盟友たる男と女(喜助と夜一)

今日は、喜助と夜一さん。

この二人の関係は、謎だらけですよね。
夜一さんは四大貴族の四楓院家の当主で、元隠密機動総司令官及び同第一分隊「刑軍」総括軍団長なんぞという、もっそい偉いお人です。(元だけど。)

あのお坊ちゃまのお兄様とも全く引けを取らない、お姫様です。
それを全て投げ打って、喜助と一緒に現世に逃亡したわけです。

地位も名誉も全て捨てて、一人の男と逃亡するだなんて、客観的に見れば駆け落ちですから、デキちゃってると考えても無理はないですが・・・・。
でもどうもそうでもない。

どうみても、ラブラブパワーの欠片も感じられません(笑)。
なんというか、金婚式を迎えた夫婦の関係(爆笑)のようですな。
実際、現世ではそれ以上の時間を過ごしているわけなので、不自然ではないのですが。
(金婚式とは、結婚50年を迎えた夫婦が行うお祝いです。念のため。)

今日はその手に手をとって駆け落ち(笑)するあたりをいじってみたいと思います。

ではどうぞ。



・・・組み手でな。
お互い構えた防御の手を軽く触れ合わせる。

もちろん、これから試合うのじゃ。
油断なぞは出来ぬ。
向こうの動き全てに気を配らねばならぬ。
一瞬たりとも油断をすると、やられてしまう。

相手の呼吸、眼の動き、筋肉の僅かな動き。

不思議にのう。そうしておると、相手の心が分かるのじゃ。
そのまま突きを入れてくるのか、若しくは蹴りか。
間合いを取るのか。

試合う前の互いの体勢。

・・これが、わしと喜助の関係じゃと、わしは思うておる。

わしはのう。
庶子なのじゃ。本妻の子ではない。
本妻には息子がちゃんと二人もおっての?元々わしが四楓院の当主になる予定ではなかった。
庶子で女子じゃ。気楽なもんじゃ。童の時は「四楓院の野猿」と言われるほどやんちゃ坊主であった。
それがのう。わしが童の時から強すぎてのう。
当主の目に留まってしもうたのじゃ。

母の違う兄たちを差し置いて、なんとわしを次期当主に推しおった。
そしてわしは「四楓院の野猿」からある日を境に「四楓院の姫君」になった。

「四楓院の姫君」の威力は絶大じゃ。
知ったものは、手のひらを返すがごとく、わしに丁重に接するようになった。

つまらんでのう。
そんな時じゃ、喜助と会うたのは。
喜助は不思議な奴でのう。わしが誰だか、最初から知っておったようじゃ。
じゃが、まったくへりくだった所がのうての?
不思議と安心したものじゃ。

わしもあ奴が出来ることは、直ぐに分かったので、気がつけば鍛錬のよき相手となっておった。
喜助は人当たりはよい男じゃが、腹のうちは決して見せぬ男じゃ。
・・・そこがよい。
喜助とただ話をしておるときでも、何故かわしは奴と組み手を組んでいる感覚がある。
この緊張感がよいのじゃ。

喜助は器用な奴じゃ。
色々なものを新しく作ってくる。
使えるものもあれば、何に使うか理解に苦しむような物もある。
未知なる領域への好奇心。
恐らく、喜助よりも持ち合わせている者はおるまい。

・・・ある日のことじゃ。
「夜一さん。今日でお別れです。アタシはちょっと失踪しますんで。」
と言いおった。
聞けば、崩玉なるものを作ったはいいが、それを狙う者に追われているらしい。
かなり深刻な状況のようじゃが、あまり慌てているようには見えなかったのう。
しかし、わしは感づいておった。
もうこの男とは会えぬと。だからこそ、この男はわしに会いに来たのだと。

「仕方がないのう。どれ、わしも連れて行け。」

流石にこれには喜助は驚いたようじゃ。

「本気・・スか?2度と尸魂界には戻れないんですよ?
それだけじゃあない。アナタも罪人として追われることになるでしょう。
当然追ってくるのは、アナタの部下たちだ。
彼らと戦えるんですか?
それに四楓院の方はどうするつもりなんスか?」

「なに、それなら心配は要らぬ。
刑軍にわしを殺せる者などおらぬし、四楓院の方は兄たちが嬉々として後を継いでくれるじゃろう。
第一・・・奴らはわしを見つけることさえ敵うまい。」

「・・・いいんスね?」
「無論。」
「・・・アタシに付いて来る理由を聞いていいッスか?」
「なに、おぬしが居らぬとわしと組み手を組んでくれる者が居らぬようになるのでのう。それでじゃ。」
「・・・分かりました。では行きますよ?」
「おう!!」

そうして、わしらは現世にやってきたのじゃ。
もう100年も前になるかのう。
喜助はすんなり現世に溶け込み、駄菓子やの主などに収まっておる。
わしは猫に姿を変え、毎日のんびり暮らしておる。
だが、いつ追っ手があるとも知れぬ。
喜助は自然体に見えて、絶えず警戒をしているのが分かる。
組み手を何度も組んだわしには分かるのじゃ。


組み手は好きじゃ。

あの緊張感がよいのじゃ。

不思議にのう。そうしておると、相手の心が分かるのじゃ。
そのまま突きを入れてくるのか、若しくは蹴りか。
間合いを取るのか。

心配するな喜助。
もしお主が戦う時は、わしも一緒じゃ。
そしてもし、お主が倒れるようなことがあれば・・
・・・その時はこのわしがお主を受け止めてやる。


・・・組み手でな。
お互い構えた防御の手を軽く触れ合わせる。



・・これが、わしと喜助の関係じゃと、わしは思うておる。


なんちゃって。

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