回る隊首会(護廷十三隊)

『・・・回る・・回る・・会議は回る・・・


くるくる回る、くるくると・・。


現世の会議は踊っても・・・


尸魂界の会議はくるくる回る。どこまでも。』



会議の席には巨大な円卓が置かれていた。
円卓といってもドーナツ型をしたものだ。

・・・護廷十三隊の隊長全てが一同に席についていた。


円卓には非常に大きな特徴がある。
・・・回っているのだ。

机自体が回っているわけではない。
机の上に設置されたレーンがベルトコンベア方式でグルグル回るのである。

卓の中心には4人の男たちが立って作業をしている。
髪はどれも短く刈り込まれている。衣服は白い職人服だ。
男たちは酢飯を次々に楕円にまとめ、その上にネタをのせ、2貫ずつ皿に置く。
そして、その皿を目の前の回転するレーンに乗せる。

そして乗せられた寿司は・・・

護廷十三隊隊長の目の前をくるくる回ることとなる。


食事しながら会議を行うという事はままある事だ。
なかなか時間が取れないときなど、昼食時間を潰して食べながら会議という事は珍しくない。


寿司がいいと言ったのは山じいだ。
総隊長のツルの一声で寿司に決まった。

「ボク、回るおすし屋さんがエエなあ。
久しぶりに行ってみたいなァ。」
どうやら、ギンが提案をしたようだ。

「なんじゃな?その回るすし屋というのは。
すし屋が回っておるのか?」
何時もカウンターしかないお高いお寿司しか食べない、山じいが興味を示した。


「正確には、寿司皿が乗せられたレーンです。客が座るカウンター席に、レーンが据え付けられて、客の目の前を寿司が流れていくというものなんですよ。客は好きな寿司が流れてきたら皿ごととって食べるんです。」
下級貴族で、骨の髄までどっぷり庶民文化に親しむ浮竹が山じいに説明する。


「ふむ。そのようなすし屋があるとは知らなんだ。よかろう。今度の隊首会はそれにするとしよう。」

「・・・・。」
白哉は喜んでいた。顔は能面のごとく無表情だ。
しかし、明らかに霊圧で笑っていた。
何故なら・・・ずっと狙っていたからだ・・。
回るすし屋に行くチャンスをである。
いくら犬吊出身の恋次を連れようとも、流石に回るすし屋に入るわけにはいかない。

なんてったって、大貴族だもん。
ていうか、正一位よ?!!自分よりも位が上なんて王様くらいしかいないんだよ?!!
そりゃ〜、行けないって〜〜〜。

いつもは、いけすかなくて、ルキアたんにちょっかいばっかりかけるヤな奴で、性格悪そう(←お前が言うな!)で、ついでに言えばヘンな目をしている市丸ギンが、今日の兄様にはもっそいいい人に見えたものだ。

そして当日、ちょっぴり喜びで眠れなかった兄様は、あくまで無表情に参加していた。

隊の順番で円卓につく。
円形だから山じいのとなりは砕蜂と浮竹だ。
回る寿司のシステムを知らない山じいにはいい先生がついている。

・・・回る寿司たち。
こういう時には性格が出る。
食うか食わぬか直前で迷う者。
全く迷わずガンガン皿を取るもの。
どんな種類があるか一通り流す者・・。

最初の一皿を取る権利は、当然山じいにある。
静かに他の隊長たちが待っている。

山じいが、皿の一つを指差してこういった。
「・・すまぬが。これと同じヒラメをくれぬかの?」
「えっ?」
驚く寿司職人。すかさず浮竹がフォローする。
「総隊長!皿ごと取って下さい。そういうシステムです。」

「おお!そうであったな!」と取ろうとしたところ、既にヒラメの皿は砕蜂の前を通り過ぎていた。
山じい、ガックリ。

「ハイ。ヒラメですよ?総隊長」
ギンが神鎗を伸ばしてヒラメの皿を山じいに届ける。

「市丸!すまぬのう!
いやあ、お主の斬魄刀は便利なものじゃ。!!」
「そうでしょ?ボクもそう思ってますんや。」

目の前を斬魄刀が通っていたのだが、何時も短気な砕蜂は沈黙したままだった。
彼女の思考は過去に飛んでいた。

砕蜂は一度だけ回るすし屋に入ったことがある。
もちろん、一人で入るわけではない。
夜一様と入ったのである。
楽しかったあの頃の思い出・・。食べた皿の数を競うようにして食べまくったあの、楽しげな夜一様・・・。

「おやまあ!なに泣いてはりますのん?なんか悲しい事でもありましたん?」
横のギンが声をかける。
「・・泣いてなどおらぬわ。余計な世話だ。」

片っ端から皿を取る。これからやけ食いをする事に決めたようだ。

藍染や春水は、アダルトだけに寿司の食い方を知っている。
白身→光物→赤身→軍艦→巻物と、王道の食い方をしているようだ。
ま、春水は寿司よりも酒の方がスキなのだが。

イクラや数の子、ウニばかりを食べているのはマユリ。
「全く・・イクラっていうのはいいもんだヨ。
この軍艦だけで約30匹の鮭の命があるんだ。。それを一口で食べるだなんて、楽しくてたまらないネ!
ウニは内臓だよ!!全くたまらないネ!!」

ブツブツ独り言を言うマユリサマ。
でも、本当にたまらないのは、そんな独り言を聞かされるものだろう。

一応流して、次来たとき取ろうと思っていたネタをことごとく更木に取られている東仙は、とうとうキレた。
「それは私は食べようと思っていたアナゴだ!!
なんど、私の寿司を食べようとするつもりだ!」
「だったら早く取れよ。取ったもんがちだろうが。」


・・・更木、東仙闘争勃発(笑)。
羨ましそうに見ているのは、東仙のお友達・・じゃない、東仙がお友達だと思っている(笑)狛村だ。早く東仙に気づいてもらえばいいね!

頭のはるか上で闘争をされ、こちらも頭に来たシロちゃん、狛村とチェンジ。
でかい狛村が障壁となり、鎮静化に向かう。

シロちゃんは好物のマグロを、卯ノ花は光物が好きなようだ。


さて肝心の兄様はというと・・。
意外なものを食べていた。さぞかし高級なものばかり食べているかと思えば、そうではない。

サラダ軍艦、エビフライ巻き、ハンバーグ巻きなどである。
高級寿司なんぞは死ぬほど食べている、兄様。
とにかく、高級寿司店ではでない寿司に手を伸ばしまくっていた。

自然、皆の視線はレーンを流れる寿司に釘付けになる。
頼んでもらえば、即座に握ってくれるのだが、自分の食べたい皿をひたすら待つのもある種の楽しみ方の一つだ。

会議の内容は、誰の頭の中からも忘れ去られている。

『・・・回る・・回る・・会議は回る・・・


くるくる回る、くるくると・・。


現世の会議は踊っても・・・


尸魂界の会議はくるくる回る。どこまでも。

寿司と一緒に回り続ける、どこまでも。』




なんちゃって。

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