次官が全員集まり、賑やかな宴会が開かれていた時だ。

「せっかくみんなそろったんだから〜〜、なんかしよーよ!!」
お祭好きのやちるが提案する。
「ああ。いいわね。なんかゲームでもする?」
乱菊もこの手は大好きだ。

「あ!そういえば、うちに「黒ヒゲ危機一髪」ありますよ?!」
雛森も、賑やかな方が楽しいタイプだ。

「黒ヒゲ危機一髪とは何かね?」
若者のゲームは全く知らない、一番隊の雀部が問う。

「海賊の形をした人形の複数空いている穴に、一人1本ずつ剣を刺していって、人形が飛んでしまう穴に当たった人が負けると言うゲームです。」
的確な説明をするのは八番隊の伊勢。
何気に八番隊の宴会では「黒ヒゲ」が活躍しているようだ。

「・・ま、ありがちな展開だな、いいけどよ。」
宴会の陰のスペシャリスト修兵が評価する。
彼が得意なゲームは、「ツイスター」。
両手両足で指定された色を抑えるゲームだ。限られたスペースで複数の人間が動くため、体の接触度が大きい。
可愛い子がいるとさらにレベルはアップするぞ?(笑)

「うわあ・・あたしもう緊張してきた〜〜!」
既に緊張しているのは、でかいのに蚤の心臓の四番隊の勇音。
剣を刺すときは必ず目をつぶってしまう癖がある。

「大丈夫だよ!唯のゲームなんだし〜。」
一方、妹の清音は楽しそうだ。彼女の言う顎鬚脇クサ男は今日はいないらしい。

「黒ヒゲもいいけどよ、それだけじゃつまんねえだろ?
なんか罰ゲーム考えようぜ?」
更に提案するのは恋次。
一度火が付くとノリノリになるタイプだ。

「おお!そりゃええのう。
どんな罰ゲームがええかのう。せっかくじゃけえ、おもろいんがエエのう。」
当然七番隊の射場もノリはいい。


「・・・緊張感が出るほうがいいと思います・・。」
無表情で提案するのはネム。

「うんうん、それいいかも。どんな?」
「私が考えてきました・・。」

何時もカタログを持ち歩く、父マユリの影響なのか、なんとネム、罰ゲームの表をとりだした。
そして、そこに書かれているものに、皆一応に戦慄を覚える事となる。


<罰ゲーム表>

一番隊→山本隊長をリー○21に連れて行き、育毛指導をしてもらう。

二番隊→砕蜂隊長に裸エプロンで1日勤務をさせる。ただし、紐パンは許可。

三番隊→市丸隊長をポマードテカテカでオールバックにする。もしくはパンチパーマを当てさせる。

四番隊→卯ノ花隊長に女王様のコスプレをさせて、調教を受ける。

五番隊→藍染隊長にマツケンサンバ2のオンステージを行わせる。衣装も着用の事。

六番隊→朽木隊長に自分の名前をケツ字で書いてもらう。

七番隊→狛村隊長を剥いて、全身完璧にブラッシングする。その際、シッポを確認すること。

八番隊→京楽隊長の両手両足を脱毛テープで脱毛。

九番隊→東仙隊長に1ヶ月間振袖タイプの死覇装で過ごしていただく。

十番隊→日番谷隊長にサルスーツで1日勤務していただく。おやつにバナナを出す事。

十一番隊→更木隊長に、1週間三つ編みお下げへイメチェンさせる事。この際、髪型は隊長がいくら嫌がっても副隊長が整える事。

十二番隊→マユリ様にマク○ナルドのカウンターで1日働いてもらう事。この際、スマイルは0円。

十三番隊→浮竹隊長に白髪染めをすること。この際、おしゃれなヘアカラーを使う事。その後ポニーテール。

以上、負けた隊は該当する罰ゲームを行う事。


                          発案者、涅ネム」



・・・沈黙が走った。
かってこれほど、恐ろしい提案をした者がいただろうか、いやない。

ていうか、ネムは本気でこの罰ゲームをするつもりなのか?
いや、そんな訳ないでしょ、だって自分も罰ゲームするかもしんないんだし。

ナイナイ!!絶対ないって!!

「・・・反対意見が無いようなので、ではこれで。」

・・って、アリかよ〜〜〜!!

「しかし、これはあまりにも!!」
思わずイヅルが声を上げる。
「・・・運も実力の一つだと言います。
この際、決めませんか?

誰が・・・・一番ツイテナ〜〜〜イのかを・・。」

「ツイテナ〜〜イじゃねえ!!キレテナ〜〜イ!!だ!!
何処で仕入れたんだよ、そのネタ!!」
「・・怖いのですか・・?阿散井副隊長・・。」
「・・ぐ・・!!」


・・・かくして・・・


戦いは始まった・・。

面を突き入れる順番はあみだで決まった。

1番は恋次。最初の方がいいと思っていただけに「俺はツイてるぜ!」と喜んだ。

しかし・・・

当たらないとは限らないのだ・・・。
当たるかもしれぬのである。

12人の死神たちが、固唾を呑んで恋次を見つめている。
・・・額に巻かれた手ぬぐいが汗で重い。

「ちくしょう!!負けるかよ!!」

気合一閃!!オモチャの剣が勢い良く突き刺さる!!


ガチャッ!!!バキッ!!ガン!!ガラガラガラガラガラガラ・・ゴンッ。


剣を入れたにしては大きすぎる音が響く!!

そして、彼らが見たものは・・・気合のあまり壊されてしまった「黒ヒゲ危機一髪」の残骸だった・・・。

壊れたオモチャに注がれていた12人の眼差しが一気に恋次に集まる!!

そして12人の右手が一斉に・・しかし静かに上がり指を差す。




「・・・ツイテナ〜〜イ・・。」




最早、恋次に反論する気力は残ってはいなかった。





なんちゃって。

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